86話、成長している
58日目の夜、勇者イサムは馬ちゃんが気に入ったようで、何度か乗って楽しんでいた。
それならと、魔物生成で増やしてプレゼントすることにした。勇者が馬に乗って現れるのはかっこいいよね。その馬めちゃくちゃ悪魔的だけど。
そのうち、人数分用意してあげようかな? 四人パーティだったっけ。ほかのメンバーがあのGに耐えられたらいいんだけど。
晩御飯は海鮮カレーと肉たっぷりシチューのセレクトだった。
私は海鮮カレーを食べた。海で魚を見たからね。魔物だったけど。
マリアは肉シチューを選んだ。そっちも美味しそう。ひとくちちょーだい。
住民全体では半々だったが、子供は八割くらいがカレーを選んでいた。海鮮もカレーも珍しいもんな。
59日目。
朝ごはんはカレーパンとミニグラタンだった。前日の残りのリメイクだ。
私はミニグラタン、マリアはカレーパンを食べた。昨日とは逆だね。
今日から勇者イサムとゼストが魔大陸に行くらしい。もしかすると結構長く空けるので、城のいろいろはまかせた、と言っていた。まあ大抵はアリスとベルゼがなんとかするでしょ。
私は昼から、地獄迷宮の七層にいこうと思う。
昨日、マウドラ君をテイムしてから、一度下層に降りてから六層に戻って帰ったのだ。マウドラ君つれて七層には降りられないからね。帰りはゲートに触れるだけで出られるのは、スタンピード向けの仕様なんだろうか。スタンピード、あるのかな。怖いな。
今日のおともは、ヒナさん、マリア、そしてメタスラちゃん。街の守りはベルゼとハヤト、あとは魔物たちがしてくれるので、ゼストがいなくとも十分だろう。
ヒナさんが乗るためにまた馬ちゃんを魔物生成で増やしてから、出発だ。
地獄迷宮、六層。
ここはまた五層とうってかわって、湿度の高い沼地だった。
道のように土の盛られたところがあるので、そこを
辿っていく形になるのかな。
魔物は、カエルやヘビ、変な虫とか変なサルとかが多い。大抵は敵にもならないが、たまに魔法を跳ね返したり幻影をつかったりと変に強い魔物も現れる。あと、単純に数が多いし隠密性も高いので大変。普通の人達なら消耗して大変そうだな。我々にはあんまりだけど。
「後ろからみっつなのです」
「獣人の私より索敵ができるってどういうカラクリなんすか?吸血鬼ってみんなこんなんなんすかね」
「体の一部を霧化させて広範囲に撒いてるのです。それに触れたら場所がわかるのですよ」
「あー、なるほど……なるほどじゃないんすよ」
「ほんとに弱い魔物なら、霧に触れただけでぱたりなのです」
「……この子もじゅうぶん理不尽インチキ性能してるんすよねー。特級冒険者なんて、国の方ではイカれたヤツ代表みたいな立ち位置なんすけど、こっちでは常識人寄りかもしれないすね」
うん、いや、ヒナさんもじゅうぶんインチキくさい強さしてますけどね。
魔法を纏わせた、というより魔法の持ち手となった剣を振るだけで、超延長された魔法の刀身が前方一帯の敵を残らず屠っていく。もはや剣に魔法を纏うの範囲を超えてるだろそれは。「最近なーんか強くなってきてる気がするんすよね」じゃないよね。最初期より断然やばいっすよヒナさん。やっぱり魔物やゼスト、ベルゼ達と訓練してるからなのかな。経験値凄そうだもんねあの訓練。
「マリアももっと強くなりたいのです」
「マリアは子供だから、これからもっと強くなるだろうねぇ。吸血鬼って何歳から大人なんだろ?寿命は?」
「本物の吸血鬼は不老不死って言われてるっす。いい感じまで育ったら成長終わりになるらしいすね。育ちきるまでは人間と同じくらいの時間かかるらしいすから、15から20歳すかね?マリアは何歳っすか?」
「わかんないのです!10は超えてるのです」
「じゃ、あと5年か10年すね、大人までは」
「いっぱい食べてはやく大きくなるのです!」
……まぁ、今でも私くらい大きいけどね。何処とは言わないけど。言わないけど、胸に手を当てて考えてみたらいいよ。
「……タキナさん、大丈夫っすよ。私がいます」
「ヒナさん……いや、ヒナ。私たちは親友よ」
ヒナと、ガっと握手した。
私はこれからも、何があっても正気でいられそうだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます