大後悔
AKARIが宮下あかねだと知っているのは宮下さん自身が僕に語ってきたからだ。僕からすればアカウント名を僕に教えるほど僕に惚れているのかと思っていたけど、実際はそんなことはなく、逆に恨まれていた。
そんなAKARIは≪
だから、僕は次に他の≪
しかし、それは『聖剣』を抜く前の考えだ。今の僕はAKARIを≪
”あの?≪
不安気に聞いてくるが、どうしたらいいのか分からない。配信中ということもあり、何か答えないと、放送事故になる。
(どうすればいい!?)
すると、救いの女神が訪れた。
”陰キャとかド底辺とか言ってるけど、≪
僕の心の声を代弁してくれたのは≪
口だけ動かして、『ありがとう』と伝えた。
ネフティスなら僕の意図を理解してくれるはずだ。なんてったって≪
「≪
(ここで意思疎通できなくなるのなんなん?)
愛莉はいやんいやんとクネクネしている。だけど、
「ありがとう、よ?」「ありがとう、だね」
詩と佳純先生からジト目でツッコミを受ける。愛莉にはノーダメージだ。ヤンデレ達は僕の言葉を都合の良いように解釈するから、ツッコミなんて聞こえていないのだろう。
すると、AKARIから赤札が送られてきた。
”私が≪
僕は絶句した。その陰キャというのが僕だというのは自明のことだ。
”AKARIさん、それは超絶可哀そうだわ”
”陰キャ陽キャとかそういう話じゃない”
”うわぁ…いまだにそんな陰湿なことをする人っているんだな…”
AKARIを擁護する人達を見ていると僕が悪者にされてしまっているように感じてしまった。視聴者たちは何も悪くない。悪くないけど、僕の心には突き刺さる。
僕の心は急速に冷めていった。それと同時に僕の中でやり返したいという気持ちが徐々に強くなってきた。自分には復讐心なんてないと思っていたけど、今の僕の心の大部分を占めているのはその感情だった。
「はははははははははは」
そう思うと気分が良かった。僕は自分の復讐心を確認した後、おかしくなって高笑いを始めた。コメントも狂ったんじゃないかという言葉で埋め尽くされていた。
さっきまで隣でふざけていた≪
「旭君…?」「お兄ちゃん…?」
詩だけは僕のことを静かに見据えていた。僕が何をしようとしているのか分かっているようだった。
「AKARIよ。貴様に言わなければならないことがある」
”は、はい”
僕の言葉にスパチャで返してきた。もちろん赤札だ。
”新しい≪
”いつぶりだろう”
コメントが湧いていた。ここしばらく≪
だけど、今回に関しては逆だ。
「貴様が我が臣下に加わることは一生無い。我の逆鱗に触れた貴様に待つのは残酷なまでの死だ」
”え?”
何を言われているのか分からないという反応だ。
「分かりやすくいってやろうか?お前みたいなクズに≪
事実上の追放宣言をした。
━━━
”≪
”一体AKARIさんは≪
あかり自身も何が起こっているのか分からなかった。
(私が追放?え、なんで?スパチャが足りなかった?)
”なんでAKARIさんを追放なんですか!?ここ最近は≪
私を擁護してくれるコメントが送られてくる。私は≪
これは≪
”我を騙る愚物と侮りし女神が姿見を変えた我を謀り、悪神共と我を攻撃した。『聖剣』を抜くことで命を繋いだが、我の心臓は依然、釘が刺さったままだ。そして、その女神は我が聖域に信者として紛れこみ、≪
凄みのある言葉に一瞬だけビクッとしてしまった。だけど、すぐに我に返った。
「あっ!えっと、紙を用意しないと!」
私は紙を無造作に取り出して椅子に座って、机に向かった。≪
”偽りの姿で下界に現れた≪
音無詩、偽りの姿、嘘告白、取り巻き、
誰が誰に何をしたか。
そんなの考えるまでもない。
「あ…あ…」
腕をだらんとして、スマホを茫然と落としてしまったけど、そんなことにも気が付かない。
『僕が≪
私は自分の行いを恥じた。最大のチャンスを誰よりも抱えていたのにも関わらず、私はそれを最悪の方法で拒絶してしまった。
”はぁ!?AKARIって最悪な女だな!≪
”傷ついた≪
”取り巻きってことは仲間がいたってことだよな?ってことは大勢で≪
私に対する批判のコメントで埋め尽くされた。だけど、私にはそんなモブ共の声なんてどうでも良かった。欲しかったのは━━
「戻して…戻してよ!あの日に戻してよ!」
私は批判も何もかもを無視して、スパチャで謝罪文を送りまくった。しかし、≪
泣きわめいても、過ぎ去りし過去に想いを巡らせても戻ってこない。すべてに気付いたときにはもう遅かった。
━━━
「へぇ~、AKARIがお兄ちゃんに『聖剣』を抜かせた女なんだねぇ。うらやm、死んでほしいな☆」
「私がその場にいなかったことが悔やまれるよぉ。『聖剣』が見たかっ、じゃなくて、ごめんなさい、≪
「心底近くにいてくれなくてよかったです」
配信が終わった後、僕の豹変した理由を聞かれたので素直に答えた。愛莉も佳純先生も変態願望が駄々洩れなので、本当にあの場にいなくてよかったと思った。
「それにしても凄い額のスパチャが送られてきているわね…」
「ね」
詩がチャンネルを見ながら僕に言ってきた。赤札が十、二十…もう数えるのをやめた。読む価値のないゴミだし、もう興味もない。
「せっかくくれるっていうならお金はもらっておこう。まぁいくら献金しても僕が許すことはないんだけどね」
何を言われても僕が許すことはない。せいぜい僕の気持ちを弄んだことを悔いて欲しい。
「普段ダメダメな旭のドS顔が凄くいいわね…」
「「分かるぅ…」」
「締まらないからそういうこと言うのやめて…」
恍惚の表情を浮かべる彼女たちを見て、僕の力は一瞬で抜けた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます