第20話
現在の生徒会メンバーは僕と
学校の教師たちであっても上から物を言えない殿上人とも言うべき侯爵家の一族であり、そんな僕たちが活動する場である生徒会室は豪華の一言。
キッチンもあるし、お風呂もあるし、くつろげる場所もある。
普通に人が生活していくには何不自由ない空間がここには広がっている。
そんな場所があればここを僕が自身のたまり場とするのは至極自然な話と言えよう。
「ふわぁぁ」
既に下級貴族へと手を伸ばし終え、サードクラスの方にいる意味もあまりなくなった僕はここ最近授業をサボって生徒会室でくつろいでいることが多かった。
「ふふっ」
そして、ローズ嬢も僕と共に生徒会室でサボっていた。
ローズ嬢は秀才であり、学園レベルのテストであれば何も問題ないだろうし、ここで僕を目当てにサボっていても問題ないのだろう。
「ね、ねぇ……アルスくん。く、クッキーを作ってきてみたんだけど食べる?じ、自信作なんだけど……い、いや!要らないなら良いんだよ?」
「……」
それに対して僕は無言で口を開ける。
「ッ!!!あ、アルスくんならそう言ってくれると思っていたよ!じゃあ食べさせちゃうわね?はい、あーん」
そんな僕を見たローズ嬢は満面の笑みを浮かべ、嬉々とした表情で僕の口元へと自身で作ってきたというクッキーを運んでくれる。
「……うむ」
味は普通に美味しかった。
僕は特に何の感想も告げることなく
「あーん」
それに対してローズ嬢も何も不満そうな表情を見せることなく僕の口元にクッキーを入れ続ける。
「ちっかいわッ!!!」
そんな時間がしばらくの間続いていた頃。
それを遮るかのように勢いよく生徒会室の扉を開けたヘラが大きな声を上げる。
「……ちっ」
おい、ローズ嬢。
舌打ちと共に人がしちゃいけないと思わせるほどに憤怒に染まった表情を浮かべるなや……っと。
「ほら!さっさと離れなさいよ!]
生徒会室へと入ってきたヘラは僕とローズ嬢を見て早く離れるように促してくる。
「むっ?もう授業は終わったのか?」
それに対して、ローズ嬢の膝に頭を乗せて寝っ転がっていた僕は何事もなかったかのように頭を起こし、ヘラへと声をかける。
「えぇ……終わったわよ。貴方たちがイチャコラしている間にねぇ!」
「さようか。して、汝ら。余は少し買い物に出ようと思うが如何するか?」
ジト目と共に嫌味をぶつけてくるヘラの言葉を軽く受け流し、僕は二人へと外出のお誘いの言葉を口にする。
そんな僕の言葉に対する二人の返答は火を見るよりも明らかだった。
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