第3章 16話 優夜を知っている②

 黒い霧は、影の形になる。ゆん菜たちの体を覆った。

 黒い衣をまとったように、ゆん菜たちは夜闇に紛れて見えにくくなった。


「ユナ、これはシャルアの霊力よ。このまま隠れましょう」


「空間移動がいい」


「そうね。ユナ。シャルアに掴まって」


「あっ、わたしはだいじょうぶ」


 優夜先輩がくれた腕輪がある。彼に負担をかける必要はない。


「ユナは空間移動ができたの? 教会ではだめだっていってたのに」


「霊石があるの」


「待て」


 ふいに、シャルアが手を伸ばして制した。ゆん菜たちは立ち止まる、


 シャルアに腕を引かれ、ゆん菜たちは茂みの中に身を隠した。


 やがて、遠くから蹄の音が聞こえてきた。


 少し遅れて、辺りがほの明るくなる。


 光の波のような物が流れてきた。腰くらいの高さで、森の木々を撫でて消えた。


 淡黄色をした、ムーナサリア人の霊力でできた波だった。

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