第23話 即席!巨大電気蜘蛛討伐隊

 エレクトロビックスパイダーの巨大な姿が、立体的な蜘蛛の巣の中央でうごめく。その複眼が青白く輝き、次の攻撃の予兆を示している。まるで宇宙から来た未知の生命体のように、その存在感は圧倒的だ。リークは仲間たちに向かって叫ぶ。「全員、最後の力を振り絞れ!ここで倒すか、倒されるかだ!俺たちの命運をかけた戦いだ!」


 エレクトロビックスパイダーは、蜘蛛の巣の形をした糸を放つ。その糸には電流が流れているように見える。まるで青白い稲妻が糸の表面を這うように、その光景は美しくも恐ろしい。空気中にはオゾンの匂いが漂い、電気の力を肌で感じることができる。


 ショタ冒険者が「僕に任せろ!この力、今こそ活かす時だ!」と叫び、剣を構えて飛来する糸に向かっていく。その目には決意の光が宿り、体の筋肉が緊張で引き締まっているのが見て取れる。


 突如、ショタ冒険者の体から青白い電光が走る。彼の能力アビリティが発動したのだ。まるで体が発電機になったかのように、全身から電気のオーラが放たれる。彼は電撃の糸に向かって突進する。その姿は、まるで雷神のように勇ましい。


 エレクトロビックスパイダーの放った糸が男性冒険者に触れた瞬間、驚くべき光景が広がる。電流は彼の体を貫くどころか、まるで吸収されるかのように消えていく。その様子は、まるで砂漠の砂が水を吸い込むかのようだ。ショタ冒険者の体が一瞬青白く光り、その後、通常の姿に戻る。


 リークが尋ねる。「それがお前の能力アビリティか。それで俺たちを囲んでいる糸を崩せないのか?もしそれができれば、この窮地から脱出できるかもしれない」彼の声には、わずかな希望の色が混じっている。


 ショタ冒険者は頭を振る。「残念ながら、そうはいかないよ。僕の能力アビリティは電流を吸収できるが、糸自体を切ることはできないんだ。この糸は巣を作るための特殊な構造をしている。電流に抵抗できても糸は、まるで鋼鉄のワイヤーのように強靭なんだ」彼の表情には、自身の能力の限界を悟った悔しさが浮かんでいる。


 リークは歯を噛みしめる。「くそっ、そうか。じゃあ、この包囲網を突破するのは難しいな。まるで蜘蛛の巣に捕らわれた虫のような状況だ」彼の目には、状況の厳しさを理解した深い思慮の色が宿っている。


 ゴルドがショタ冒険者に言う。「とりあえず、このデカ電気蜘蛛を倒すまでの急遽パーティーだ。おい、お前、名前を言え。この戦いの中で、お前の力は欠かせない」彼の声には、新たな仲間を迎え入れる覚悟が感じられる。


 ショタ青髪の冒険者が答える。「僕は、ルカ。えっと、Dランクの冒険者。よろしくね。この危機的状況でも生きて帰れるように全力を尽くすよ」彼の声には緊張と決意が混ざっている。


 ゴルドは頷き、「わかった、ルカ。お前の能力アビリティは貴重だ。敵の電撃攻撃を吸収して、俺たちを守ってくれ。お前の力が、この戦いの鍵になるかもしれない」彼の声には、新たな仲間への期待と信頼が込められている。


 ルカは決意を込めて答える。「任せて。みんなを守りながら、何か突破口を見つけ出す。この能力、みんなの為に使うよ」彼の目には、仲間たちへの強い責任感が宿っている。


 リークが全員に向かって声を上げる。「よし、態勢が整った。エレクトロビックスパイダーの次の動きを警戒しろ。ルカ、電撃攻撃に備えてくれ。他の者は、蜘蛛の弱点を探せ!一瞬たりとも油断するな。ここからが本当の戦いの始まりだ」そう言って、リークがこちらの方を向く。彼の目には、リーダーとしての強い決意が燃えている。


 恐らく最後の言葉は俺に対してのものだったのだろう。

 俺は、逃げることしかできない。戦いに参加できないと怖気づいてしまった。それは今まで持っていたゴブリンを倒した自分の中の小さな自信。

 訓練も何もせずにゴブリンと戦って勝つことで得た戦うための自信を、このエレクトロビックスパイダーによって砕かれてしまったのだ。自分の無力さを痛感し、胸が締め付けられる思いだ。


 隣にいるクロムが俺の袖を引っ張って「シーク。落ち着いて、無理に戦わなくていいよ。ただ僕はちょっとこの女の人を回復させるから、攻撃が来たとき担いで逃げてくれる?君にしかできない大切な役目なんだ」と上目遣いでお願いをしてくる。その真剣な眼差しに、俺は心を動かされる。「わかった。見捨てて逃げたりしないよ……」と弱々しい声でその願いに答えるしか今の俺にはできなかった。しかし、その言葉には、微かながらも決意が込められている。


 その会話を聞いていたのか、ブルームが「後衛を守る仕事は、シーク。あなたに頼むわ。私も前のみんなに加勢する」そう俺に言った後、クロムと額を合わせて「クロム。最悪あなただけでも逃げなさいよ。あなたが死ぬことはパーティー全体の死なんだからね。あなたの命は、私たち全員の希望なの」彼女の声には、クロムへの深い愛情と仲間たちへの強い責任感が込められている。


 クロムは真剣な表情でブルームを見つめ返す。「わかっているよ。でも、みんなを見捨てて逃げるわけにはいかない。最後まで全力を尽くすよ。私たちは一つのチームだ。共に戦い、共に生き抜く」そう言って、彼は再び黒髪の女性の回復に集中する。その姿には、仲間たちへの揺るぎない信頼が表れている。一方、俺は緊張しながらも、クロムと女性を守る覚悟を決める。自分にできることは限られているが、それでも全力を尽くそうと心に誓う。


 リーク、リーフ、ゴルド、ルカ、ブルームの5人がエレクトロビックスパイダーに立ち向かう。彼らの姿は、まるで英雄譚に出てくる勇者たちのようだ。それぞれが異なる能力を持ち、それぞれの役割を全うしようとしている。


 ルカ以外の4名は長くパーティーを組んでいるおかげか、アイコンタクトでお互いが何をするのか確認し合っている。その様子は、まるで心が繋がっているかのようだ。ルカはこのパーティーと組んだことがないようだが、まるでそれを感じさせないような連携を見せていく。


 幸いなことに、エレクトロビックスパイダーが電光を纏って行動をとることはない。足で繰り出す連撃を連携で止め、電流をまとった蜘蛛の糸はルカが連携のリズムを崩さずに受け止める。その様子は、まるで完璧に練習された舞のようだ。

 エレクトロビックスパイダーに対して攻撃することはできないが、こちらは攻撃を受け続ける。それでも、彼らの表情には諦めの色は見えない。


 だが、こちら側の5人は徐々に体力を消耗させられている。

 5人の動きが本当に徐々にではあるが、悪くなっていく。汗が滴り、呼吸が荒くなっていく。しかし、連携によって体力が消耗しても攻撃を受ける波を崩さずに戦えている。その姿は、まさに人間の限界に挑戦しているかのようだ。

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