189話、三日目の旅


92日目。

今日も朝から馬車の旅だ。

今日の夜か明日の朝頃に、迷宮都市、ペルギウス公国に到着する。


「楽しみだなあ迷宮都市」


「一応、神様ぶっ倒しにいくんすから。緊張感ないんすか」


「迷宮都市、甘いものあるのです?」


「こいつらが神になるの、なんか嫌っすねえ」


なんだと? 気持ちはわかるけど。

迷宮都市というと、冒険者がひきめきあう魔境、のイメージがあるが。


「なんじゃったか、古代魔法具? とやらが発掘されるんじゃよな、迷宮都市の迷宮は」


「そうなんすよ。名産といえばそれっすかね。食べ物はなんでもあるっすよ? 交易の要所でもあるし、冒険者は金持ちが多いっすから」


金のあるところにはなんでも集まるわけだ。

ちょっとだけ期待が高まる。


「甘いものに期待なのです」


世界一甘い食べ物、みたいなのもあるかな。グラブジャムンみたいな。


「皆様、そろそろお昼時でございます」


お、休憩タイム。

ちなみに御者席にはマリアとレティが座ってる。

じゃあここにいるマリアはなんなんだって? 分身だよ。便利だなほんと。私も使えるけどさ。




お昼ご飯は、休憩場所を決める時に襲ってきたはぐれオークだ。急に飛びかかってくるからびっくりした。私、殴られたよ? なんでみんな助けてくれなかったんだろ。


「自分でなんとかすると思ったんじゃが」


「どうせ怪我もしないっすし」


「なんで避けなかったのです?」


「し、死んでしまわれたかと……」


心配してるのレティだけじゃん。私避けるの下手なの! ……怪我はしないけど。


「レティ、ムサシ、解体ありがと。私の仇よ、いっぱい食べてね」


「無傷じゃろ」


「ハツほしいのです」


「レバーは?」


「レバーもほしいのです」


豚のレバーはあたると怖いから私はいいや。あたってもノーダメージだとしても怖いものは怖い。生まれ変わって豚になるのは嫌だ。


「とれたての肉は、これはこれで美味いっすねえ。アグニ王国で最近出てくるようになった、数日寝かせた肉のほうが深みがあって好きっすけど」


「私は新鮮な方が好きなのです。血の味が足りないのです」


「血抜きは丁寧になされてますからね。マリア様用に、血抜きの甘めの肉もリクエストしてみてはいかがでしょう」


「帰ったら言ってみるのですよ」


吸血鬼だからか、やっぱり肉の味より血の味のほうが好きなのか。


「あ、足美味しい」


「うえ、大丈夫なんすか?」


「うえ、じゃないよまったく。前世では、豚足って食材があったよ。ミミガーとかいうのもあったな。豚の耳」


「耳は討伐証明で提出するっすから、食べる機会はまったくないんすよね。……あ、美味しいっす」


「コリコリがたまらんのう。酒が進む」


ムサシは飲みすぎだろまったく。


「足食べないの?」


「私はいいっす」


「へえ。根性無し」


「喧嘩売ってんすか? 買うっすよ? やりましょうや!」


は、模擬戦で私に勝った事ないくせに!

……私も勝ったことないけど。ね。

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