つきつかれ

ボウガ

第1話

ある男子学生、気になる女子が自分の事を好きだという。髪型、体系、どうしてこんなに幸運があるだろう。

想えば下校途中の彼女のあとをこっそりつけたり、見かけるたびに声をかけようと粘ったり、彼女に気があることを

周囲にいいふらしたかいがあった。


彼女にであってからすべてがかわった。何の趣味もとりえもないつまらない自分が、彼女の特殊性にはまっていったのだ。

彼女はツンケンしているが、やさしいところがある。見ず知らずの人が倒れているのを解放したり。飛び降りしようとしている

人をよびとめたり、特殊な力もあるみたいだ。そんな彼女が好きだ。惹かれてしょうがない。


そんな彼女にある日、呼び出された。

「あなたの事が好きです」

「わかってたよ」

「つきあってくれませんか?」

「いいけど、二つ条件があるの」

「何ですか?」

 彼女は包丁をとりだした。

「ひとつは、私のために死ねるかどうか、二つ目は、死んで成仏できるかどうかよ」

「そんなの……できるに決まってます、僕の人生はあなたに出会って変わったんですから」

 にこやかに笑うと彼女はまた笑った。

「“何があろうと”撤回はなしよ」

「はい!」

 彼女は包丁をとりだすとそれに札をまきつけた、僕の脇腹を、刺した。

「え……」

 赤い血がにじむ。たしかに温かいものがしみていく感覚がある。

「どう……して」

「それはね……あんたが、私の事をわかっていないから、それに……あんたが……この世のものではないからよ」

「な、何を……」

「あんたは……私によく似た人間を愛しているだけ、そして“その子についた”」

“グポッ”

 何か、黒いものを口から吐き出しそうになる、それは憎悪にも、執着にもにている。そこで少年は最近の自分の異変にきがついた。髪型を変えたり、化粧をしたり、ダイエットをしたり、勉強に励んだり、これらすべてが、むしろこの少女が原因というより、腹部からくるゲロのようなものが原因のような気がした。

「吐きなさい、そして成仏しなさい、あなたが成仏するなら、いくらでもいうわ」

 少女は腹にさした包丁のようなものを思い切りひきぬいた。それはよくみると、ただの紙切れのようだった。そして腹部には、刺された痕跡はなかった。ただ痛みや感覚は確かにあったのに。

「愛してるわ……怨霊さん」

「ゲロゲロゲロゲロ……」

 黒い吐しゃ物が自分の口から大量にわきでる。それとともに憑き物がとれたように、自分の中の虚無感が漂ってくる……少女を見上げる。おかしい、自分の中の彼女への好意が既に存在していない事に気づく。たしかにかわいらしい顔つきをしているが、人を見下したようなするどい目つきと、不敵な笑み、ロングヘア―にツートンでピンクの髪型、どちらかというと不良チックな少女だった。

「どういう……今まで見ていた君はもっと清楚で」

「あ?」

 男子生徒は、腕をふみつけられた。

「いでででででごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

「ふん、どうやら“払えた”みたいね、あんたについていた悪霊は、とりあえず人からの愛情を受けたことがなかったようだから、軽い霊で助かった」

「でも……」

「何よ、あなたについてた悪霊は消え去った、今私が成仏させてあげたからね、今までのあなたの私への好意も、愛情もすべて嘘だったのよ、あなた自身がそれに気づいてるでしょ?」

「いえ、ありがとうございます」

 少年は、何か自分の中から、大事なものさえも抜け落ちた気がした。

「でも、俺はもう、何もなくなった……あなたを好きでいた感覚は、最強だった……すべての世界が色づいて」

「ふん、それもすべて思い過ごし、悪霊が貴方に見せた夢、あなたが見たものではないのよ、まあ、意識がまだ混じっているなら、仕方ないけど、それに何もなくないわ、あんた霊媒体質よ」

 少女はたちさろうとする。一瞬ふりかえりいった。

「じゃあ、いくから」

 その腕をつかみ、少年はいった。

「お願いです!!何でもするから、何でもするから、もう一度あの感覚を思い出させてください、俺には何の意欲も、何かへの好意も芽生えたことがなくて、あの人みたいな悪霊のもっている執着だって」

「何でも?」

「ええ、何でも……」

「ふふふ」

「え?」

「じゃあわかった、私の助手になりなさい、そして男まさりな私を立派なレディになる手伝いをするのなら、あなたを助けてあげる」

「え?でも」

「そう、あんたは”憑かれる役”私が“払う役”あんたが仕事相手になるなら、私はあんたに夢を見せてあげるわ」

 またもや少女は、不敵な笑みを浮かべた。

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つきつかれ ボウガ @yumieimaru

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