二章 ギルドとスキルと勝負 27

 「俺等は経緯とか解らんけどよ。…そういう事は後にしてくれないか?」

 「僕も、…昇格が掛かっている試験なので、…集中したいんですけど。」

 バンダナ男と気弱そうな少年の言い分は尤もだった。

 今の言い合いも此方の問題だ。彼等にとっては大事な試験で、邪魔されたくない筈である。

 その言葉に、俺は何も言えなくなった。

 リキッドも困惑顔をしたまま、さっきまでの勢いを失くして押し黙ってしまう。

 「…こらこら、落ち着けお前ら。」

 ただしフォン支部長だけは呑気に、冒険者達を宥めている。微妙に口元は緩み、ほくそ笑んでいる様子である。

 非常に腹立たしい光景だ。

 その後に、美女が笑いだす。不意に後ろを振り返り、ノイマンの方に向き直ると声を掛けた。

 「ていうか、…あんた、昨日の負けたって事実だったの?…周りには弱いとか能力がないとか、周囲に威張りちらすくせに自分がランクもない奴に負けてるの。…ウケるんですけど。」

 周りに聞こえる様な声量だった。

 バンダナの男や少年も、口々に文句を言い出した。

 「あぁ、全くだぜ。…お前だけじゃない、俺も嫌みを言われたな。」

 「あなた達もですか?…僕もです。」

 「おい、皆。…止めないか。」

 その中で好青年だけは、なんとか制止しようとしていた。

 だが全く治まりそうもない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る