第22話 巨大くもは空を飛ぶ
エレクトロビックスパイダーの突進が轟音と共に加速する。巨大な脚が地面を粉砕し、その衝撃で周囲の木々が根こそぎ倒れる。青白い電光が蜘蛛の体表を激しく走り、空気を焦がす轟音が響き渡る。
「くそっ、こんな速さありえない!」リーフが叫ぶ。彼の超人的な動きさえ、この巨大生物の猛攻の前では無力に等しい。
ゴルドが大剣を振りかざし、「全員、最大警戒!電撃攻撃が来るぞ!」と絶叫する。
その瞬間、エレクトロビックスパイダーの複眼が眩いばかりの青色に輝き、前脚から巨大な電撃の嵐が解き放たれる。空気が焼け焦げる匂いと共に、稲妻の渦が俺たちを飲み込もうとする。
「全力防御魔法!」ブルームの声が轟く。彼女の魔力が爆発的に膨れ上がり、強固な魔法障壁を形成する。しかし、電撃の威力は想像を絶し、障壁にヒビが入り始める。
エレクトロビックスパイダーの猛攻は止まらない。その巨体が地響きと共に俺たちに迫る中、リークが雄叫びを上げる。「全員、死力を尽くして応戦だ!」
クロムに回復された冒険者の男が絶望的な表情で叫ぶ。「無理だ、撤退しろ!お前らEランクじゃ太刀打ちできない!俺たちDランクでさえ壊滅状態だ!」
リークは一瞬の躊躇の後、決死の覚悟を決める。「撤退!全員、命懸けで逃げろ!」パーティーメンバーたちは恐怖に打ち震えながらも、全力で動き出す。ゴルドが重傷の冒険者たちを担ぎ上げ、全員で森の奥深くへと突入する。背後では巨大なエレクトロビックスパイダーの怒濤の追撃が迫る。
突如、エレクトロビックスパイダーが信じられない行動を取る。周囲の巨木に向かって、まるで機関銃のように高速で糸を放ち、瞬く間に複雑な網目状の構造を作り上げる。
「まさか、あんな技が!?」リーフが驚愕の声を上げる。次の瞬間、エレクトロビックスパイダーは巨体を弾き飛ばすように糸を引っ張り、巨大な弾丸のごとく空中を飛翔。轟音と共に俺たちの真上まで一瞬で到達する。
「ありえない...こんな巨体で空中戦まで!?」ゴルドが絶句する。
リークが必死に叫ぶ。「散開しろ!このままじゃ潰される!」
パーティーメンバー全員が必死に逃げ惑うが、エレクトロビックスパイダーの空中からの襲撃は予測不可能な速さで迫る。巨大な影が頭上を覆い尽くし、次の瞬間には轟音と共に地面に激突。衝撃波が周囲を吹き飛ばす。
衝撃から立ち直る間もなく、エレクトロビックスパイダーは超高速で動き出す。周囲の木々に向かって、まるでレーザービームのように精密な糸を放つ。その動きは神業的で、まるで完璧に計算されたかのようだ。
「何だ……これは!?」俺が恐怖に打ち震えながら呟く。
一瞬のうちに、エレクトロビックスパイダーの糸が周囲の空間を完全に覆い尽くす。その結果、俺たちは巨大で複雑な立体的蜘蛛の巣の中に完全に封じ込められてしまう。
リークが絶望的な状況を把握し、声を絞り出す。「くそっ……完全に包囲された!これは……最悪のバトルフィールドだ。奴は俺たちとの死闘を強制している!」
ゴルドが震える手で剣を構えながら言う。「こんな知能と戦術……ただの魔物じゃない。これは……悪夢だ!」
エレクトロビックスパイダーは巣の中央に降り立ち、その複眼で俺たちを冷酷に見据える。逃げ場を完全に失った俺たちは、絶望的な戦いに身を投じる覚悟を迫られる。
ショタの冒険者が警告する。「もう……戦うしかない。だが、あの蜘蛛の糸には絶対に触れるな。一瞬で体が焼け焦げる」彼はクロムに向かって弱々しく感謝を述べる。「回復、ありがとう……だが、リリルを……」彼は意識を失いかけている黒髪の女性を指差す。
クロムは決意に満ちた声で「わかった」と答え、ゴルドから女性を受け取る。彼の手から強烈な回復魔法の光が溢れ出す。「全力で回復する……みんな、最後の戦いの準備を!」
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