第17話 ドレス姿

 はぁ~~。

 これだから王宮は……。


 ホーネルカーの作戦の会議が終わった後、今度はカイセドたちとパーティー。

 占星術も研究した~~い!!


 堅苦しいドレス、自分の意見を出すこともままならない。

 まあ、カイセドに聞きたいこともあるし、行かなきゃいけないんだけどさ……。いったんシャマシュの部屋に戻って、ドレスを整えた。鏡の前でくるりと1回転。


「本当にきれいなドレスね」


「ありがと、でもミシェウも私に負けないくらい似合ってますわ」


 シャマシュはいやいやドレスを着飾った私を見て、ほほ笑みながら言う。


 いやいや、シャマシュだって──私よりずっとかわいいって。


 彼女特有の水色の髪。青い花飾りか彼女達ヘルムート家の領地の秘境地帯山でしか取れない大変希少価値があるものだ。


 幼い顔つきで、純白を思わせる美しい肌。

 肩を露出した白いドレス。幼い顔つきにい合わないくらい、鷲掴みできるくらい大きい胸。


 私よりも一回り大きいおっぱい。男から見れば、たまらない体つきだって絶対!

 体一つが、周囲を魅了させるために最高の存在であると感じさせる。


 シャマシュは、私が言うなり顔を真っ赤にして固まってしまった。いやいや、いつものクールなシャマシュのイメージが台無しだよ!


「んなことないって、シャマシュの方がずっとずっときれいだよ。もう王国──いや、世界で一番!」


「あ、あ、ありがとうございます……」


 顔を真っ赤にして、噛みまくって言葉を返してくる。ちょっとかわいい。

 いつも無表情でいることも相まって周囲からはミステリアスで、意思が強い令嬢ととらえられていた。けど、意外な面もあるんだねぇ~~


「でも──ミシェウ様も美しいですよ」


「私もそう思います」


「お世辞ありがと──」


 苦笑いをして、手招きで言葉を返す。アルルまでほめてくれた。さっきは拘束までしてきたくせに……。

 じゃじゃ馬の私にドレスなんて似合わないだろうけどね。




 そんな感情を、アルルはため息をついて答える。


「全く──自分が見えていないのでしょうか?」


 そう言って、アルルは私の肩を掴んで、くるりと向きを変える。壁際にある鏡に向かい合う形になり、自分の着飾った姿が見えてしまう。


「自分で見てください。あなたは──シャマシュ様の次くらいにはきれいで素敵な姿をしていますよ」


 次くらいにはって──お世辞が現実的というか。


 イヤイヤ……鏡に映った自分の姿を見てみる。

 王家伝統の、オレンジの髪。お気に入りの黒いリボン。


 シャマシュに負けないくらいの、大きな乳房。先週、Dカップ用のブラがきつくなって大きいものに変えたくらいだ。


 そして、フリフリのかわいらしいドレス。う~~n、私──一見すると結構かわいくない? まてまて、自分でかわいいは言いすぎかな? ちょっとナルシストみたい。やめやめ。


「日頃のミシェウお嬢様の素性を知らない人から見れば、清楚で素敵なお嬢様に目ますわ」

「何よその言い方」


 私が顔を膨らませてぷんすかと言葉を返す。一言余計なんじゃないのかな~~。


「正論ですよね? いつも活発な代わりに、勝手に王宮を抜け出して、変な実験をしたり、よくわからない人の通路を訪ねたり──あなたの奇想天外な行動には、周囲は頭を抱えていました」


 うっ──。


 シャマシュの、冷静だが真実100%のツッコミに返す言葉がみつからない……。


「そろそろ時間です、行きましょう」


「そ、そうね」


 そして、シャマシュと一緒に手をつなぎながらパーティー会場へと向かっていく。


 複数の部屋を通り、パーティーの部屋までやって来た。扉を開けると、マーシャルが座っている玉座が目の前に現れる。マーシャルの周りには忠実な臣下たちや宮廷の人々が集まっている。


 マーシャルは威厳ある姿勢で座っており、周りからの信頼も厚い。身に纏うローブや冠には、高価なダイヤモンドや宝石が散りばめられている。顔立ちは鋭く、風格がある。


 今日は、週末のパーティーで、先日と比べて人は少ない。白いクロステーブルの上に、豪華そうな肉や野菜を中心とした料理。そしてワインボトルの数々。

 パーティーといっても、貴族たちはこの時間を利用してワイングラスを片手にコネを作ったり、密約、資源の売買の話をしたりしている。彼らにとっては、楽しみではなく戦場。そんなドロドロとした場。


 私達も、役目を果たさないと、あいつ、どこだ?? 

 きょろきょろと周囲を見る、あ……カイ君!!


「やっほー!!」


 白を基調としたタキシードを着た男、カイセド。

 そして隣、黒髪で私より少し高いくらいの背丈。メンデス。夫婦そろって、会場の中央で悠々とワインを飲んで話をしていた、この幸せ者め!


 大きく叫んで、手を振った。カイセドは私が叫ぶなり、びくっと体を動かした。なにか罪悪感でも感じているかのように。何かあったのかな?

 そしてメンデス、私がこっちを向いても視線を合わせようともしない。暗そうな表情でうつむいていた。


「ほら、ついてきて!」


「ちょ、ちょっと!」


 戸惑っているシャマシュを引っ張り、カイセドの元へ。

 赤ワインを片手に、カイセドの隣に移動してちょんと肩を当てる。顔を赤くして、かわいいとこあるじゃん。


「よ!」


「なんだ、姉さん」

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