第15話 城
フォルテはケミーニアの案内でこの国の首都にやって来た。
本当はこのまま飯屋へ行来たいところが、先に城に向かって国王に会わなければいけないと言われた。
まあその為に来たのだから仕方がない事だが、早めに終わらせてとっとと美味い飯を食いに行きたい。
この時のフォルテは、そんな事を考えていた。
城に到着すると、ケミーニアの馬車はパレードの様に盛大に迎えられ、そのまま国王に謁見する事になった。
ケミーニアが早く帰る理由を早馬で伝えていたので、スムーズに謁見できるのはありがたい事である。
通されたのは、仰々しい謁見の間ではなく、大きな食卓のある部屋であった。
「座ったままで失礼さします、只今骨を折っておりまして。お帰りなさいませ、ケミーニア様。それに、ケミーニアの故郷のエルフ様も、ご来訪感謝いたします」
「エドビン、もっと胸を張れ、私はお前の配下なのだ。様づけは要らないと何度も言っているだろう」
フォルテの第一印象はえらく腰の低い国王だった。
後から来るのではなく、ケミーニアとフォルテを出迎え、そして頭まで下げた。
その様をケミーニアが咎めている。
国王であれば、もっと堂々とすべきだろうと、フォルテも思った。
「お二人はエルフ様ですから」
国王エドビンはケミーニアの言葉をピシャリと断った。
その後は、案内されて食卓の席へと座った。
食卓に座るのはケミーニアとフォルテ、それから国王エドビンと後2人。
紹介されたのは公爵と宰相であった。
皆、国の重鎮だからか歳をとった見た目である。
ケミーニアからはまだ若いので失礼があっても見逃して欲しいと言われていたので違和感を感じたが、人の時の流れとエルフの時の流れは違うのだろうと思った。
「なんだ、これは?」
料理が運ばれてきて、フォルテは目を見開いて苦情を口にした。
「何か問題がありましたか? 私どもはいつもこれなのですけど……」
フォルテの言葉の意味を、エドビン達はわかっていない様だ。
ケミーニアは、しまったとばかりに顔に手をやった。
「お前たち、フォルテ様は人と同じ食事を召し上がると伝えただろう。特別にいい物を用意する様にと」
「はい。ですから、朝取れの野菜ばかりを……」
ケミーニアとエドビンの言葉は、噛み合っていなかった。
しかし、フォルテが問題視したのは、それとは違った所であった。
「お前たち、いつもこんな草ばかり食べているのか?」
「はい。そうでございます!」
フォルテの質問にエドビンは満面の笑みで答えた。
「私達も、エルフ様達のような生活を心掛け、もっと崇高な行いができるようにと日々精進しております!」
その返答に、フォルテはあからさまに顔を歪めた。
「お前たちは、バカなのか?」
フォルテの率直な言葉が、城の食堂に響いたのであった。
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