ギフトマンの裏の顔

 その夜、若者たちが村人たちを捕まえていた。ありとあらゆる村人が広場につかまり、ノースの狂信者と化している。

「“神に捧ぐ生贄”それはこの村で何度も繰り返されてきたことだ」

 意気揚々とその中央にたち、村長の杖をついて真似をしているノース。村人たちはしたをむいてかれの行いをみつめている。

「ノース、バカな事はやめるんじゃ、私が悪かった、なんでもするから、ノース、話をきいてくれ」

 同じようにとらえられノースの傍らにいる村長が声をあげる。

「いや、俺は聞かねえ……いい事を思いついたんだ、爺さんは、俺が一人前にならなければ村を出さねえと聞かねえ」

「それは……ノース、この街の外にはいくつも危険があるからだ、ギルドだって、安定などどこにもない、そこには死と苦しみが……」

《ガッ》

 村長の手を踏みつけるノース。

「そんな話は聞き飽きた、これからは俺たちの時代だっていうんだ、そのことを証明してやるのさ」

「なんのために……」

「力が有り余ってるんだ」


 ノースは自分の腕をだし、肘の内側をかるくきった。すると血があふれ出し、周囲がそれをみて騒然とする。

「何をする!!」

「災厄がくるぞ!!」

 村人たちが叫ぶ。

「呼び寄せてんだよ」

「え?」

「すでに、この村には危険な兆候がある……俺はみたんだ」

「見たって何を……」

「“ギフトマン”」

「ヒイィッ!!」

 村人たちが戦慄する、最も顔をこわばらせて青くしていたのは村長だった。

「そ、そんなものはこどものおとぎ話じゃないか」

 とくちにする老人の村人

「ふん、そう思うかい、だが知っている人間は知っている、ギルド関係者とかその仕事を請け負っている人間はな……“ギフトマン”別名“災厄の道ずれ”」

「災厄の?どういうことだ、くわしくおしえてくれ」

「ああ、やつはな……災厄をつれてくる、だがあんたらのする雨ごいや犠牲矢なんかじゃ歯が立たねえ災厄さ、奴は犠牲も必要とし、かつ……災厄もつれてくる、奴がここに現れたこと自体、“兆候”なんだ、俺はもう何もこわくねえ、なにせ、旅の執着にある“災厄”が向こうからやってくるんだからなあ、俺は、力をてにする」

 そういってノースは、杖を村長にむけた。

「その前に……この村にあるという“高濃度マナの刃”をもらわなきゃならねえなあ」

 心当たりがあるように目を見開いた後、村長は目をそらすのだった。




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