第15話 依頼開始!
ガッツさんは満足げに剣を見つめ、「これで完璧だ」と言って剣を俺に手渡した。俺は剣を受け取り「ありがとうございます」と感謝した。
ガッツさんは「礼ならいらねぇ。今後武器を作る時、俺のとこに来て金を落としてくれりゃいいさ」と言った。
リークは「そろそろいい時間だ。集合場所のギルドに向かうぞ」と促した。
俺たちは鍛冶屋を後にし、ギルドへと向かった。新しく研がれた剣の感触を確かめながら歩く。ギルドに着くと、すでにゴルド、ブルーム、クロムが待っていた。
ゴルドが俺たちに気づき、手を振った。「お、来たな。いい依頼を見つけたぞ」
リークが興味深そうに尋ねる。「どんな依頼だ?」
ブルームが答える。「レッドウルフの群れの討伐よ。町の近くの森で目撃されているらしいわ」
ゴルドが補足する。「Eランクの依頼だ。新人のシークにとっても、いい経験になるだろう」
リークは満足げに頷いた。「なるほど、良さそうだな。シーク、お前はどうだ?」
俺は少し緊張しながらも、「はい、頑張ります」と答えた。
ゴルドが笑顔で言う。「よし、じゃあ早速出発するか。準備はいいな?」
全員の準備が完了すると、パーティーはギルドを出発した。街の喧騒を抜け、森へと向かう道を進む。緊張と期待が入り混じる中、俺は新しく研がれた剣の感触を確かめながら、初めての依頼に臨む心構えを固めていった。
街を出て街路を歩き、レッドウルフの発見された森に着いた。
パーティリーダーのリークは一旦パーティメンバーに声をかけた。
「作戦を確認しよう。前衛はクロム以外のメンバーが担当する。いつも通り、戦闘開始時は俺とリーフが前衛を務める。ブルームとゴルドはクロムの後ろで待機し、クロムを警護する。戦闘が長引いたら前衛を交代し、常に体力をある程度維持できる状態で戦いを続けるぞ」
リークは続けて、「シーク、お前は常に前線に立て。ただし、体力が大幅に減ったらクロムのところに戻って休憩し、回復次第、再び戦闘に参加しろ」と指示した。俺は緊張しながらも、頷いて応じた。
ゴルドが付け加えた。「レッドウルフは群れで行動する習性がある。一匹倒しても油断は禁物だ。常に周囲に気を配りながら戦う必要がある。特に、魔法しか使えないクロムを一人にしないよう気をつけろ」
ブルームがさらに、「致命傷を負ったメンバーがいれば、後ろで待機しているどちらかのメンバーが私のところに連れてきて。クロムが回復させるわ。その間は通常通り、一人で前線を維持してね」と付け加えた。
リークは最後に全員を見渡し、「以上だ。みんな、気をつけて行動しろ。シーク、お前は初めての依頼だが、適性試験の時の強さを考えれば問題ないだろう」と激励した。全員が頷き、森の中へと踏み込んでいった。木々の間から漏れる陽光が、彼らの武器を照らし出す。静寂の中、レッドウルフの気配を探りながら、慎重に前進を始めた。
森の中を進んでいると、ブルームが突然俺に向かって尋ねた。「ねえ、シーク。あなた、身分証明書を持ってないのよね?」
俺は少し驚いて答えた。「ええ、そうですけど…どうしてそんなことを?」
ゴルドが説明を加えた。「普通、身分証明書がないってことは、孤児院出身だってことが多いんだ。俺たちも気になってたんだよ」
俺は首を傾げて聞き返した。「なぜそう思うんですか?」
リーフが答えた。「この国では、両親がいる子供は生まれた時に身分証明書が発行されるんだ。孤児院で育った子供たちは、そういった書類がないことが多いんだよ」
「あぁいや、えっと…」と俺がどもりながら嘘をつこうか悩んでいると、リークが割って入った。
「おいおい、余計なことを聞くんじゃねぇよ。お前ら」
そして続けた。「まぁでも、孤児院の出身ならよく生き延びたもんだな」
俺が「どうしてですか?」と聞くと、リークは神妙な顔をして説明を始めた。
「人間って種族は、生物を殺した時に、その生き物の魔力と魂の一部を自然と吸収してしまう。孤児院は基本的に教会が運営してるだろ?」
クロムは「教会、黒いな」とボソッと小さく呟いた。
リークはそれに同調するように続けた。「教会というか、神官たちは他の生物を殺した時に、その生物の魂を吸収してしまうのが嫌なんだろう。教会の信念では、それは許されないことなんだろう。魔物の魂を吸収することで、自分の魂が穢れてしまうという考え方だ。そして、その穢れた魂を孤児院の子供を殺すことで清めるという教義があるんだ。…これくらいの常識も知らなかったのか?」
「申し訳ありません。無知で」と俺は謝った。
「まあいいさ、ゆっくり学んでいけばいい。ただ、孤児院の子供は大人になるまで生き残ることが少ないんだ。特に神聖魔法の使い手は自分に神の力の一部を宿す。その時、自分の魂に人間以外の不純物が多く混ざっているのを嫌うんだろうな」とリークは少し言葉を濁しながら続けた。
リークの説明を聞いて、俺は衝撃を受けた。異世界、それも元の世界に比べて倫理観を語る余裕が人類にないというのはわかる。だが、教会や宗教団体までもが倫理観を無視するような行動をとるのかと思うと、嫌悪感を抱かずにはいられなかった。
そのように深く考え込んでいると、後ろからゴルドが「まあ、お前は知らなかったみたいだけど、気にするな」と声をかけてきた。俺は無言で頷いたが、心の中では複雑な思いが渦巻いていた。
深い思考に沈みながら歩いていると、突然リークが「ガウルボアが5匹だ!戦闘態勢を整えろ!」と叫んだ。
リークの声で現状に意識を戻し、俺は素早く剣を鞘から抜いて戦闘態勢を整えた。
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