第20話 指揮官への任命

 よく見てみる。メンデスと一緒に3人で談笑をしているみたい。一歩引いて、何やらコクリとうなづいていた。

 にやりとした笑みで、提案でもしているのかこの場の状況などお構いなしに自慢げな表情でペラペラ話している。何か、商談でもしているのかな?


 余裕そうな表情を見るに、さっきまでのことなんて気に留めていないのだろう。

 逆に、周囲が動揺して、2人のところに行きずらくなり会話の時間が増えるとでも考えているのだろうか。


 とりあえず、会話に入るしかない。速足で3人のところまで歩く。近づいて、3人がこっちに気づくと大きく手を振った。


「すいませーん、ちょっといいですか?」


「私たちも、話に加わらせてください」


 怪しまれないように笑みを作って話に入る。シャマシュは、どこか警戒した表情。ホーネルカーはワインを片手に余裕そうにこっちを向いた。


「おおっ、ミシェウ殿にシャマシュ殿。2人も私の作戦に興味をひかれたのですかな?」


「う~~ん、まあそんなとこ」



「商売の話とか、そんな感じですか?」


「そんな安い話ではありません。今度の軍事作戦について──私を指揮官にしてほしいと交渉しているのです」


 その言葉に、シャマシュの表情がまた険しくなる。肩もピクリと震わせて、何かよい感情を持ってないのがわかる。ちょっと違和感を感じるのは私だけなのだろうか。


「で、2人はどう考えているんですか?」


 シャマシュの質問に、2人は顔を合わせてコクリとうなづいて答えた。


「はい、ホーネルカー様は、現場指揮官として何度も危険な突撃指令をこなし活躍してきました。部下の面倒見もよく、慕われているので今回の作戦全体の指揮官役にしたいと考えておりました」


「今のメンデスの言葉の通りだ。兵士たちからも、信頼の声をいただいているだから任せるつもりなのだ」


「しかし、現場指揮官と全体の指揮を担うのでは求められることは全く違います。ただ勇猛に突っ込んでいけばいいというわけではないんです。時には引かなければいけないことだったあります。そういった判断はできるのですか?」



 きっぱりと言い放つシャマシュ。拒むわねほんとに。確か、今は隣国ムガルド帝国と国境をめぐって争いになっているんだっけ。ムガルド帝国は魔王軍をはじめ魔物たちとつながりを持っていて、銀山などが連なっているコヒム山地を占領され、現地のコンラート家の領地の人が奴隷のように働かされている。その領地を奪還するための作戦なんだっけ。


「気にするな。戦場のことはわかっているつもりだ。心配しなくていい。私に任せておけば、領地の奪還は確実ですぞ」


「ほら、ホーネルカーだってそう言っている。今はほかの方面の作戦もあり全体的に参謀役が足りていない、彼の力が必要なのだ」


「それに、周囲の関係者にも話は通しております。今更変えるわけにはいかないわ」



 周囲への説得も完了というわけね。ただ反対しても覆すのは難しそうかな。メンデスの言葉通り、この国の人って一度決めたことを変えたがらない保守的な人が多いし。

 どうしよう、王国である以上国民が不当な扱いを受けている以上何もしないわけにはいかない。他に、めぼしい人材がいるわけではない。とりあえず、ここは了承して様子見をした方がいかもしれないわ。


 それにしても……やっぱ窮屈。周囲への配慮に礼儀作法。必要なこととはいえ息が詰まって疲れてきちゃった。


 大きく息を吐くと、シャマシュがさらに質問。


「普段から、冒険者との交流はあるの?」


「現場ではよく話して一緒に突撃とかしてたな。ただ頭が悪いやつが多くて使えるのとそうでないのとピンキリが激しかった。まあ、俺にとっては使いやすい駒だったがな。一応食い扶持として彼らの武器の修理の町工場を経営してるからつながりがないわけではない」


 駒──その言葉を聞いてやっぱり不安かも──どうにかしてこの人のことを調べられないかしら。あんまり面識がないし。

 そうだ、これならいいかしら。いいアイデア発見。



「たしか、冒険者たちの武器や魔道具などの加工や修理を担っているといいましたよね」


「ああ、何人かの職人を雇ってな」


「じゃあ、実際にそこに行ってみるのはどう? この人の職場とかを見れば、人なりやこの人が上の立場になった場所がわかる」


「いいかもしれないわ」


 確かに、ここでいろいろ言っても始まらない。実際に行ってみれば、何かわかるかもしれない。やっぱり人に聞くよりも自分で足を動かして、見たほうが判断できると思う。


「わかりましたぞ。職場ですな? 存分に見ていってくれ。その代わり、条件なんだがよい場所だと思ったら貴様のとこの兵士の武器の修理も請け負わせてくれ。最近仕事が減り気味だからな」


「わかったわ」


 自慢げに笑うホーネルカー。

 そして、日にちや場所の打ち合わせ。この王都の裏通りの外れにあるみたい。私見たことあるかも。

 こうして、私たちは三日後に決まった。



 どんな場所かはわからないけれど、よく観察をして彼のことを知りたいな。シャマシュは、まだ警戒している。今日一日固そうな表情のまま復旧作業などを行っていた。


 相当疑ってるのかな?



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