第21話

「それで?何を買いに来たの?」


 共に同じ制服を身に包み、他人から何者であるかを判別しにくくしてその違和感すらも消して見せる汎用魔法を使いながら街を徘徊する僕たち。

 そんな僕に対してヘラが疑問の声を上げる。

 

「ちょっとしたプレゼントをあげようと思っておってな」


「……プレゼント?」


「だ、誰にあげるのかな?お、お姉さんはす、少し教えて欲しいかなぁーって思うんだけど」

 

 僕の言葉に対して二人が急に乗り出してきて疑問の声を上げる。


「何故汝に教えねばならぬのだ。まぁ、汝らと言え無関係でもない故話すが。相手はお世話になったものであるとも、余が王都を盛大に壊した時のな」

 

 そんな二人に対して僕は一切動揺することなく質問に答える。

 あの一件で暗部統領にはそこそこの迷惑をかけてしまった。

 これからも長い付き合いになっていくだろうし、基本的にはいがみ合うような仲とはなるが、迷惑をかけたときはこうして何か持っていくの筋というものだろう。


「あぁ、なるほど。それは必要ね」


「へぇー、良いわね。何をあげるつもりなの?」


「オルゴールでも渡そうと思っている。彼奴は音楽が好きであるしな」

 

 引きこもり生活を余儀なくされている暗部統領は基本的にいつも暇を持て余している。

 その暇を誤魔化せる歌は彼奴の好きとするものであり、今流行りの歌のオルゴールでも渡しておけば良いでしょ、多分。少なくとも貰っていやがるものではないだろう。オルゴールを大量に保管している部屋まで持っているほどだし。

 確かクラシック好きだったよね。


「良いじゃない。ちゃんと相手のことを考えられていて良いチョイスだと思うわ。オルゴールを買うなら良い店があるわよ?」


「むっ?そうであるか、であれば汝に店選びは任せようではないか」

 

「えぇ、任せて頂戴。


「……もうちょっと私も流行やお店に対して敏感になっておかなきゃね」

 

 僕たちはローズ嬢の先導に従って今、学園に通っている女子生徒の間で話題になっているという可愛らしい小物類が売っているというお店の方へと向かうのだった。

 どうやらそのお店のオルゴールの種類の数はこの国で一番なんだそうだ。


 ■■■■■


「デザインが女性ものに近くない?」


「あ、あれ……?あげるのってもしかして女性だったりする?ねぇ、どうなの?ねぇ?ねぇねぇねぇ」


「そもこの場には女性っぽい可愛いデザインが多いであろうが……無茶苦茶にも程がある。後自分の立場も考えろ、このような場で騒ぐでない」

 

 オルゴールを購入するためにまたひと悶着あったりするかしないかはまだ別の話……。

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