第7話 ビー・バップ?
僕らは演奏会が始まるまで張り込みを続けていた。
そうはいっても、拓也は、あの子を見た事がないので
若干目の悪い僕に代わって遠くにいる可愛いと思える女の子の場所を教えてくれた。
僕は受付に来る女の子を見逃さない範囲で見えるところまで近づき確認した。
そんな中、拓也が大きく反応した。
「ゆき、あそこの子じゃないか?向かいの自販機の前にいる子」
「ちょっと遠くて見えないけど、雰囲気が全然違うんだよな」
「いや、可愛いぞ!あの子 ゆき、見て来いよ」
「違うと思うけどな、なんて言うか、あの子はもっと線の細い感じなんだよ」
「あっちも、すげ~こっち見てるぞ、おいおい!こっち向かってくるぞ!
ゆき!知り合いか?」
「あっ!顔見えた 確かに可愛いけど、やっぱりあの子じゃないよ
知り合いでもないし、拓也の知り合いじゃないの?」
「俺の知り合いじゃない!もう来るぞ ゆき、どうする?」
「どうするって、何もしてないし見てただけだろ俺ら」
「うわぁ~来ちゃった」
その子は、怒りのオーラを身に纏い、僕の前に仁王立ちした。
「お前ら、さっきから私の事ジロジロ見てるけどガンとばしてるの?」
「うわぁ~怖!ガンってマジ?ビー・バップ?」
「はぁ?なんか用か?って聞いてるんだよ!」
僕らが答えそびれていると後ろから
「あれ、順子じゃん!何してんだ?」
「おう!崇、こいつら知り合い?
さっきから、私にすげ~ガン飛ばしてたんだけど」
「おう!って順子 女子校行って少しは大人しくなると思ってたけど変わらないな」
「こいつらは、富高の同級生でゆきと拓也、ゆきは直人とも友達だぞ
直人と違ってガン飛ばしたりもしないし、理由あって人探ししてるから
お前の事もよく見てたんじぁねぇ?そうだろ?ゆき」
「そうそう、その通り 崇、この子知り合い?」
「うん、中学の同級生で 今、富東の順子 直人の彼女だぜ」
「友子達が順子のこと探してたぞ」
「そーか、じゃ行くわ」
「おう、最近会わないから直人によろしくな!」
「おう、明日会うから言っとく」
「いや~崇の知り合いで助かった、どうなることかと思ったよ!なぁ、拓也!
あれっ 拓也どうした?」
「崇、直人ってF組の直人だよな?」
「そうだけど、なんで?」
「いや、可愛い彼女がいて良いなって思って」
「えっ、拓也 あーゆのタイプなのか?」
毎度おさわがせしますに出てきた中山美穂みたいなツッパリ少女が?」
「まあな」
「そ~かぁ、最初から可愛いって言ってたもんな
じゃ拓也と俺の好みのタイプ違うから、あの子に会ってもバッテングしないな」
「確かにゆきと好みは違いそうだな」
「お前ら、まだ、こないだの続けてるの?」
「そうまだこないんだよ、それにしても崇がクラッシク聞きに来るって不思議だな」
「クラッシクなんて聞くわけね~だろ、今の俺はBOOWYのみ」
「やっぱり、じゃ何で今日来たのさ?」
「最近、狙ってる富東の一つ下の女の子から誘われたからだよ
今、微妙なところなんで、無理だけど、うまくいったら紹介するよ
そういやさ~、さっき順子にも言ったけど、
友子達って、こないだのお前らのこと不審者って言ってた女の子達なんだけど
そこで会ったら、お前達が名前教えないから
ゆきの事だと思うんだけど可愛い方を、ウロウロ1号
拓也の事だと思うんだけど凛々しいテクノカットを、ウロウロ2号って
呼ぶって言ってたぜ嫌みなんだろうけど、名前ぐらい教えた方がいいじゃないの?」
「なんだそれ、すげ~ムカつくネーミングだな
同級生の男に可愛いって絶対バカにしているよな
第一、俺はともかく拓也は、ウロウロなんてしてないし」
「ゆき、俺は裏でなんて呼ばれても気にしないし、そんな嫌み言う
女の子達にたとえ名前だけだって教えたくない。お前は?」
「俺も教えたくない、崇、そうしてくれる。」
「ああ、俺もわざわざ教えに行くのも馬鹿らしいから、その方がいいよ
でも、あの子は、まだ来ないなんて。大変だなお前らも色々、
怖い女の子に絡まれてまで、実在するかもわからない天使探してってことだろ?
もう、実在する女の子にすればいいのに
藤重もジュンも富東の一つ下の女の子なら紹介するって言ってたぞ
俺も今日の子とうまくいったら紹介するし」
「ありがとう崇、でも俺はあの子がいいんだ実在するって信じてるし」
「拓也は?」
「俺も今は受験の方が優先だけど、気持ちはありがたいよ崇 ありがとうな」
「そっか、じゃ俺は今、恋愛最優先だから行くぜあの子のところに」
「がんばれよハント」
「ゆきも、その子が来るといいな」
しかし、その後 もしかしたらと思われる子さえ現れなかった。
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