17話、パーティバランスの大切さ
14日目。
今日はダンジョンの三層目を見に行こうとおもう。
お供はレオ君とマリ、そして私の乗り物と荷物持ちとしてケンタウロス。アビサルケンタウロス、長いから名前はケンタ君ね。
荷物持ちにするにはちょっとどころか大分贅沢な戦力だが、まあ仕方ない。サソリ君と迷ったが、走る速度はケンタ君のほうが早い。私の身の安全を考えると、ケンタ君に軍配があがる。まあどっちにせよ私より脆いんだけど。
さて、門から二層に転移。
三層は、まっすぐ進むとあるらしい。食料調達班が見つけてくれていたのだ。
まっすぐ進むこと1時間ほど。
三層への階段に着いた。
途中何度か襲撃があったが、ほとんどがレオ君の格闘で粉砕。最初は武器を持たせていたのだが、武器より拳の方が強かった。そのうちメリケンサックのようなものをつくってもらおうかな。
……ていうか強すぎるな。アビサルケンタウロスですら一方的だ。ケンタ君もビビってる。
そういえばドワーフにきいた話だが、魔物というのは、近くに自分より強い魔物がいる時は、それに負けないように強くなろうとする性質があるらしい。つまりウチはロックドラゴン以外みんな強くなろうとしてるってことか。頼もしすぎるな。
さて、三層のゲートを開通させ、見渡してみる。
城壁の上のようなところだ。幅は広く、左右の石壁は私くらいの高さがある。向こう側は真っ暗になっていて何も見えない。空間があるのかないのか。
「で、敵はアレか。砦とか要塞とかなのかなー」
遠くの方の突き当たりのところに、魔物の集団が見える。
動く鎧だ。剣と盾を持っている。二体で一組なのかな?四体居たが、なにかしら合図を交わして二体ずつ別の方向へ向かっていった。
一方がこちらへ向かってくる。
「そうだなぁ、ひとまず両方仕留めちゃっていいよ。ただちょっと打ち合ってほしいな。強みがみたい」
レッドオーガなら負ける事はないだろう。相手が剣と盾をもっていようが。
二体の鎧はこちらに気付くと、小走りにかけてきた。3mほどのところで立ち止まり、二体とも抜剣し様子を伺う。
レオ君が、一方に殴り掛かる。
鎧はレオ君の拳を受け止めた。しっかりと腰を落とし、ガッツリと受けている。
横からもう一方がレオ君に切りかかる。そちらをチラッとみた時、盾を構えていた方が少しだけ身を乗り出してきた。シールドバッシュか。
レオ君は両方をバックステップで躱し、私をチラッとみる。
そうね、連携を考える頭脳はあるし、全力じゃないけどレオ君のパンチを受けられるほどの防御もある。
次はレオ君の本気にどこまで耐えられるか見てみよう。
レオ君が腰を落とす。鎧がなにかを悟り、二体とも盾を構える。うん、それで正解。だけど。
レオ君が、跳ぶ。
跳んだと思った時にはもう、鎧の一体は盾ごと殴られて壁に叩きつけられていた。まだ生きては居るようだが、動けはしないだろう。
もう一体が、動揺したのか少しだけ構えを崩してしまった。
そこに、渾身の蹴り。構えた盾に直撃したそれは、盾を紙のように折り曲げ、鎧の体ごと吹き飛ばした。……こちらは即死だ。鎧がバラバラに散らばっている。
息がある残りの一体にも軽くトドメを刺し、戦闘終了。
「うーん、まあ、物理が効く相手ならレオ君が強すぎるなあ。でも何体かいれば二層で役立ちそうな気はする。イノシシ戦のタンクとかなかなかきついものあるからなぁ。……次の来たらテイムするか」
というわけで、次のグループで片方テイム決定だ。
物音が聞こえたのか、すぐにもうひとつのグループが向かってきていたのでちょうどいい。
片方をレオ君に即死させてもらって。
「はいテイム!よろしくね、鎧ちゃん。そのうち仲間増やしてあげるからね、多分」
アビサル・アーマー。
迷宮『アビス』上層、通称『深海層』にのみ存在するリビング・アーマー。
個体としては特筆する強みはないが、逆に弱みもない、とてもバランスの取れた戦闘力を有している。
頭脳が優秀なため、二体から四体ほどの隊で運用するのが効率がいいだろう。
魔力を食べる。鎧のみが本体で、剣と盾は付属品。他のものに変えることで即時強化や役割分担を図れる。
鎧ちゃんと呼ばれる。
迷宮『アビス』は知ってるが、『深海層』ってなんだ?別に海じゃないしな……意味はありそうだけどよくわからないね。たしかにアビサルだから深海だけど。
潜ってたらそのうちわかるようになるか。まあいい、今日は帰ろう。
……そういえば、ケンタ君はともかく、マリも今日はまったくなにも出番なかったな……レオが強すぎたからな……。
帰宅。
ドワーフたちの仮宿が並んでいる光景は、何度観ても良い物だ。ここから私の村が広がっていくのだ。イカれたドワーフと魔物以外の住民も、ほしいなあ。
いつものごとく、アビサル・アーマーをドワーフに見せびらかして自慢した。
鎧ちゃんの持っている剣と盾、そして鎧本体に使われている金属が、ダークメタルと呼ばれる普通の鋼よりつよい金属の、さらに上位のものだと判明した。
名は『深海鋼』 ほぼ伝説のような金属で、現存する深海鋼は、剣として一振が人間の国の国宝に、インゴットとしてひとつがドワーフの国の王家の象徴としてあるくらいだそうだ。
つまり、希少。高い。倒したやつ持って帰ってきたらよかった。あちゃあ。
ドワーフたちに本気で詰められたので、ビビってレオ君にすぐに迷宮三層にいくように命じてしまった。主人としてはずかしい。レオ君は一時間かからずに剣と盾とデカめの鎧パーツを持って帰ってきてくれた。ドワーフは狂喜乱舞していた。私はレオ君を撫でた。喜んでくれたのでヨシだ。
今日も無事に生き延びれた。
今のところとてつもなく順調だが、明日からもこの調子で乗り切れたらいいなと思う。
今日はそんなに寒くもないし雨も降らなさそうなので、私用の仮宿じゃなくて、カイちゃんの腹元で寝ることにした。ふわもふ。毛のような羽毛のような、贅沢な手触り。
手触りを楽しんでいるうちに、眠りに落ちた。
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