第20話 Your smile soothes me
「じゃあ、メニューはここの定番とあとはフェスティバル限定がこれでいいのね?」
「ああ、それでお願いするよ。
「はい。俺もこれでいいと思います」
マスターは嬉しそうにフェスティバルのメニューを眺めている。
10月に入って少し、来週はいよいよフェスティバルが始まる。フェスティバルは12日13日の2日間それが始まるまではプレフェスティバルで割引や新しい商品を販売もしたりする。
この近辺の商店街の人達が団結して楽しいフェスティバルが開催される。俺はマスターや
「だけど、少し物足りないかな・・」
ここのところ忙しくて
「じゃあ、来週よろしくねー」
小町さんが自分の店に戻っていき、外はすっかり暗くなっていた。抄湖さんが座っている席、今日も空席だよな、何も考えないように店の掃除を黙々としていると
「勇人くん、一杯どう?」
マスターがお酒とグラス二つ持って微笑む
「お疲れ様」
「ありがとうございます」
二人カウンターに並んでお酒を味わう。ゆっくり流れるJAZZが今日の俺を癒すようだ。
「不思議だね」
「え?」
マスターが俺の左横でグラスを持って話をする。やっぱ、マスターは男の俺でもかっこいいと思ってしまう。ネクタイを少し緩め第一ボタンを外す。前髪をかきあげこれこそ大人の男性だな。そりゃ、モテるわ。
「こうやって君とお酒を飲むなんて」
「そうですよね・・なんか、嬉しいですよ」
「ははは、そう言って貰えるなんて有り難い」
二人前を向いてしばらく、JAZZの音色を楽しむ。ゆったり流れる時間
「抄湖ちゃんとは中々会えてないのかい?」
「・・はい。この頃手伝いと言っても忙しくて参加が出来ない時もあるし、参加しても俺達手伝い組だけの作業がほとんどで・・」
「そうなんだね・・」
「今は彼女が頑張ってるので邪魔は出来ないから・・どう話せばいいのか」
ため息をついて初めて弱音を吐いてしまう。お酒の力もあるけれど何だか感傷的になる。
「君達が一番望んでる事だろ?」
「え?」
「どう話せばいいか・・そうかもしれないが話すしかないんじゃない?抄湖ちゃんと話したいと思う心は言葉として繋がるからね」
「マスター・・」
確かにその通りだ。少し気になるのはこの頃マスターも少し元気がない。前に抄湖さんも言ってたけど、実家の事で色々悩みがあるか・・
本人の言葉から・・
言葉だよな・・どうして言えないのだろうか?塞ぎ込む俺を温かく見守るマスター
「大学ではこことは違うので仕方ないと思います。彼女の方が先輩でどちらかと言うと教える側なので・・」
プレッシャーに押し潰されて不安になっているから何とかしてあげたい。せめて、ここで癒してあげたならと思ってるけど
「はぁ・・上手くいかないよなぁ・・」
グラスに入ったウィスキーを一気に飲んでしまう。
「誰だって、伝えたい言葉はあるさ・・だからこそその言葉を大事にしてるから言えないんだよ・・傷つくより傷つけたくないと」
マスターがそんな事言ってたのに俺は酒に酔いつぶれてしまう。
————カランコロン
「いらっしゃい」
「・・どうした事か?」
酔い潰れた俺の後ろで聞き覚えがある声
「ははは、勇人くん。酔っちゃって」
眠る俺の側には抄湖さんがいたそうだ。
「何をしているのだ?
ウィンナーコーヒーを貰おう」
「はいはい」
抄湖さんは少しため息をついて、そっとブランケットを掛けてくれた。隣に座った彼女に
「勇人くん、寂しがってたよ?」
「・・そうか」
「忙しいの?」
「そうじゃな・・今月の末に発表があるからな。来週辺りには仕上げなければ・・フェスティバルには間に合うとは思うのだが・・」
「ありがとう・・でも、無理はしなくていいからね。優先は自分の事だから」
「大志郎は大丈夫なのか?」
「僕?ははは、何?不安そうに見える?」
「気づかぬフリをしてるのだろうが言葉の温度でわかる」
「それは抄湖ちゃんもじゃない?」
「抄湖さん」
「え!?」
「・・抄湖さん、あまり無理しないで・・俺に・・・」
「ありゃ、寝言だね。夢の中まで心配してくれてるんだね。ね?抄湖ちゃん」
「わからぬのじゃ・・真っ直ぐ見てくる此奴に戸惑っておる・・大志郎、少しお願いがある」
夢を見た。コーヒーのいい香りとJAZZの心地が良い音色、カウンターで眠っている俺の横で優しく声をかけてくれる。頭をそっと撫でてくれる。
「可愛いらしい顔をしよって・・側にいて欲しいと思うのは我儘じゃな」
———月曜日
「やっぱ、お酒は控えよう」
昨日、マスターと飲んで気づいたら酔い潰れていた。情け無い・・ブランケットをかけてくれたのは抄湖さんだとマスターが言ってたな。
夢ではなかったのか?
「せっかく、会えたのに何だ・・これ」
だけど、今日は確か最終打ち合わせだ。抄湖さんと久しぶりに会えるんだ。これが終われば
もう、会えないのだろうか?
———ピンポーン
インターホンが鳴る。誰だ?扉を開けると
「おはよう、勇人」
「
「何?どうしたの?今日はみんなで打ち合わせでしょ?」
支度をしてない俺を見て驚いている。
「少し飲み過ぎちゃって・・悪い。先に行っててみんな、待ってるだろ?」
「もうー!勇人はお酒弱いんだから気をつけないと。やだ、部屋散らかってるじゃない、待っててあげるから支度しなよ」
柚鈴さんはそういうと俺の部屋を片付け始める。昔はよく、掃除とかしてくれていたけど
「あ、いいよーすぐ、用意するから」
「・・あ、ごめん。もう彼女でもないもんね。でも、ここで待つもん。ダメ?」
少し寂しそうに見ている柚鈴さんを見て断る事が出来なかった。今は抄湖さんのお手伝いをしている仲間だから断る事も出来ず。
そう言えば、この間小町さんにお説教されたよな・・女心わかってないとか。
「わかった、一緒に行こう。すぐ着替えるから外で待ってて」
「うん、わかった」
支度をして二人で大学に向かう。俺の家から橋を通ると左側に中村屋がある。まだ、時間あるよな
「柚鈴さん、少し待ってて」
「え?あ・・」
俺は中村屋に入っていく。少しだけ
「ごめん、待たせてたな。行こうか」
「大丈夫だよ。中村屋に何か用事でもあったの?・・この間もここに寄ってたよね?」
「今週の土日にこの商店街界隈でフェスティバルをやるんだよ。その打ち合わせと頼み事・・抄湖さんにも色々、聞きたい事があったけど
中々、話せなくて」
「また・・抄湖さん」
「柚鈴さん?」
「抄湖さんの話しないでよ」
少し不安そうにしている柚鈴さん。抄湖さんの話をすると不機嫌になっていく。
「勇人にとって、抄湖さんて何?あの人・・まるで、勇人の事一番わかってるみたいな感じでいるし・・」
柚鈴さんが怒りをぶつけてくる。その怒りは今までの想い。自分とは違う接し方が辛いと付き合ってた頃とは違う表情をすると言われ、どうして、あの時も同じように接してくれなかったのかと感情を露わにする。
「寂しかったんだよ?私がどんな言葉を伝えても勇人の考えがわからなかった。私が悪いのかもしれないけど・・悔しいよ。だって、私達は戻りたいよ・・」
その苦しい想いをわかってやれなかった。柚鈴さんだけが悪いんじゃない。俺がまだ未熟だった・・
『君は優しいよ』
『俺がですか?』
昨日、マスターがお酒を飲みながらそう話す。
『中村屋の一件やこの間の
『何かマスターに言われると照れるな』
『僕に?あははは、そんな君が可愛らしいよ』
マスターは俺にとっては兄貴みたいでそして何でも話せる親友のようだ。ここの香りが、空間が好きでもありきっと、この人が醸し出すオーラが癒されるんだろうな
『あと、小町ちゃんから何か言われてなかった?』
『説教されました』
俺と柚鈴さんが歩いているところをたまたま見ていたらしく、元カノだと
『マスターと同じだと言ってましたよ』
『僕と!?』
『はい、なんかいつの間にかマスターに対して怒ってましたけど・・』
『はは・・参ったな』
マスターと小町さんは幼なじみで兄妹のように育って来たからマスターの気持ちもわかるようで、だけど・・
〝兄妹って言われるのは・・〟
ボソッと呟いていたけど。時々、マスターを見る目が優しいのはやっぱ・・
『そうだよな・・』
『ん?』
『あ、いや・・その、優しいよねって周りをよく見てるって・・言われます。だから、何を考えてるいるのかって・・』
『難しいよね・・捉え方一つで印象も変わる。優し過ぎて中々、前に進めない二人を知ってるけどね』
『え?』
俺が驚いてると、マスターはクスッと笑って
『それが君の良いところでもあるから間違ってはないよ。だからこそ必要なんだよ?』
必要なんだとマスターに言われたからこそ
〝誰が大切なのか〟
「勇人?」
「抄湖さんは大切な人なんだ」
———大学院・会議室
「それでは最後の課題としよう。私が今、研究をしている論文に
「言葉ですか?でも、レポートの締め切りは明日までじゃないんですか?」
「締め切ったからといって終わりではないぞ?」
「どういう意味ですか?」
俺が次に質問する。抄湖さんは俺の方を見て優しく微笑む。その表情に鼓動が速まる、いや胸が高鳴るというのかもしれない。
「今回、君らにこの研究に参加してもらったのはどんな意味があるかと言う事じゃ」
抄湖さんが学生に手伝いを頼んだのには意味があると言う事
「はいはいはい!それは『愛』ですよね?オレの『愛』を受け取って下さい!」
どう?と凄い顔で・・一度鏡を見ろよと思う表情で真壁くんがアピールするが
〝キモい〟
女子達に一刀両断される。
「なんでだよーーー勇人、そうだろ?」
「お前が言うと〝キモい〟を超えてカオスだ・・さぶっ!時間差でさぶいわ!」
何故、そうなったのか一度考えてみろと言い聞かせる。
「ふふふ」
そのやり取りを見ていた抄湖さんが笑っている。その姿に俺は見惚れてしまった。
「今、見たか?あの天使様は微笑んだぞ!お前のように下品に笑ってないぞ!」
「何でアタシだけに言うのよ!キモいからキモいのよ!そう言うのは本当に思ってる人に言わないと言葉にならないのよ!」
「安心しろ!そのような言葉をお前に言うやつなど・・ふん!いないぜ!」
親指を立て歯を出して笑う真壁くんに
「っるさいわね!!言うやつがいないじゃなくてまだ、現れてないだけよ!」
真壁くんの背中をポカポカ叩く桃さん
「痛っ!やめろよ!まあ、いないならオレが言ってやろうか?」
真壁くん、また、寒い言葉を言ったよ・・
「え??」
桃さんの顔が赤くなっていく。え?・・
「オレは抄湖さんか
余計な一言で振り出しに戻るがどことなく楽しんでいる。
「言葉の形、つまり伝える温度でやり取りは変わるものだ」
午後から二組に分かれて抄湖さんの手伝いをする事になった。俺と真壁くんは資料の整理、柚鈴さんと桃さんは研究室の清掃。手伝いも明日までだよな・・
ふと、見ると抄湖さんが資料室に入っていくのを見えた。
「ねえ?桃、勇人知らない?」
「え?あの
「それがいないんだけど」
日もだんだんと暮れてきて資料室にオレンジ色の光が差す。
「この資料はあの上じゃな。脚立がなければ取れぬか・・」
手を伸ばす抄湖さんだけど彼女の身長より高い所にある為取れない。
「あと、少しなのに」
「これ?ほい!」
後から手を伸ばす俺
その腕は抄湖さんの頭の上を通過する。
「はい」
「
「こういうのは俺らが手伝うのに」
「人を頼るというのが苦手なのじゃ」
少し窓が開いていてそこから風が入り、ふわりと彼女の髪が靡く。その姿に胸が高鳴る自分がいる。前とは違う何か
「やっと、会えたのに・・」
「眠っておったな、お主。とても気持ちよさそうに眠っておった」
クスッと笑う彼女に少し拗ねてしまう。自分はまだ、子供じみているんだなとつくづく思う
「ワシも」
「え?」
「話せるかと楽しみしてたのだがな」
「でも、まあここで話せたのは良かった」
「すまなかったな」
「抄湖さん?」
「この研究は今の自分を見つめ直す為のものなんじゃよ・・これが一人一人に浸透していけば
嬉しいものだと考えておる」
「そうだな、相手があってこその会話それを教えてくれたのは抄湖さんだ。一生懸命に学んできた成果だから」
「勇人氏・・」
お互いが尊重出来るのが有り難いとこの時実感したんだ。
「それじゃあ、後は発表だけになるの?」
「そうじゃ。今、別の者に最後のまとめをしてもらっておる。間違いなどあってはならないからな。これが終わればのんびりしたいと思っておるんだ」
「あのさ・・」
「何じゃ?」
「フェスティバルももうすぐだろ?マスターのおかげでコーヒーの知識も学べてさ・・その
俺が淹れたコーヒー一番最初に飲んで欲しいんだけど・・」
目をまん丸した抄湖さんがいて、しばらく沈黙が続く。さすがに恥ずかしくなり
「何か黙ってないで言ってよ」
「もちろんじゃ」
そう彼女が微笑む。
その表情を見てホッとする。
———研究室
「
「へへ・・そうか」
「ひぇ・・怖い・・まあ、いいっす。これ、頼まれてた物です。すみません、急遽USBで運ぶ形になってしまって。パソコンの調子が悪くて万が一の事があってはいけないですから」
「いや大丈夫じゃよ。こちらこそ無理を言ってしまったから」
「いえ、オレは構わないですよ。いいですか?盗難防止の為あちらではバックアップはしてません。そちらに移してバックアップしてくださいね、ではオレは帰ります」
「礼を言う。ご苦労様」
———パタン
「後はこの作業で終了だ」
———ピコン
「いけぬ・・この日報を渡すのを忘れるところだ・・」
抄湖さんが少しの間だが席を外した時だ。俺も自分の持ち場に戻ろうとしていたら
「勇人!!大変だ!」
真壁くんが階段から急いで駆け下りる。
「何だよ、血相変えて」
「抄湖さんの!」
「え?」
———バタバタバタバタ
「抄湖さん!」
「あ、
桃さんと今にも泣きそうになっている柚鈴さんがいて抄湖さんは奥の方で俯いている
「何があったんだ?」
「ごめんなさい!!」
柚鈴さんが頭を下げている。抄湖さんは無言のまま・・桃さんはとても心配していて柚鈴さんの側にいて・・
「説明してくれるか?真壁くん」
「実は・・白川さんが最後のまとめのUSBを間違って捨ててしまったらしいんだ」
「え?・・」
「研究室の清掃をしていたから、柚鈴と一緒片付けていたの」
詳しく聞くと柚鈴さんと桃さんが入って片付けをしていた。そのUSBは抄湖さんの机にあって片付けた拍子に落ちたのかもしれないと。
「周りとか探したの?」
「うん・・何度探したけど見つからなくて」
「抄湖さん、バックアップは?」
抄湖さんは首を横に振る。
「最後の頼んでいたものはパソコンに不備が出ていた。盗難防止もあるからUSBに入れてこちらでバックアップする予定だった」
普段ならデータが消えないようにバックアップをしていたが大丈夫だろうと高を
「どうするんだよ・・締め切りって明日だろ?」
「ちょっと、真壁は黙ってて!」
「は?そんな事出来るか!抄湖さんが頑張ってやってきたんだぞ!」
二人言い争いになり、柚鈴さんは俯いたまま
「もう良い、喧嘩しても仕方ないじゃろ。ワシのミスじゃ。認識が甘かったのじゃ」
「とにかく、もう一度探そう。真壁くん!ゴミ捨て場に行こう。柚鈴さんと桃さんはもう一度、この研究室を探して。抄湖さんはバックアップが出来るか頼んでみよう」
みんなが頷き、急いで探す。だけど、大学院で出るゴミの量は半端なくそれだけでも時間はかかる。
「こんなに合ったら間に合わねえーよ。見つかったとしてもバックアップしてそこから資料を作るんだろ?」
「だとしてもだ。見つけなきゃ・・抄湖さんが頑張ったものだ。無駄には出来ない」
「勇人・・」
もしもだとしてもだ。それは結果に過ぎない。だからこそ・・
「そこで何をしてるんだい?」
用務員の
「すみません。もしかしたらゴミの中に大事な物が誤って捨てられたかもしれないんです」
俺達は高尾さんに事情を説明する
「何とそれは大変だ・・だが、すまぬな。あんたらの所は抄湖さんの所だね?そちらのゴミは先程、収集車が持っていったばかりなんだ」
「ウソだろ・・」
高尾さんによれば、仮に収集した車がわかったとしても全て粉々になっていると
「ここまでかよ・・どうする?勇人」
俺達は一旦、抄湖さん達のところに戻ることにした。この後の事は抄湖さんの指示を待つしかない。柚鈴さんは大丈夫だろうか?
———研究室
「そうか・・」
俺達は戻り抄湖さん達に説明をする。柚鈴さん達も探してみたがやはり見つからず。落ち込む柚鈴さん。
「バックアップの方はどうだった?抄湖さん復元はいけそう?」
「ダメじゃ・・向こうには何も残っておらぬ」
「私の責任だ・・私が・・」
「柚鈴・・」
柚鈴さんは涙を流し桃さんは慰めている。今まで抄湖さんが築き上げたものが一瞬にしてなくなる。俺には何も出来ないのか?
「白川くんのせいではない。ワシにも落ち度があった残念だが受け入れしかないだろう。自分を責めるな。今回は辞退する事にする」
「辞退?いいのかよ。抄湖さん」
「こういう
そう優しく微笑む。だけど、その表情は悲しみがある震えてるのかもしれない。
抄湖さんはそう言って背中を向ける。それを見た柚鈴さんは歯を噛み締め
「どうして、怒らないんですか!!」
「柚鈴」
「普通なら、怒られたって仕方ないのに。私はあなたに酷いことをした。きっと、天罰が下った。それなのに何で・・笑えるの?」
「・・ぇる?」
「抄湖さん」
「怒ってるに決まってるじゃろが!!!」
抄湖さんの声が部屋中響き渡る。その声に柚鈴さんは肩をビクッとさせた。
「あの研究に命をかけてきたのだ!この怒りを全てぶつけたいそう思った」
拳を震わせ怒りを堪えている抄湖さん。彼女の努力が詰まっているからこそだ
「じゃがな?白川殿その怒りをぶつけたとて現実は変わらない。なら、何をするべきか?何かをしたいと思うなら!!」
柚鈴さんの手を握りこう話す。
「ワシに力を貸してくれぬか?」
「え?」
「今からもう一度、作り直す」
「てっ!本気ですか?いくら、最後の部分だけとはいえ明日に間に合わないっすよ」
真壁くんが驚きを隠せない感じだ。彼の言った通り依頼したものは一日で作れるものでない。この研究も一人では出来ないからだ。抄湖さんの想いがみんなの協力で成りだっている。
「大丈夫じゃ、その内容はここに入っておる」
頭を指して微笑む。
「良いか、柚鈴殿。過ぎてしまった事は戻らない。なら、新たなに進むしかないのだ。ワシにとってそなたは必要なのだ。想いが衝突してもだその言葉一つ一つ考えていくべきなのだ」
「抄湖さん・・はい!」
「この作業が終われば沢山話そう」
そう言って微笑む抄湖さんを見てみんないつの間にか笑みを浮かべる。
「皆も頼む。君らの力が必要じゃ。今からワシの指示で進めて欲しい。どうか、よろしくお願いします」
〝はい〟
「柚鈴さん」
「勇人、ごめんね」
「抄湖さんも言ってただろ?出来るように考えればいいんだ。あまり、責めるな」
「うん。本当不思議だよ」
「え?」
「ううん、何でもない。私達がやって来た事を成功させたい。抄湖さんを助けたい」
「ああ。そうだな」
柚鈴さんに笑顔が戻ってきてよかった。抄湖さんの言葉はやはり魂がある。みんな、それぞれの役割を責任をもってやろうとしているのがわかる。
「抄湖さん、一緒にやり遂げよう」
「勇人氏、ああ、一緒じゃ」
そして、抄湖さんの指示のもと動き出す。
あなたに微笑む一杯を みもり @mimoriandu608
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