209話、レティと買い物


「寂しゅうございましたよ?」


「嘘じゃん」


「嘘なのです」


禁足地の迷宮から帰り、昨日来た宿へ。

レティが迎えに来てくれたので寂しかったか聞いたのだが。のんびり出来たようでよかった。


95日目、昼。

日が沈むまで、またそれぞれで時間を潰すことになった。

ヒナとムサシは、昼からだが町に繰り出し、情報収集もとい飲み食い歩きに出た。

私とマリアは、レティをつれてお土産さがしに。お土産、いくらあっても困らないからね。いっぱい買おう。


「土産向けの食べ物、工芸品、魔物関係の道具や魔道具、冒険者向けの武具や薬、あとは旅行者向けではない現地で有名な店、すべてリサーチ済みです」


「よし、全部買おうか」


「最適なルートも構築済みです。ご案内いたします」


さすが優秀なオールワークスメイド。いつも助かってます。


片っ端から買い漁り、無限庫も潤ってきた。

屋台で買った豚串を食べながら、帰り道。

路地裏がふと気になり、そちらへ進んでみた。

少し暗い雰囲気の路地裏だが、あまり汚れていない。


「何故こちらに?」


レティが尋ねてくるが。


「なんでだろ」


自分でもなんでここに来たのかはわからない。

なにかに引き寄せられて、なのかな。


「……ま、なにもないか。戻ろう」


「左様ですか」


気の所為だ。やっぱり私の勘なんて当てにならないな……

と思って、踵を返した、瞬間。

後ろで、ズドン、と音がした。

……なにか降ってきたな。

ゆっくり振り返り、確認すると…… そこには、いつか見た気がする人が倒れていた。


「堕天使だっけ……?」


「お知り合いですか?」


「知り合いというか…… 生きてるかな」


近づいて、揺すってみる。

お、息はあるな。


「おーい、無事かー?」


「う、ううん……」


少しずつ反応が返ってきている。大きな外傷も無いようだし、無事そうだ。

しばらく揺すっていると、ちゃんと目が覚めたようだ。


「無事かな? 名前なんだったっけ」


「ん…… あ、タキナさんじゃないですか! 天魔のアンジュです! お久しぶりです! よかった、場所あってたんですね!」


ああ、アンジュ、そうだ。

たしか、空に浮かぶ島、ハイランドからの使者だったはず。

今はハイランドが見えないから、そこから落ちてきたとは思えないけど?


「こんなところでどうしたの?」


「そ、そうなんですよ、タキナさんに伝言です!」


なんだろう。まって、めちゃくちゃ嫌な予感がする。


「まず、エリスがいる迷宮は、今攻略しているところで間違ってないです!」


お、なんだ、良い話だったか。

いや、まだ油断はできない。まず、って言ったし。


「それから、エリスのコアはみっつあるので、あと二箇所も頑張って探してね! とのことです!」


うえー、めんどくさい! こんな事をあと二回も!?

いや、二個目三個目は楽に済むのを祈っておこう……


「あと最後にですけど!」


うーん、もう言わずに帰ってほしい。知りたくない。

でも知らない方が大変だから。仕方ない、きこう……


「勇者イサムと勇者ユウタによって、ユリス様のコアがふたつ破壊されました! あと残りひとつですね! その余波で、私はユリス様の支配下から外されました! リストラってやつです! なので、タキナさん、私を雇ってください!」


……えっと、なんだ、どれから処理すればいいんだ?

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