第87話 ミーシャの才能
アスカは、ミーシャ育成計画の手始めとして、まずは装備を作ることにした。
ミーシャは弓術を覚えたいと言っていたので、
その髭で弦を作り、本体はオリハルコンとベヒモスの角を混ぜて作った。付与は軽身、貫通、身体強化、HP増加、体力回復上昇だ。鑑定すると
それからインビジブルタイガーの皮とカイザーキマイラの皮を掛け合わせて、レザーメイルを作る。付与は全属性耐性、全状態異常耐性、結界、魔力回復上昇を付けた。
お世話になったミーシャのためなので気合いが入って、今までで1番いい出来の物が完成してしまったようだ。
ついでに、クランホープの後衛用に詠唱短縮、魔力増大、魔力回復上昇を付けた指輪を作った。これでみんな魔法の発動が格段に速くなるだろう。
それからミーシャに矢を入れる用のポーチを作ってあげた。もちろん空間拡張付きで。
「はい、ミーシャさんの装備です!」
アスカが装備を渡すと……
「ウゴウゴァガァァン!?」
とっても喜んでくれているようだ!
しかし、ギルドの受付嬢だったミーシャは、何のスキルも戦闘経験もないが、これだけでCランクくらいの強さがありそうだ。
「それじゃあ、いつもみんなが話しているダンジョンに向かいましょう!」
1週間分の食料と生活用品を持って、空へと飛び立つ。
「クポクポー! 空を飛んでます!?」
(くぅー、癒やされるぜ! もう、
アスカは空をのんびり飛びながら、戦い方や斥候の仕方を教えている。冒険者から色々な話を聞くことが多かったのだろう、とっても飲み込みが早かった。さらにクエストを案内してるだけあって、魔物に関する知識は教える必要がないくらいだった。
(これ、予想以上にいい斥候になるんじゃね?)
(うんうん、めっちゃ合ってるかも!)
デスバレー峡谷に到着し、入り口に向かう。途中にある魔物は、弓の練習がてら倒しているのだが、何度か練習しただけで、もうC級の魔物を蹴散らしている。すごく上達が早い。
入り口についただけでレベルが20になっていたので、早速、弓術Lv1を付けてもらった。
ダンジョンに入った後はまずは50層を目指すことにした。B級までの魔物は基本的にミーシャに倒してもらう。
最初はアスカもサポートしていたが、レベルが上がり弓に慣れてくるにつれ、ミーシャ1人でも倒せるようになっていった。とにかく武器の性能が半端ないので、1日で38層に到達。レベルも40まで上がっていた。
「今日はここで休みましょうか」
そう言ってアスカは丁度いい大きさの横穴を見つけ、土操作で床や壁をきれいにしていく。
「土操作ってこういう時便利なんですね!」
ミーシャがアスカが作った部屋を見て、感心したように言った。
実際にアスカが作った部屋には椅子やテーブルやベッドまである。実はこれ土操作だけではなく、鍛治のスキルも使っている。土操作だけではこんなにきれいに作れないのだ。
リュックから食器や食べ物、毛布などを出して入り口にドアを作り結界を張って完成である。この日は寝るまでアスカの授業が続いた。
2日目の朝、アスカとミーシャは、快適な部屋のおかげでぐっすり眠れたようだ。朝食を食べて、早速訓練を再開する。
「今日は昨日の夜に確認したように、状況に応じて必殺技を使い分ける訓練をしましょう」
ミーシャは今、レベルが40ですでに弓術がLv3になっている。まずはこの弓術をLv4まで上げてから探知と鑑定を付ける予定なのだ。
弓術を先に上げるのは、早く敵を倒せるようになった方が、レベルが上がるのも早くなるからだね。
「
向こうに見えるのは以前、キリバス達が苦戦したB級の魔物ヘルハウンドが6体だ。
「
ミーシャは
(お兄ちゃん、ミーシャさんって弓術の素質があったんじゃない?)
(ああ、間違いなく天才だな。こんなに近くにいたのに全く気がつかなかったな)
その後、
「ミーシャさん、思ったより上達が早いです。もうこの辺りには用はないので、A級が出る50層まで一気に行っちゃいましょう」
そういってアスカはどんどん進んでいく。ミーシャもレベルが上がったのと、身体強化の付与のおかげで苦もなくついて行く。もちろんアスカが本気を出したら誰もついてなど行けないが……
50層に到達し、1番最初に見つけたのがA級のカースバジリスクだ。こいつも以前、キリバス達と一緒に倒した魔物である。
「ミーシャさん、弓の良いところは見つかるまで、遠距離から一方的に攻撃できるところです。逆に近づかれると苦しくなります。ソロで戦う時は特に見つからないように注意するか、見つかる前に倒しきることが大切です」
そのアドバイスだけでミーシャは地形を利用し、最後までどう倒しきるかのイメージを固めたようだ。
これは本気で天才かもしれない。レベルが上がれば、戦い方によっては"ホープ"の中でも上位にランクインしちゃうくらい強くなるかも。
ミーシャはまず岩陰に隠れ、
そして、見当違いの方向を向いたカースバジリスクの両足を後ろから
ここでカースバジリスクはミーシャの姿を捉えるが両足が撃ち抜かれ、その動きは鈍い。こちらに近づく前に
「凄すぎですミーシャさん! 昨日から始めて、もうA級の魔物を1人で倒しちゃってます。天才です!」
アスカもミーシャの上達ぶりに興奮してる。
「いえいえ、装備が素晴らしいのとアスカさんの教え方が上手だからですよ。むほー、戦う受付嬢! 何て格好良い響きなの! これでお金もがっぽがっぽだわ!」
(ミーシャよ。心の声がダダ漏れだ。だがそれがよい! お前はどんなに強くなってもそのままでいてくれよ!)
「はい!」
突然、ミーシャが返事をした。
(! えっ!? 何? 俺の声が聞こえたのか!?)
「ミーシャさん、突然どうしたのですか!?」
「あれ? どうしたんでしょうね? なぜか大きな声で返事をしなくてはいけない気がして……びっくりしましたよね? ごめんなさい」
「いえ、いいんです! 嬉しかったので!」
俺は本当に偶然かもしれないが、自分の声がアスカ以外の人間(正確には獣人だが)に届いた気がして、とても幸せな気分になった。ミーシャって不思議なところがたくさんあるけど、彼女に会えて本当に良かったと思った。泣かないのかって? もう号泣だよ!!
俺は感動でしばらく使い物にならなかったが、アスカが上手にサポートしてミーシャはどんどんA級の魔物を狩っていき、70層についた時にはレベルが64になっていた。
「ここからはS級の魔物がでますので、今日はここまでにしましょう。明日、もう少しここでレベルを上げてレベルを66にしましょう。そうすれば弓術をLv4に出来ますのでS級とも戦えると思います」
「わかりました! 明日もよろしくお願いします!」
アスカとミーシャは、昨日と同じように部屋を作り、S級の魔物と戦う時に気をつけることなどを話しながら一晩を過ごした。
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