第42話
「その服、とても似合っています。素敵ですよ」
彼女の容姿を褒めるべきだった。 褒めるべきチャームポイントもたくさんあった。それでも当時のヨナには適切なタイミングで女性を喜ばせるような言葉を並べる器量はまだなかった。
「ありがとう。あなたの服も作ってもらわなければね」
彼女の背に追いつくのにこの後、一年かかった。このときはヨナの目線はやや彼女の目を見上げる位置にあった。日本であれば中学生男子であるヨナの身長の成長は一般的な傾向通りだった。現在は中学1年生の平均的な身長の範囲である145センチメートル程度。これから急激な成長期の始まりで、1年生の間に一気に身長が伸び始め一年で165センチメートル程度になった。高校生にもなれば成長スピードは緩やかになるが、まだま成長が続き、青年になる頃には175センチメートルを超えて止まった。
「でも、わたしたちはこの国の人間ではないし、お偉い方の許しがなければ望んでも士官は叶わないのではないですか」
ホムラは首を振った。
「この国で1番偉い人は誰?」
「国王です」
「フィオレンティア姫は誰の娘かしら」
「それはもちろん王女ですから」
「フィオレンティア姫もあなたのことを気にいっているわ。そうでなくてもこの国の恩人よ、あなたは。わたしがあなたの希望を尋ねると相談する前から、姫様から同じことを言われたわ。 あなたのいたお寺からここへ向かう出発直前にもぜひともあなたに仕官を承諾させるように言われているの」
光栄なことである。
ヨナの士官は受け入れられるようだ。もちろん、国中の話題は救国の英雄になるであろうホムラへの賛辞で、みな尊敬の眼差しにあふれているが、彼女を無事にここへ連れてきたヨナの功績も知られてはいるようだ。英雄は多くいた方が士気が高まるからかもしれない。城内ではみんながヨナに対して好意的に接してくれていた。
異世界からの召喚戦士であるホムラ以外にも強者が多くいることは国民に安心感を与える。
ヨナへ当てがわれた部屋も現代世界のホテルに負けぬ洒落た客室である。待遇は良い。こうして向き合うホムラの背後には窓が多く明るい日差しが十分に入る。床材はマホガニー。ホムラが歩くとヒールが硬い音を立てるが、くつろげるようテーブルやソファーの周囲には厚みのある絨毯が大きく敷かれていた。調度品は多くなく、部屋はどこになにがあるか平行の視線移動で見回しやすい。この世界の建物にしてはすっきりとして洒落た作りだ。
家具の多い家よりも、夜になればロマンティックな雰囲気を醸し出すことができるだろう。
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