第144話 年内のバタバタ

 アフターを何とか穏便に無事に乗り切り、猿助さん達と別れた。

 帰り際に連絡先交換をお願いされ、カナタの友達だから、まあいいだろと、了解した。



「でも俺はわりと電波の届かない外国にいることが多いから返信は一ヶ月くらいかかると思います。でもわざと無視してる訳では無いので」


「あー、取材旅行とか動画撮影で海外の何処かによく行ってるて書いてありましたよね。」


「そうそう」


「じゃあ猿助さんも今日はお疲れ様」

「エスタ氏、売り子の手伝いからアフターまで、お助け感謝でござる」



 そんな話をして彼らと別れ、カナタとだけ一緒に帰った。



 電車を降りて歩いていると、道端にうずくまる妊婦さんがいた。

 俺達は妊婦さんに駆け寄って声をかけた。



「だ、大丈夫ですか!? 救急車を呼びますか?」


 カナタが先に声をかけた、しかし妊婦さんは


「うう……」


 苦しげに呻くだけ。


「タクシーの方が早いかも! 止まって貰う!」


 俺は車道の近くに行き、タクシーを呼び止めた。


「運転手さん! 至急病院まで!」

「は、はい」


 カナタと二人で妊婦さんを支えてタクシーに乗せた。

 そして病院につく寸前、雑菌やらに負けないように俺は小声で『ピュリファイ』と唱えた。


 そのせいで一瞬だけうっかり妊婦さんを光らせてしまった!



「何だ!? 今の光は!?」


 びっくりするタクシーの運転手!



「僕がスマホのライト間違えて押しちゃいました!」

「なんだぁ、スマホか」


 妊婦さんは苦しそうにお腹を押さえ、目を閉じてたから多分気がついてないし、カナタがすかさずフォローしてくれたし、一瞬だったのでなんとかなった。


 タクシーを勝手に呼んだのは俺なので代金は俺が支払った。



 * *


「病院もなんとか受け入れてくれてよかったね」

「ああ」



 さて、年末ギリであったため、俺の車の納車は年明けとなった。

 今なら多分、自分で大樹に魔力を注ぎ込めるため、満月を待たずにゲート問題をどうにかできるかもしれないと予想。

 


 そしてそろそろ異世界に帰るとブレスレットで彼らに連絡をした。



『遅いわよ! 早く帰って来てよ!』

「通販の荷物とか色々待ってたから仕方ないだろ。それに今夜帰るから」

『もっと早く言いなさいよ!』


 ミレナに怒られた。



 そして気をとりなおし、夕食を食べに行く。

 


「あ、あそこ、ファミレスがあるよ」



 カナタが指で差し示した先には確かにファミレスがあった。



「じゃあ行くか」と、店内に入ったら、年末にも関わらず、なかなか人が多い。



「えーと、僕はグラタンにしようかな」

「俺は天ぷらセットにしよう」


 オーダーしてしばらく待つと注文した品がテーブルに並んだ。



「グラタン美味しい、やっぱり冬はこれだね」


 カナタがグラタンを美味しそうに食べている。

 俺が口に運んだ天ぷらはサクッといい音を立てる。


「天ぷらもいいぞ、サクサクのホクホクだ。美味っ!」


 甘いかぼちゃの天ぷら、エビ天、大葉、れんこん、どれも好きなものばかり。



 二人してご機嫌で夕飯終えてから帰宅し、宅配ボックスに届いてた荷物を回収して家に入る。


 そして夜までギリギリで作業した。


「動画の言葉が謎の言語で分からないのが残念て言われてたから、適当に当たり障りない字幕でもつけておくか」

「そうだね、でもとりあえず僕は重箱におせち料理を詰めるよ」


 そうだ! 新年が来るんだった!


「ありがとう! よろしく! あと、先に風呂に入っててな!」

「分かった!」



 動画を再生させつつ字幕のセリフなどを入れて行く作業をした。


 食事のシーンの味の感想などはほぼそのままで、俺が改変したセリフを打ち出し、動画にはめていく。



「こんな感じでいいだろ! 急いでシャワー浴びたらそろそろ新年が来るから、除夜の鐘を聞いたらさっさと帰ろう! あいつらが待ってる!」



 俺が急いでシャワーを済ませて出て来たら、いつのまにかカナタがゴスロリに着替えてる。



 すると、ゴーン、ゴーンと、風情のある鐘の音がテレビから聞こえて来た。



 俺達は出発ギリギリで除夜の鐘をテレビで聞いた。

 よし!


「翔太、あけましておめでとう!」

「あけましておめでとう、今年もよろしく!」



 おせちを魔法の風呂敷に入れて、



「翔太、もう忘れ物ないかな?」

「分からない、けど、もう行こう」



 俺達は廊下にある異世界への扉に向かった。


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