それは崩れた砂の城のような
「で、結局目新しい情報は無かったと言うわけですね、サーティン」
「そんな言い方しなくても・・・簡単に尻尾掴ませるようなドジならとっくの前に掴んでますよ」
翌日。
学校のカウンセリングルームで私と一二三さん、九国さんの三人は、お弁当を広げて昨日の事を話し合っていた。
「正直昨日の事があった以上、お嬢様の復学は再検討が必要かと思うのですが・・・」
おずおずと言う九国さんから私は目を逸らした。
確かに、昨日は九国さんのお陰で事なきを得たが、もう一度あんな事があったら。
それが私1人の時だったら、間違いなく無事では済まないだろう。
それは分かる。
けど・・・
「私は反対ですけどね」
「サーティン。それはどういう了見ですか?」
「最近の蒼さん、学校を楽しんでますよ。まだ17歳なんだから、学校生活を楽しみたいに決まってるじゃ無いですか。それを、ずっとあの家に籠もりっぱなしは酷じゃありません?」
「それでも安全には替えられません。状況が変わったのです」
「それはいつまでです?この黒幕を排除するまでだとしたらいつになるか分からないですよ?」
一二三さん・・・
いつもの軽い感じの彼女とは思えない、真剣な雰囲気だ。
そういえば、以前一二三さんは『学校に行ったことが無い』と言ってたな・・・
九国さんは何か言いたげに一二三さんを見ていたが、やがて無言で私の方に視線を移した。
「お嬢様はどうされたいのですか?こんな流れで投げてしまい申し訳ありませんが・・・」
九国さんは済まなそうにしていたが、むしろ大歓迎だ。
私の返答は決まっている。
「私は・・・学校に通いたい。お父さんもお母さんも、雄大さんも居なくなって。九国さんは居てくれるから何とか踏ん張れているけど、私が私なんだと感じられる場所が欲しい。だから・・・」
九国さんは今度は床に視線を移してじっと考えていたが、小さくため息をつくと顔を上げて言った。
「分かりました。学校へはこのままで・・・」
「九国さん・・・」
「ただ、今後は校門を出てすぐの所に車でお迎えに上がります。今までより自由度は格段に下がりますが、それはご了承下さい」
「それはいいけど・・・九国さんが迎えに来るのは目立たない?」
「変装するので問題ありません」
あ、そうか。九国さんも変装の腕はかなりのレベルなんだった。
「オッケー!先輩、話が分かりますね!蒼さん、良かったね。校内は私がバッチリ守ってあげるから」
「うん、ありがと」
校内は一二三さん。外は九国さんが常時守ってくれる。
その事実は私を勇気づけた。
「でも・・・昨日の橘さん達やバイクの人たちはやっぱり雄大さん・・・」
「恐らく。今の時点ではそう思って良いかと思います」
「私も先輩に賛成。それ以外に考えられないもんね。ってか、ここまでするなら堂々と出てくればいいのに!」
私は雄大さんの去り際の笑顔を思い出した。
理不尽に奪われた妹さん・・・
雄大さんの激しい憎しみと共に、ずっと昔。
まだお父さんもお母さんも居た頃の、雄大さんのお日様のような笑顔を思い出した。
もう、戻れないのかな・・・
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