ギフトマン
ボウガ
プロローグ
古代、勇者は魔王との長い戦争をへて、平和な世界をつくりだした。その世界は100年続いたが、やがて原因不明の災厄によって滅び、封印されたはずの魔王が復活し、勇者の都を占拠する。
そして現在。古い英雄の血筋である勇者ノースのパーティが、魔王討伐に向けて、魔物狩りの修行の日々を過ごしているのであった。
日照りの強い夏の日。ノースは、ダンジョン“クーベラ”に挑んでいた。彼らのラル村の近くにあって、太古の魔法がかけられ、数々の魔物が生み出されてきたダンジョンである。
剣士で金髪金目のさわやかな青年のノース。治癒魔法使い、麗しく狐目のイベラ。こん棒使で筋骨隆々のルアンス。そして、新人冒険者で村で役立たずといわれ続けている、パルシュ。
彼らは、パーティの主力のノースとルアンスの実力によって、ゴブリンやファイアウルフなどの雑魚を難なくけちらし、その奥地へとたどりついた。
「ここが……奥地、巨大な“ゴブリンキング”がわくという」
パルシュが、壁画としてかかれた巨大な魔法陣の前に立った。
「そうだ」
パルシュは想像した。巨大なゴブリンがそこから現れる姿。無名な自分がその腹部に剣を突き立てて、村の英雄になる姿を。
「いつ、いつ現れるんでしょうね?」
振り返るパルシュ、その瞬間、足ににぶい痛みがはしった。
「??」
「すまねえなあ」
ノースが、パルシュの足、膝裏ををきりつけたようだった。
「な、なんで……俺が、お荷物だから?」
「はっ、関係ないのさ、すまねえが、すべて作り話なんだ、この魔法陣、すでに故障してて、適当に陣を書き換えたのさ、俺たち三人で」
「クフフッ」
イベラが意地悪く笑う。
「そんな、嘘だ……皆、優しくしてくれたじゃないか、村の皆は君たちに憧れて」
「ああ、そうさ」
ニヤリと笑うノース。
「すべて俺たちの手ごまだ、金品を盗んでは隣村で売って、金品にかえのゴブリンキングの財宝と偽っては村に持ち帰る、それが俺たちの仕事、お前たちの夢を壊して悪いが、いい武器やアイテムを手に入れるのに必要な事でなあ」
倒れたパルシュの顔をふみつけ、力をぐりぐりとふみつけるノース。
「……ギフトマン」
ぽつりとつぶやいた言葉に、ノースが反応した。
「がはははは!!ギフトマンだってさ、信じるものは救われるってか?そんな人間はいねえ、いたとしても俺と同じ詐欺師だろうさ、何せ……古代の都は霧がかかっていて、莫大な魔力と高価なアイテムをもたなきゃ近寄れねえ、伝説の勇者になるのにも、金がいる……かえってくる人間もごくわずかって話だ、ギフトマンね……“3度帰還し、勇者の卵に力を授けるもの”」
ふと、ふみつけていたのを離し、遠ざかっていく足音。やがて、パルシュは自分の意識が遠くなっていくのを感じた。
「まあ、せいぜい祈って、助けてもらうがいいさ、“ギフトマン”にな」
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