令息たちが狂った原因

「…フィーネ?」

「思わず口にしてしまったの」

「…そうか」


 つまり、フィーネは弱音を吐いたというわけだ。

 家族以外の人前では隙を見せないよう努力する妹が。

 フィーネが弱音を吐けるということは、ユーリはかなりフィーネに信頼されているようだ。


 本来なら無関係の人間に、学内のことを漏らしてはならないのだが…直感が働いた。

 ユーリに話せば解決の糸口が見つかると。だから私は頷いた。


「本当だ」

『その囲われてる女子生徒、彼らに定期的になにか食べさせていませんか。もしくは常に身につけている物』

「うーん…私は接する機会がないので分からないが…なぜ、そのことを気にする?」

『違法な魅了の魔導具または魔法薬を使用している可能性があります』


 ピン、と空気が張り詰めた。

 フィーネも王族としての顔つきになっている。


『どんなに愛らしい女性でも、婚約者を持つ男性が侍るでしょうか。しかも高位貴族として教育を受けた子息の方々が複数人も。彼らが未熟と言われればそれまでかもしれませんが』

「―― いや、あの中にいる人物のひとりは私もよく知っている人物で、非常に優秀だ。彼があんな間違いを犯すとは意外に思っていたんだ」

「彼女が身につけてるものは、見えた限りでは特に目につくものはなかったわ。服の中に隠されていたら分からないわね。定期的に食べてる物…?」


 不意に、最近のモーリスとのやり取りを思い出す。

 たしか彼は私にクッキーを勧めてきた。食べてみたら美味かったから、私もどうかと。見た目はやや不格好で誰かの手作りであることは察せられた。

 私は王族だ。勧められた当時は毒見役を担当する護衛が外れる授業中で、いくらモーリスが毒見した後とはいえ口にするわけにはいかず、断ったのだ。


 ―― たしか、モーリスがあの女生徒に侍るようになったのはそれから少し後のことだ。


「クッキーかもしれん」

「クッキー?」

「人からもらったが美味かったからどうだ、とモーリスから勧められたのを断ったことがある。その後からモーリスの言動がおかしくなった気がするが…だが、食べ物にそのようなことができるのか?」


 すると、ユーリがカバンから資料と本を差し出した。

 本の方はだいぶボロボロだった。資料の方はこの本に記載されていた内容のようだ。急いで書き上げたのか、他の翻訳資料に比べると字が荒い。

 だが、その内容を見てゾッとした。ギデリア魅了薬の作り方、と書いてあったのだ。


 資料の冒頭部分に本のタイトルがあったのでそちらを改めて見れば『魔法薬ガイド』とあり、製作年は今より遥か昔、五百年以上前になっている。

 思わずフィーネと顔を見合わせる。彼女もまた、表情が強張っていた。


『消失した言語の本だったので興味を惹かれて読んでいた中にありました。王女殿下から騒動についてお聞きして、もしやと思い翻訳しました。虫食い状態だったため、不足している部分がありますが』

「…いや、これは禁書に値する物だ。よく見つけた。それで、このページが怪しいと?」

『ご覧のとおり、それはどこにでも生えているギデリアの根を乾燥させ、粉末化したあとに特定の薬品を入れて魔力を込めることで液状の魔法薬が完成します。肝心の薬品名の部分は虫に食われていました』

「惜しいわね…でも、ユーリはこれをその女子生徒が利用したと考えるのね?」

『可能性のひとつとしてお考えください。この本はベガルド語で書かれていたので到底読めるとは思えませんが、原本には挿絵があるため絵の特徴から割り出した可能性があります』


 ベガルド語って…今は消滅した言語じゃないか。私が知っている限りでは、ベガルド語を研究している人はひとりしかいない。

 本当にこの男は何者なんだ?思わず驚いてユーリを見ていれば、フィーネがうっとりとした表情で言った。


「ねぇ、お兄様。素晴らしいでしょう?」

「称賛に値するよ」


 資料に改めて目を落とす。この魔法薬の効能は主な効果として魅了、そして副次効果として疲労回復がある。

 主に料理に混ぜて使うようだが、無臭であるものの苦味がある。利用する際は料理に二滴ほど。それだけで効能が現れ始める。注入する魔力量が多すぎると後遺症が出る、とも。

 …もしこれを本当にデンバー嬢が使っているのであれば、苦味を誤魔化すためにクッキーにしたのか。


『なお、この魔法薬は後年に発行された禁薬リストに名を連ねています。この本のこのページに』


 新たに差し出されたどっしりとした本はこの国でよく使われる禁薬リスト。パラパラとめくって示されたページには確かに「ギデリア魅了薬」と書かれていた。

 禁止理由は依存性が高く、使用による後遺症が重いため。魔力量が適切で服用が一、二回程度あれば後遺症は出るが快復するものの、服用期間が長いほど断薬時の後遺症が重く、最悪一生涯残るという。


 世界基準の魅了レベル五段階のうち、本来であれば『使用禁止』である三に該当するが、効能に対する後遺症の重さに関わらず、材料が手に入りやすく誰にでも作れるため『使用・製造法公開禁止』のレベルに該当する四にあたる。


 ちなみに、レベル四までは研究目的であれば使用や製造は許可されている。レベル五になると『所持・製造禁止』となり、研究目的でも違法とされるのだ。

 製造法が記載されている物があれば速やかに該当箇所は破棄、または国際機関の魔塔にある機密書庫へ格納されることになる。

 …なんで魔導具を管理している魔塔に、と習った当初は疑問に感じたが、よくよく聞けば魔塔は属性魔法、精霊魔法、魔導具、魔法薬に関するすべての研究を行っている研究所だそうで。魔法よりも魔法薬、魔法薬よりも魔導具の方が種類も豊富なため、一般的に魔導具を研究する場所、と認識されているとのことだった。


「…禁止理由はさもありなん、だな」

『平民である僕も家族も、周囲の人間もギデリアはただの雑草という認識でしかありませんでした』

「わたくしも同じ認識だったわ。あらゆるところに生えているもの」

「…つまり、この薬品も手に入れやすいものだったとしたら、容易に作れるということだな」


 この国に限らず、国際協定で過度な能力を持つ魅了の魔導具は禁止されている。

 それは魔法薬も含まれており、あきらかにこれは禁止レベルのものだ。

 これは急ぎ父に、いや陛下に報告しなければならない。フィーネに視線を向ければ、彼女も頷いた。


「この資料と本、預かっても構わないか?図書館にはこちらから連絡しよう」


 ユーリが頷く。

 するとフィーネが「資料にちゃんとサインした?」と聞けば彼はキョトンとしたあと首を振ったので、資料に誰が翻訳したのか分かるようにサインをさせる。

 それを見てから立ち上がり、中座することを謝罪して私は四阿を後にした。歩きながら、侍従に「陛下へ謁見の申し込みを。緊急だ」と告げる。


 協定違反になることが万が一でも可能性としてあるのであれば、潰さなければならない。





 帰るユーリを見送ったフィーネも合流し、陛下に謁見して事態の説明をする。

 陛下は信じられない様子だったが、ユーリが借りた本とその翻訳された用紙を見て「なんたることだ」と息を吐いた。


 だが、実際に使われているかは確証がない。

 現物であるクッキーを入手すれば魔法薬が使用されているのが分かるので、まずはそれを入手するしかないだろう。


「そのお役目、わたくしにお任せください」

「フィーネ」

「だがフィーネ、そなたはもう学園には…」

「マリンが心配なので復学します。彼女と時々会っていますが、憔悴しているので付き添って上げたいのです。それに…その女子生徒、デンバー様はわたくしを陥れるのが目的のようですから」

「何」


 陛下の眼差しが鋭くなる。

 フィーネはにこりと微笑んだ。だが、目は笑っていない。


「ですから、身の程を知ってもらわなければ。王女わたくしの婚約者を奪った挙げ句、王女わたくしを貶めようとしているのですから」

「…アンダーソン子息はどうする」

「不用意に手作りのものを口にする時点で、不合格です。そこから挽回するかと見守っていましたが、もう無理ですわね」

「……誠に…愚息が、申し訳ありません…!」


 この場にはアンダーソン侯爵もいた。彼は宰相なのだ。

 彼も彼で、エリックを何度も叱責していたと聞く。だがエリック本人は意に介さずデンバー嬢に侍っている。

 この後、エリックをどうするかはアンダーソン侯爵次第だが、まあ後遺症のこともあるだろうししばらくは静観することになるだろう。


「ですので、婚約者を変更しようと思いますの」

「だがフィーネ、お前の婚約者は外国語が堪能な者でなければ…」

「いるではありませんか。今、陛下が手にしているその翻訳された資料を書いた者が」


 陛下が資料に目を落とす。

 恐らく、そこにサインされているだろう。『トゥイナーガ』と。トゥイナーガの翻訳本には奥付の部分に必ず直筆のサインが書かれているから、比較すれば本物だと分かるだろう。


「トゥイナーガだと?」

「ええ。身分は平民ですが、彼の実績はご存知でしょう?現時点で十二ヶ国の本の翻訳版を次々と出版。しかも今、陛下のお手元にある本は現在は失われたとされるベガルト語ですわ。…陛下なら、ご理解いただけますよね?」


 陛下が本へと視線を向けた。

 そう。私が知っている唯一ベガルド語を研究している人は陛下だ。

 ユーリが翻訳した内容が間違っているかどうかは、陛下なら分かるはず。


 陛下は本の該当ページと、ユーリが翻訳した資料を見比べて目を輝かせた。


「……ああ、間違いない。これはベガルド語で…なんと、この単語はこう翻訳されるのか…!」

「陛下」

「すまぬアンダーソン。この本はベガルド語で書かれたのに相違ない。また、トゥイナーガが翻訳した内容も儂が知っている文脈、単語とほぼ合っていることから信用できよう」

「では」

「だが、トゥイナーガの人となりを儂は知らぬ。彼と直接会い、話をした上で決めよう」


 陛下との謁見までの間にフィーネに確認したが、ユーリは喋ろうとすると家族以外の人間には吃る傾向が強い。

 フィーネがユーリを見つけ、接触し始めたのはここ半年の話だというが未だ彼から吃りは消えないらしい。

 王子である私相手ですら真っ青だったのだ。陛下相手ともなると、卒倒するんじゃないか、彼。

 だが協力すると言った手前、仕方がない。手を上げて発言する。


「トゥイナーガと話すのは難しいでしょう」

「何?」

「先ほどフィーネと共に彼と庭園で少し会話をしましたが、発声に少々難があるようです…しかし、筆談であれば問題ありません。ですので、謁見時は筆談の許可を求めます」

「発声に難があるのか…まあ、良い。それならばオルフェウスの言う通り、筆談を許可しよう」


 本人の知らぬところで進められるセッティング。

 自分がされたら嫌だなと思う。すまん、ユーリ。


「ああ、そうだわ陛下。そのトゥイナーガという名前、ペンネームだそうです」

「ペンネーム?」

「ええ。彼の本当の名はユーリですの」





 後日。案の定、ユーリは陛下との謁見で卒倒しかけたらしい。

 それはフィーネがほぼ騙し討ちのようにユーリに何も知らせず、連れてきたということもあるだろう。

 だが筆談のみで良い、ということで安堵したらしく、幾分顔色が悪いままながらも陛下とやり取りを始めたが打ち解けていた様子だったという。


 フィーネの助言で、万が一ということもあるため魔塔へ「魅了レベル四の魔法薬のレシピを発見した。使用された疑いがある」と連絡。

 すると魔塔側からすぐに人員が派遣され、事情を把握した専門家による解析と解毒薬の研究が始まった。


 魅了レベル四の魔法薬レシピは『製造法公開禁止』。協定締結後に開発されたものであれば原本を魔塔で管理し、写しは破棄されることになっているが協定締結前のものは散逸することがある。

 つまり、今回使用されていると思われるギデリア魅了薬は魔塔でレシピが管理されていなかった。存在と効能は魔塔に所属している誰かが知っていたから禁薬リストには掲載されたが、魔塔も詳しくは分からないのだという。



「それで、解消する見込みは…」

「まだ研究が始まった段階だからね。なんとも言えないらしい」


 そうですか、とアリアドネは残念そうに裏庭へと視線を向けた。

 今は放課後。裏庭には相変わらずデンバー嬢を中心に子息たちが集まって、ベタベタとしていた。

 フィーネは何度か相対しているが、思った以上に周囲の令息のガードが固く、難儀しているらしい。最近ではその令息たちから「シャーロット嬢を虐めるなど!」と言いがかりをつけられているそうだ。

 …その日、フィーネがボソッと「わたくしが本気だったら、虐めるなんて生ぬるいことするわけないじゃないの」と呟いたのには密かに同意しておいた。


「フィーネ様もハッフェンベルト様もお休みから戻られたとか。わたくし、少しでも気が紛れるようにおふたりをカフェに誘おうかと考えておりますの」

「いい考えだと思う」

「ありがとうございます。…オルフェ様が、クッキーを口になされなくて、良かった」


 安堵した表情でぽつりと呟いたその言葉は、フィーネやハッフェンベルト嬢の前では言えない言葉だ。

 この周辺は信頼する者以外は私とアリアドネしかいないことは予め確認していたから、思わず溢れたのだろう。

 政略による婚約ではあるが、私としては相手がアリアドネで本当に良かったと思う。

 アリアドネの長く美しい赤い髪を一房とって、口づけた。


「私も、良かったと思っているよ…ただ、フィーネのため、あのクッキーを受け取りに行こうと思う」

「オルフェ様…」

「絶対に口にはしない。研究用に現物が欲しいと言われていてね…フィーネが一度挑戦したんだが、周囲の令息に邪魔されてダメだったようだ」

「…オルフェ様に幸運がありますように」

「ありがとう、アリアドネ」


 するりとアリアドネの髪から手を離す。

 不安そうな表情で見つめてくる彼女の額に口づけを落としてから、裏庭へと向かった。その様子を離れて見ていた侍従がスッと近づいてくる。

 …向かいがてら、口を動かさずにぼそりと尋ねた。


「(大丈夫なのか)」

「(はい。禁具を持ち込んでおりますゆえ)」


 彼は私の本来の侍従ではない。魔塔の人間だ。

 クッキーを毒見役として受け取り、自身の体に取り込んで持ち帰ることを目的としている。そのため、体内の時間を遅延させる効果を持つ、一般利用が禁じられている魔導具を持ち込んでいるそうだ。自ら実験体になるとは正気の沙汰ではないとは思うが、魔塔に所属する者は研究のこととなるとそのことすら厭わないらしい。


 私たちが近づいてきたことに気づいたのだろう、甲斐甲斐しくデンバー嬢の世話をしていた令息たちがハッと我に返ったように姿勢を正した。

 それで遅れながら気づいたデンバー嬢が目を丸くし、カーテシーを見せる。


「偉大なる王国の星、第一王子殿下にご挨拶申し上げます」

「ああ、いや。堅苦しい挨拶はいいよ。デンバー嬢だったかな」

「まさか私ごときの名を覚えていただけるとは!光栄でございます!」


 …こう接する分には一般的な子爵令嬢なんだがな。

 突然現れた私に少し驚いている様子だった令息たちも一礼している。エリックは…少し、居心地が悪そうだな。


 さっさと用事を済ませよう。私はにこりと微笑むと、本題に入ることにした。


「以前、モーリスが持ってきてくれたクッキーがあっただろう?やっぱり食べてみたくて、毒見役を説得して連れてきたんだ」

「毒見役…ですか?」

「そう。私は王族だからね、外では毒見役なしで食べてはならないとされているんだ」

「何だ、殿下も食べたかったんですね。とても美味しいですよ、やみつきで毎日食べてるぐらいなんで」

「へぇ。今日は持ってきてないのかい?モーリス」

「僕の分は今日のは食べてしまったな…シャーロット嬢、あるかい?」


 、か。

 デンバー嬢はパッと顔を明るくさせると、手荷物からラッピングされた袋を取り出した。


「こちらになります!えっと…従者の方にお渡しすれば?」

「ああ」


 従者が受け取る。ラッピングの封を外し、クッキーをひとつ手に取ると彼はそれを口に放り込んだ。


「デンバー嬢、後で食べさせていただくよ。ありがとう」

「え…今お召し上がりにならないのですか?」

「私も今食べたいのは山々なんだが、ルールでね。彼が食べてからしばらく経たないと口にはできないんだ。気を悪くさせたのなら申し訳ない」

「いえ!尊い御身に万が一があっては問題ですもの。受け取っていただいただけでも嬉しいですわ」

「では、失礼するよ」


 一礼する彼らに背を向けて、侍従を連れて歩き出す。目的地は学園寮内にある自室ではない。王宮だ。

 なるべく急いで馬車止めに待たせていた馬車に乗り込み、走らせる。


 クッキーを口にした侍従の顔色は悪い。

 体内の時間を一時的に遅延させる魔導具を使用しているのだ。身体への負荷はかなりのものだろう。

 御者になるべく急ぐように指示をして、手元のクッキーを改めて眺める。

 …本当に、ただのクッキーだ。


「絶対に、口になさりませんよう」

「分かっている」





「お兄様。早急にアンダーソン様方を取り押さえねばなりません」

「どうしたんだ、急に」


 今日入手したクッキーの分析結果は明日分かるはず、とのことで従者を引き渡した後、状況を伝えようとフィーネとアリアドネ、ハッフェンベルト嬢がいる街のカフェでの小さなお茶会にお邪魔したタイミングだった。

 フィーネが深刻な表情で言った内容にアリアドネもハッフェンベルト嬢も驚いているじゃないか。しかもなぜか青い顔をしたユーリもいる。

 モーリスたちを取り押さえ?デンバー嬢ではなく?


「ユーリが気になる記述がある本が見つかったからと連絡をくれて、駆けつけてくれたの」


 ねぇ、とフィーネが隣に座るユーリに問えば、ユーリは青白い顔でこくこくと頷いた。

 テーブルの上に広げられていたのはシェザーベル語の本。これは私も読めるな…「人体の神秘」?

 ユーリのペンが動く。やや乱れた筆跡は相当焦っていることを表していた。


『あの禁薬、後遺症もそうなんですが高頻度かつ長期使用による副作用がマズいです』

「マズい?」

『あの禁薬は、肉体の疲労回復と眠気防止が主な効能だそうなんですが、副作用として液体に込められた魔力の持ち主に好意を抱く効果があります。ですが、高頻度の摂取、かつ長期使用すると手段を問わずに持ち主を囲おうとする』


 ユーリが開いたページを読む。確かにその記述があった。シェザーベルでは回復薬で、魅了が副作用扱いだったのか。

 いやそんなことよりも、この場にいる全員がその副作用の危険性に気づいただろう。

 デンバー嬢はこのクッキーをひとりじゃなく複数人に、継続的に食べさせている…しかも今日得た情報では毎日だ。

 ということはつまり…。


「彼らがデンバー嬢を取り合い、殺傷沙汰になる可能性があるということか」

「なんてこと…!」

「自業自得ではありますが、わたくしもそこまでは求めておりませんわ。お兄様、早急に手筈を整えましょう。ごめんなさいマリン様、アリアドネ様。せっかくのお茶会でしたのに…」

「いいえ、お茶会はまたできますわ。ねぇ、ハッフェンベルト様」

「ええ、もちろん」

「ユーリ、王宮に行きますわよ!」

「うぇ!?」


 席を立ち、ふたりに挨拶をしてから急いで王宮に向かう。

 精霊魔法で手紙を至急送り、魔塔の研究員たちも集めてもらうよう指示。陛下にも緊急の謁見を申し込んだ。

 荷物を抱えて目を白黒させているユーリには少し頑張ってもらわねばな。

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