第16話

「息災か?」

 

 僕は自分の魔導具によって守らせていたヘラとローズ嬢開放する。


「ちょっと!いきなり全部閉じることはないじゃない!こっちの声も届かないじゃない!」

 

「ま、守ってくれたおかげでこっちは大丈夫だったよ。ありがとね……それよりもアルスくんの方が大丈夫?」

 

「問題ない」


「こっちは問題あるのだけど?」

 

 僕の言葉に対してヘラが噛み付いてくる。


「別に私だって守られるばかりじゃないのよ?少しくらいは役に立てるし、守られるばかりじゃなくて私の方だって守ってあげたいわ……アルスだってちゃんと攻撃を食らっていたしぃ」


「この程度の相手に余が負けるわけなかろうて。そも汝の力では余を守るなど不可能であろう」


「それでも、よ!私は貴方の婚約者なの!支えたいに決まってい」


「さよか」

 

 僕はヘラの途中で彼女に背を向け、言葉を遮る。


「ちょっとーッ!?」


「黙れ、まだ終わってなどいなかった」

 

 それに対して上げられる不満げなヘラの言葉を僕は一言で切り捨て、視線を他へと向ける。


「あちゃー、バレちゃった?やっぱり感知能力もレベチなんだね、うん。これも魔導具の力?私たちも魔導具の製作には自身があったんだけど……ちょっと自信失うなぁ」


「……死んでおらぬのか」

 

 僕の視線の先。

 巨大な魔導具へと腰掛ける壁のシミへと変えてやったはずのラミアが不敵な笑みを浮かべてそこにいた。


「そうだよ。にしし、なんで私が死んでないのかはそっちで考え」


「未来視の天瞳か、それが」

 

 僕はラミアの言葉を無視して勝手に話を続ける。

 さっきまでは確実になかったラミアが腰掛けるその魔導具こそが魔導の天廻の切り札である未来視の天瞳であろう。


「何がラミリスの妹であるか。全然違うではないか。それにしてもそうか。未来視の天瞳には新たな生命を作るクローン技術も合わせる魔導具であったか」


 そして、そもそもラミアすら人ではなく魔導の天廻の一部だろう。


「……ちょっと?」


「未来視、というよりも未来を守る番人という方が正しいではないか」

 

 パッと見た感じでしかないから詳しいことまではわからないが、どうやら未来視の天瞳にはAIに似た知能も自身の肉体となるクローンを作る技術すらも兼ね備えた便利道具であるらしい。

 いや、クローンというよりは人造人間か?いろんな生物の遺伝子をかけあわせているようであるし。


「……少し、わかり過ぎだよ?未来有望な若手は受け入れたいのになぁ」


「余も受け入れてほしいものであるがな」


「受け入れるわけないじゃん、君のような異物を。確実に殺して上げるわ」

 

 僕はラミアもとい魔導の天瞳は僕へと強い殺意を向けながら口を開く。


「……ッ」

 

 それに対して僕は魔導の天廻の言葉ではなくその行動に注意を払う。

 急激に活性化しだした魔力に対して。


「そんなに警戒しなくとも大丈夫だよ。ただ逃げるだけだから」


「それも許さぬ」

 

 僕は魔導の天廻周りの魔力の流れを断ち切り、黒炎を打ち込んで僕の前にあるその魔導具を完全に消し飛ばす。

 あれは本機ではなくただの子機。

 壊したところで何の意味もないだろうが、一応壊しておく。


「これで今度こそ終わり……一人は逃したがあれは仕方ないだろう」

 

 僕は今度こそ息を吐き、全身から力を抜くのだった。

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