第14話 ゆき‘s destiny
翌日から彼女は、多少は僕の事を意識しているのかは理解らなかったが
それまでの一週間間隔での来館ではなく、ほぼ毎日図書館を訪れ
僕らと学習室で顔を合わせるようになった。
しかし、僕は話しかける機会も勇気も持てないまま
拓也の予感が的中したかの様に
毎日、挨拶だけを繰り返すだけで名前も歳も住所も聞けないままだった。
そんな状況は、僕の友人達の間で話題になり、代わる代わる友人が訪れた。
真っ先に訪れたのは、やはりハンター崇で彼女の容姿には興味津々だった。
「ゆき、拓也から聞いたぜ、もう一週間以上も毎日挨拶だけしてるんだってな
彼女どこにいるんだ?俺が声掛けてきてやろうか?」
「駄目だって上手くいったら、そのまま崇の彼女にしちまうだろ!
俺は本気なんだよ、絶対邪魔するなよ」
「おいおい、随分信用ないな、見るぐらいはいいだろ?どこにいるんだよ」
僕は居場所を教える際も一緒に行って崇を一人にしないように気を付けた。
彼女の机の見えるところに行って、二人でひそひそ話をしていると
彼女がこちらを見て微笑んだ
「おい!ゆき、彼女俺を見て微笑んだぞ!」
「馬鹿、お前じゃない俺を見て微笑んだんだ!勘違いするなよ!」
「おいおい!そんなに怒るなよ!確かにあの天使の様な笑顔可愛いな!
大人しそうで、ゆきの好みにもぴったりって感じだよな
けど、あの子の大人しいそうでお嬢さんっぽいのは
俺の好みとは全然違うから心配するなよ!
俺の好みは、なんていうかもっと大人な感じで色気が滲み出てくる感じだからよ
もっと官能的・肉感的なやつな、あぁいう清らかさ、少女ぽさは求めてないんで」
「そうだろうとは思ってたけど、崇の守備範囲広そうだから警戒したんだよ」
「わざわざ、ゆきを敵に廻してまで口説かないって!
だから安心して俺に声掛けさせろ」
「いや、それは駄目だって失敗しても納得出来る様に自分で声掛ける
例え何日掛かっても声を掛けられる機会を待つ」
「拓也も大変だな、もう一週間以上挨拶だけなんだろ、こいつ」
「ゆきは、ずっ〜とこんな調子なんだ、意外に頑固なんだよ
でも、ゆきの好きにさせた方が良いって、崇がいって失敗したら
こいつ一生恨みかねないぜ、本気も本気、命がけって雰囲気だぜ」
「なんで、そんな事になるんだ?ゆき、確かに可愛いけど、そこまでか?」
「いや、崇 俺は一週間前の帰りの二人のやり取り見てたから
ゆきが、こんだけ本気になる心情は解るんだよね〜
兎に角、可愛いんだよ、容姿だけじゃなく行動とかも
純真さ、可憐さ、清純さ、奥ゆかしさが滲み出る感じがして
ゆきが言う天使ってのも理解らなくないくらいの雰囲気だし
車乗って帰らなかったら、未だに年上だってのも納得いかないと思う
それに崇が声掛ける女の子と雰囲気違いすぎて難しいだろ?」
「確かに雰囲気違いすぎて、なんて声掛ければ良いか全然分からないけど
もしかして拓也もぞっこんなのか?」
「ゆきに起こったのと同じ事が起きてたら、俺もぞっこんだったと思うよ
それだけ彼女は魅力的だし、ゆきとの運命を感じる出会いだもの」
「そうだろ、ゆき?」
「そう、これは俺の”運命・destiny”なんだ、他の人じゃ駄目なんだよ!
俺は、絶対彼女と恋人になるし、結婚するし、一生を共にする。」
「おいおい、まだ名前も歳も知らないのにか?拓也、ゆきはいつもこんな調子か?」
「一週間前までは、多少変なところはあっても、ここまでじゃなかったけど
一週間前からは、ずぅ〜とこんな感じで何言っても聞かなんだよ」
崇からは、さんざん発破を掛けられたが、僕は声を掛けられるだけの勇気は持てず
この日も結局挨拶だけで終わった。
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