第11話 またまたスキルアップ!
拠点ができて、人目を気にする必要がなくなりました。
あれからは火喰い鳥を中心に、狩りを続けていきました。
ポーションも自然とたまります。
何気にこれが一番嬉しいことですよ。
だって回復手段があると、心の余裕も出来ますからね。
それと検証の結果、分かった事をまとめると大きく3つ。
まず出てくるアイテムは、モンスターによって決まっています。
固定ドロップというのでしょうか、まるでゲームのようですね。
それとFランクのモンスターからはドロップしませんでした。
価値がないのか、これは残念です。
肝心のドロップ率はマチマチでした。
ポーションなどの製品と、絹糸などの素材もあり、これも価値のせいか微妙に率がちがいます。
ですが一様にして率は低いです、はい。
そんな楽しい毎日を過ごしていくと、いつの間にやら、当初の目標金額である金貨80枚に届きましたよ。
めちゃくちゃ嬉しいです。
十年間、ガマンを重ねていたのですから、ガラでもなく大声をはりあげてしまいました。
でもその80枚に達しても、まだ買えないってことに気づいてしまいました。
ゆえに朝から悩みに悩んでいるのです。
「師匠、そんなに
「言ったじゃないですか。金貨80枚では、武器は一つしか買えないって」
「えっ、師匠は二刀流じゃないですよね?」
「もうこの子は。君と私の2つです!」
Dランク武器を手に入れる目的は、もちろんDランクモンスターと戦うためです。
私自身はFランクの鉄剣で、Dランクを倒せます。
しかし、歯こぼれが出て連戦とはいきません。
かといって私の武器を優先すれば、カーラの仕事が減ってしまいます。
今の杖ではEランクはともかく、Dランクには歯がたちませんから。
なので買うなら、どちらにするかで悩んでいるのですよ。
でも答えなんて出ませんよ。
どちらにしても、絶対に後悔しそうですもの。
「ええい、悩むのヤメです。2人分が貯まるまでガマンです」
「おおお、師匠えらい、えらい」
くっ、ウサミミさんから逆に頭を
これはこれで有りですよ。むしろもっとやって欲しい。
英気を養えましたし、今日も火喰い鳥を狩り続けます。
休憩をいれつつ午後になり、少し疲れが出た頃に異変が起きました。
「あの火喰い鳥、何かおかしくないですか?」
カーラが指さす方向に、毛色の違う個体がいます。
他は黒地の体に赤や青の肉ひげですが、それは全身極彩色なのです。
それに体も一回り大きいですね。
「レ、レアモンスター。この世界にもいるものなんですね」
聞いてはいましたが、初めてお目にかかりましたとも。
連日狩りすぎたのが原因か、突如現れました。
とても風格があり、周囲の火喰い鳥も遠慮がちです。
20mは間をあけて、誰も近づこうとしていません。
このまま育てば、この地域のボスにもなるでしょう。
それともう一つ特徴があります。
それは凄いメンチを切ってくるのです。
ほぼヤンキー。
その手の雑誌の表紙を飾ってもおかしくないですな。
闘争心むきだしですよ。
「師匠、あの怪物はヤメた方がいいですよね?」
「うーん、君一人では手に余るでしょうね。ですが残念、もう遅いです。相手はやる気みたいですよ?」
「ヒッ、ヒィヤアアアアーーーーーーー!」
肩を揺らして近づいてきます。
急に立ち止まり一度視線を外し、わざと
そしてガバッと勢いよく顔をあげ、ものすごい形相で睨まれました。
この鳥さん、脅しの極意を極めていますよ。
「ヒイッ、て、敵の歩みを食い止めろ、バインド!」
地面から影のイバラが足に絡みつく。
イバラは踏ん張りますが、紙のように引きちぎられました。
Eランクまで通じた杖が役にたちません。
察するに相手はDランク、もしくはそれ以上です。
「カーラ、デバフでなく私にバフを掛けてください。そして周囲に注意して離れていなさい」
コクリとうなずき、攻撃スピードアップの呪文を唱えてくれました。
「このーむっつりスケベ、エロガッパーーー!」
むはっ、さすがレア種です。鳴き声さえも他とはひと味ちがいます。
でもこの程度で、
火喰い鳥は気に入らないと、いきなりスタンプで踏みつけてきます。
避けると、50cmの深さで窪みができました。
「師匠、気をつけて下さい!」
今までの火喰い鳥とは比べ物にならないスピードと破壊力です。
周りが敬遠するのも分かりますね。
斬りつけるも、密の高い筋肉が抵抗してきます。
さしずめ恐竜の原種といった迫力ですな。
他の火喰い鳥にも力強さはありました。
しかし、その力を発揮する前に倒してきました。
スキルやらを使わせる程、私はお人好しではありませんからね。
「エロガッパ、エロガッパ、むっつりスケベ!」
でもこの個体はすごいです。
警戒心とその実力が、スキル発動につなげました。
喉の奥に魔力をあつめ、スキル発動の準備を終え、一気に炎を吐き出してきました。
直径2mに広がる炎。
当たればとび散る、厄介な範囲スキルです。
このままでは、カーラに被害がでてしまいます。
放出されるその瞬間、本体ごと斬り伏せました。
「きゃーーーーーむっつり!」
おしい。紙一重でかわされ、片目しか潰せていません。
カーラを気にしすぎて、あと一歩が出ませんでしたか。あとで修正です。
「だけど怪物と呼ぶにはモノ足りないですぞ」
さらに一閃。
「む、むっつり……ス、ケベ」
自慢の足を斬りとばし、倒れたところをトドメを刺しました。
「ふう、カーラ無事ですか?」
「ふわあぁぁ、やっぱ師匠は最強です。死を覚悟するのは向こうでしたね」
「ははは、それよりも大物ですよ。いったいいくらになるか楽しみですな。それ、いきますよ」
邪魔が入る前にと小槌を使います。
発する光の数はいつもの倍以上ですよ。
落ちる頃には銀貨へと変わります。ざっと30枚はありますな。
「し、師匠。あ、あれは……何?」
まだ光が一つだけ宙に浮かんでいるのです。
そして。
〈ピロリロリーン、スキル・打出の小槌が第3位階へと成長したよ。今度は【レアアイテム(確率)】にしちゃおうか〉
「ま、まさか!」
光は虹色にひかり渦巻いています。色んな色が主張して、その変化は目まぐるしいです。
やがて赤い色が強くなり、他の色を抑え込んでいってます。
最後の発光が終わると、形を変えて地面へ落ちました。
手に取ったアイテムに鑑定をかけ、その正体を確かめます。
【炎鳥の杖(レア):火系呪文に威力+5%、さらに周囲への炎の拡散ダメージ】
「ぬおおおお、このタイミングは神ですぞ!」
「ええ、師匠は神。ドロップも神。イケメンの神様ですよ!」
まん丸目玉に揺れる耳が、よりこの杖の価値をたかめてくれますね。
これは今よりも上位の杖が手に入りました。能力的にDランクの装備ですな。
ということは、今朝の悩みが解決しましたよ。これは嬉しい誤算ですね。
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