第17話
僕が行った対魔導の天廻殲滅作戦による被害は甚大……僕が時短のために王都の街を盛大に破壊したのでそれによる被害がとんでもないことになっていたのだ。
しかし、だからといって僕が何か咎められることはなかった。
侯爵家という自身の家のこともあるし、オルス騎士団長や暗部頭領バックアップもあったのだろう。
「それで?いくらほど必要なのか?」
当然、生徒会自体にも何のお咎めなしである。
「……き、金貨五百枚ほど」
いつも通りの通常運転となっている生徒会で僕は一人の少女からの相談を生徒会役員としてではなくアルス・ラインハルト個人として聞いていた。
自分の前にいる少女、リリス・アーレイから受ける相談は金銭面について。
アーレイ子爵家の三女である彼女は自身の親から僕になんとか金銭を借りてこいと命じられ、僕に会うために生徒会室へとやってきたのだ。
「随分と多いな?いや、津波の被害であればそんなものか。地震を起こす魔物とはなかなか厄介なものだな。騎士団のもう少し速く対処出来なかったものか」
「いえ、倒して頂いただけでも……」
「さよか、それ?返す当ては?」
「……」
僕の言葉にリリスは沈黙する。
「アーレイ子爵家か……あまりにも遠いな」
アーレイ子爵家の領土はラインハルト侯爵家から大きく離れているし、当然派閥で見ても決して近くない。
そんな相手に無償で金貨五百枚を貸すのも問題であろう。
領土持ちの子爵家はこれまで僕が金を貸してきた男爵家などとは話が大きく違ってくる。
「……そう、ですね」
「ふぅむ。で、あれば愛人しかないか?」
「……ッ」
僕の言葉にリリスは体をビクつかせ、視線を少しばかり下げる。
レイスト王国には愛人制度が存在する。
王家や侯爵家などと言った者が自分の妻とは別に愛人を囲むことがよくあり、基本的に愛人を選ぶ基準は顔であり、派閥を理由としない。
遠い派閥の貴族家の娘を愛人とし、愛人となった女の生家に金を送ることは珍しいことでもないし、それを理由に家同士が近づいた扱いとはならない。
そういう慣習となっている。
僕がアーレイ子爵家に金をやるとなると愛人制度を利用するくらいしか無いだろう。
「余は構わん。なるか?愛人に。選択肢は汝に預けよう」
「……ぜ、ぜひとも私をアルス様のあいじ」
「ふふっ。少々お待ちになって?」
そんなリリスの言葉を遮るように扉を開く音が響き、この場に新しい声が響く。
「金銭なら私が貸すわよ?」
生徒会室へと入ってきたローズ嬢がリリスに向かって優しく声をかけるのだった。
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