再会
「彼女を……巻き込まないようにしないと……この苦しみに……あるいはもしかして彼らにひどい目に合わせられる可能性も」
パルシュは歩いていた。もともと才能がなかったのもあいまって、道に迷っていた。
「心配かけちゃだめだ」
パルシュの頭の中で、両親の背中が思い浮かんだ。両親はこの村の法と掟のためにしんだ……災害を止めるために。パルシュが信じていない村の宗教のために。以来村の人々は優しくしてくれた。その反面、どこかに影がある気がしたが、ここでそれが露わになるとは。
「やっぱり、冒険者なんて僕が目指すべきじゃなかった」
足元がふらつく。連日の戦闘や冒険で、流石に疲れが溜まっていたのだろう。
「ヘヘ」
彼は無理をして笑った。こんな時は笑うしかない、両親から教わっていたことだ。
「大丈夫、なんとかなる、なんとかならなくたって、それも運命だ」
そういって納得した瞬間、からだがぐらり、と揺れた。そしてまた地面もぐらり、とゆれたのだった。
「危ない!!」
“ガシッ”
誰かに手を掴まれた、目の前のがけ下は10メートル以上ある、ふりむくとそこには見知った顔、幼馴染のアレポがいた。
「パルシュ……!!」
「アレポ!!」
抱き合う二人、その背後から、拍手をしてイースが現れた。
「泣けるねえ」
「イース、あんたなんでここに……」
「いやあ、普通にその子に依頼をうけて、お前を生還された見返りに“キスと結婚”と約束されたのでね」
「何!!?」
「いいの、パルシュ……私が決めた事だもの私は」
「こいつは!!!」
「!!」
瞬間、イースはパルシュの直ぐよこにきてしゃがみこみ、彼の口をふさいだ。
「こいつを殺されたくなければいう事を聞くんだ、お前は事故死した事になるが、こいつにはお前を諦めてもらわなきゃ口説くてがねえ、お前は、別れをつげろ、あとは俺が何とかする、二回目の“始末”を楽しめよ」
そして続けられた。
(いいか、お前も協力しろ、彼女の命がおしければな、お前は別れをつげろ、理由はなんでもいいでっちあげろ、その瞬間お前の命をもらう、お前だって生き残って俺との結婚を見せられるよりいいじゃないか、なあ?死んでこの村の役に立て)
その言葉に、ふと、両親の背中がダブった。
“死んでこの村の役に立て”
両親は村人たちに一切抵抗しなかった。村長に、そして村長の息子であるイースに。
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