第48話 カイザーキマイラ討伐報告
ギルドに戻った時にはすでに周りが暗くなっていたが、S級の魔物を討伐に行った話が広まっており、多くの冒険者達がクロム達の帰りを待っていた。
「おかえりなさいアスカさん、専属受付嬢のミーシャです。あー、謎のSランク冒険者の専属受付嬢、なんていい響きなの。みんなからの羨望の眼差しが気持ちいい~」
「ミーシャさん、いつも以上に心の声が漏れてます」
アスカ、止めるな! 俺はこれを聞くたびに、自分達の居場所に帰ってきた気がするんだ!
「それで、無事に帰ってきたということは、討伐できたのか?」
そこに、ギルドマスターのハンクも顔を出してきた。どうやら、アスカ達が帰ってくるのを待っていてくれたようだ。
「無事ではあるが、何事もなかったと言われれば、信じられないことがいくつもあったよと報告せざるを得ないな」
ハンクの登場に片手を挙げて応えたクロムが、アスカの方をチラッと見て報告を始めた。他の4人は、冒険者達に囲まれ冒険談をせがまれている。
「それはあれだな。カイザーキマイラがどうこうではなく、そっちの黒ローブの話だな」
ハンクがニヤッと笑いながらクロムを見た。
「なんだ、ハンクは知ってたのか」
「当然よ。こいつをSランクに昇格させたのは、俺だからな。Sランクの討伐試験に同行したんだよ。そん時はダークドラゴンだったが、こいつの方がよっぽどS級の魔物に見えたぜ」
「同感だね」
ハンクとクロムは妙なところで意見が一致したようで、熱く握手を交わしている。
「それで、2人とも討伐部位はあるのかい?」
ハンクに聞かれ、クロムは討伐部位の蛇になっている尻尾を出す。そしてアスカは……
くるぞ、くるぞ、これは絶対くるぞ!
「これ、綺麗に倒せたのでこのまま持ってきました」
氷漬けになったカイザーキマイラを出した。
「おぼぼぼぼあばばばばー、何ですかこれは!?」
ブハッ! ミーシャサイコー!!
これには、周りの冒険者達も大興奮だった。それもそうだろう、S級の魔物なんて、普通は一生見ることもないのだから。もし出会ってしまったら、それこそ命を落としてしまう。おとぎ話や伝説でしか、聞いたことのない魔物。そんな魔物が傷ひとつない状態で、それどころか今にも動き出しそうなほど、リアルな姿で目の前にいるのだ。A級の冒険者達でさえ、目を輝かせて食い入るように見つめている。
「……これ、一体どのくらいの価値があるんだ?」
1人の冒険者が呟いた。
「想像もできんな」
その問にハンクが答える。
実際、S級の魔物の素材がオークションに出されることは時々あるそうだ。しかし、傷ひとつない個体が、まるまる1体が出されたことなど前例がないと言う。身体の一部でも数千万ルークで取り引きされることさえあるので、単純計算でも数億ルークすると考えられる。
さらにこれは学術的にも価値が高く、研究材料にも持って来いである。オークションに出しても、国に引き取られる可能性だってあるのだ。
「出してみるか? オークションに」
ハンクが興奮気味に聞いてくる。
(どうするお兄ちゃん?)
(何か大騒ぎになりそうだな。でも、まあこの辺でまとまったお金でも手に入れて、家でも買うか?)
(えっ? 前の世界でもアパート暮らしだったのに、13歳で家買えちゃうの?)
(アスカ、お前はもうただの13歳じゃない。力が全てのようなこの世界で、おそらく最強の存在なんじゃないかな。お前が願えば、大抵のことが叶うだろう)
(そうなのかな? 一番の願いは、たぶん今は叶わないだろうけど、いつか叶えて……また一緒に買い物に行きたいな)
(そ、それはもしかして……アスカー!)
笑ったり泣いたり、感動したりとこの世界に来て色々な思いもしたけど、妹と一緒でよかったと心の底から思えた1日だった。
ちなみにオークションは、事前にギルドや商会を通して出品する方法と、当日、飛び入りで出品する方法があるらしい。1週間後に、商業区の離れにあるオークション会場で開かれるらしいので、時間が合えば飛び入りで参加することにした。
ギルドは相変わらず大盛り上がりで、クロム達ドラゴンバスターのメンバーは、まだまだ解放されそうにない。
だがアスカは、明日から魔法学院に通うのだ。さらに明日の入学式では、生徒代表挨拶をしなくてはならない。ハンクに言ってこっそり抜けさせてもらわねば。
大騒ぎだったギルドから宿に戻って、アスカと色々確認した。中でも1番興味があるのが、操作系魔法のLv5より上があるのかどうかだ。結論を言うと、Lv5より上は存在した。究極魔法と呼ばれ、以下の種類がある。
炎操作:
水操作:
氷操作:
風操作:
土操作:
雷操作:
光操作:
闇操作:
重力操作:
時空操作:
治癒:
結界:
最早、天災である。使う場所を考えないと、地形がとんでもないことになるか、辺り一帯の生物が死滅する恐れがある。しばらくは学院で忙しくなりそうなので、実験はゆっくり時間が取れた時にすることにした。
鍛冶や付与や錬金も最高レベルになったが、現状装備で困ってることはないので、しばらくは素材を集めて、こちらも落ち着いたら色々試そうと思う。その時はレコビッチさんのところで、売りに出してもらってもいいかもしれない。
色々確認しているうちに、アスカが眠くなってきたようなので、明日に備えて休むように言った。
魔法学院ではアスカに友達がたくさんできるといいな。
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