異世界への切符 四枚目
ちょっと前だったら早馬で駆け抜けて行っていたのに、今回の旅はゆっくりだ。
それでも、フェイス達が戻ってくる頃には帰りたいから、少し早めに行くのだが。
「そう言えば、こっち方面は来たことないな」
私は、馬車の
「もう直ぐ国境に着くよ」
「なあ
「え? そうだっけ?」
「いや、皇国に来てからだよ」
「そ、そうか。びっくりした。けど、前職が前職だから、そうかもと思ってしまう」
「酷いな。無法者じゃないんだぞ」
私はちょっと、むくれた顔をした。
入国許可証を見せると、手紙が届いていると手渡された。
ナビ婦人からだった。
国境の両国の警備兵は要件が終わると「ちょっと待ってください」と言って詰め所に戻った。
そして、本を持ってきて
彼らも
私も馬車に乗っていると知ると、私もサインを書いてとせがまれた。
「サインなんて。そんな凝った書き方知らないぞ」
「良いんだよ。リリィは普通に書いてあげて」
二人のサインを見て、双方の警備の兵士さん達は、とても喜んでくれた。
「すごいな。ちゃんと隅々まで行き渡っていたんだな」
旦那様の
「ええ? じゃなかったら、僕達出会えてないよ。頑張ったんだから」
「ああ、ありがとね」
教えてもらった海までの道を、馬車に乗って進んでいった。
「あ、潮の香がする!」
「うん。もう直ぐ見えるね」
堤防代わりに盛られた丘を乗り越えると、そこには広い広い砂浜が広がっていた。
「うわ――。僕の世界の海と一緒だ――! 来てよかった――!」
「それは良かったな。けど、違うところ少ないと、目新しくないから詰まんなくない?」
「そ、そんなこと無いよ。何度来ても海は良いさ!」
キラキラとした目で
「ふ――ん」
私は横目で
(そうか。
私は今、
そして、その同じ景色の海を、私は
次元は越えてないけど、思いにおいて
宿はナビ婦人の屋敷で部屋を借りることになっていた。
国境で手渡された手紙に書いてあった。
「ねぇ
と私。
「そうだね。知らない土地だと、リリィさんは緊張するからね」
「そんなことないぞ。もう」
皇国に来たばかりの私は、
見かねたシャトレーヌに、それは置いていけと、もみ合いになった。
懐かしい思い出なのだ。
その時に剣を預けたのがアミュレット。
ルナの旦那さんだ。
浜辺を二人で、ちゃぷちゃぷと遊んだ後、ナビ婦人の屋敷に向かった。
日が暮れての移動は、さすがに不用心だからだ。
手紙に詳しく書かれた地図の通りに行くと、かなり大きなお屋敷が見えてきた。
「あ、あそこかな? 流石だな。僕の屋敷よりでっかいな」
当たり前である。
旦那様は、戦争の後遺症で跡継ぎが作れなくなっているが、医者の名門貴族である。
この旦那様は、後腐れがないと言って進んで戦場に向かうこともあったらしい。
門の前に近づくと屋敷の門番が寄って来た。
「あの、どちら様で?」
「はい。
と言って、ナビ婦人の書いた手紙を手渡した。
すると……。
「お二人が
「ええ、地図のお陰で迷いなく来られました」
と
「そうですか。そうですか。帝国との戦争も大変でしたね。リリィ様も大活躍なさったと聞いております。あの、申し訳ないんですが、本にサイン頂けますか?」
門番の人は直ぐに小屋に戻って四冊の本を持ってきた。
(また、サインか?)
慣れない私は面倒と思いながらも、ニコニコと笑顔を絶やさず
四冊全部に書いたのだ。
偉いでしょ?
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