第14話
「尊敬する東上先生へ
こんにちは、私は朝倉麻里亜と申します。本日、筆を取りましたのは先生の作品に触れ、その深い筆致と物語性に感動し、心からの敬意を表してお手紙を書かせていただきました。
東上先生の作品は私にとって、日常の中で特別な時間を過ごすことができる宝物です。作品に込められた深い感情やメッセージは、私の人生に新しい色彩を与え、時折胸を打つような感動をもたらしてくれます。そのたびに、先生の作品の素晴らしさに感謝の気持ちでいっぱいです。
私は一つの作品から次へと、先生の作品にどっぷりと浸りながら、日常の喧騒から離れて贅沢な時間を過ごしています。先生の文章は私にとって、心の拠り所であり、毎回新たな発見があります。その影響で、私は日々の生活に希望や勇気を見出しています。
お手紙をお送りさせていただいたのは、もし可能であれば、先生にお会いして直接お話しできるならとの思いからです。貴先生の作品に対する深い愛情と尊敬の念をお伝えできることが、私にとって特別な機会となることでしょう。お忙しいところ、誠に恐れ入りますが、どうぞお手紙がお届けでき、お考えいただければ幸いです。
お手紙が東上先生のお手元に届き、お時間が許す範囲でご検討いただければ幸いです。
敬具
朝倉麻里亜」
署名の後に書かれた連絡先や所属組織での肩書き、またその組織を自身が経営していることを察すれば、出版社も放っては置けない手紙だ。
あえて手紙の本文では身分をひけらかすようなことはしなかった。
ただ、いたずらと思われて手紙が捨てられないよう最低限の配慮がされるよう秘書を通じて、出版社には作家へファンレターを送りたい旨を事前に伝えていた。
期待した通りに手紙は編集者を通じて東上武の元へ転送された。
彼女ほどの財力を持つものであれば、興信所を使って事前に作家の素性を探ることはわけないことだった。実際、ビジネスにおいては取引先の信用度合いを測るために内偵をすることもあった。そう言った仕事に長けた人材も社の内外に多く囲っていた。
しかし、今回は止めておいた。これは仕事の取引を求める手紙ではない。これはあくまでもプライベートな話なのだ。取次した出版社の営業社員も、朝倉麻里亜という彼女の名前には聞き覚えがあった。
個人的な友誼を結びたいのに興信所を頼るのでは信義に反する。彼は自分のことをなにも知らないままに会いに来るかもしれないというのに。
果たして彼は来てくれるだろうか? その前に返信してくれるだろうか?
他に本業のある若い作家なら面倒くさくて手紙を読んでも、うっちゃってしまうかもしれない。
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