重大会議 その壱
私とルナは、別の部屋で第参部隊の皆とゆっくりしているオルトの所に向かった。
「姉様、ルナ様、お疲れでした」
部屋に入ると隊の皆が挨拶してきた。
「うん。みんな、今回本当にありがとな。一人も死なずに無事に戦い抜けた。良かった」
そう言って、みんなの苦労をねぎらった。
「お! オルト、ちょっとこっち来て」
私とルナは、部屋の隅の椅子にオルトを呼んだ。
「おや、姉様、ルナ。お二人で」
「う、うん。元気そうだな」
私は少し緊張気味で答えた。
「ん? 何です? 姉様」
「あ、いや、その。なんだな。それが、こうでな」
「何ですか?」
オルトが冷静に問いかけてくる。
「……」
言葉が出ず、黙ってしまう私。
「ああ――、もう。姉さまじれったい」
とルナが痺れを切らした。
「オルト、あなたお見合いしなさい」
目を点にするオルト。
「突然何を言い出すかと思えば……」
「大事なことだぞ」
私は断られないように言葉を被せた。
「いや、戦いが終わったばかりというのに」
「いや、終わったから話に来たのだ」
「しかし、姉様……」
「ダメなのか? どうしても、オルトに紹介したい人がいるのだ」
「……。それは、メイさんですか?」
「な、何で分かった?」
「お友達の少ない姉様にとっての大事な人て、ひとりじゃないですか?」
「少ないって何だ。そんなことないぞ」
「姉さま。話が反れて行ってる」
ルナが笑う。
「ねえ、オルト。真面目に話しているんだけど、私達」
ルナがオルトに言う。
「姉様、ルナ、お二人のお気持ちはわかりました。姉様とルナが結婚し、そして親方様だから、その次は私という事なのかもしれません。それはありがたいことなのですが、私は後回しに出来ませんか?」
「ど、どうして?」
私は食い下がった。
メイが、少し元気が無いのだ。
あの部屋に、オルトらは来ていない。
私を見て安心してくれたのはわかったが、部屋の中を時々見回しているのが鈍感な私でもわかったのだ。
ルナが部屋に入って来た時は、パッと笑顔になったが、入って来たのがルナだけだったのを知ると、直ぐに元気をなくしてしまったらしい。
と、ルナから聞いた。
それを聞いた時、まるで帝国領で
あんな気持ち、もう嫌だ。
メイが同じように苦しんでいるのなら、少しでも早く解放してあげたいのだ。
「オルトは、メイの事嫌いか?」
私は聞いてみた。
「いや、そういう聞き方は卑怯ですよ。嫌いじゃありません」
「じゃ、駄目じゃないんだな?」
「ええ、まあ」
「本当か?」
それを聞いて、まるで我が子との様に喜んだ。
「どういう所がだ?」
たたみかける私。
「ん――、アルキナの襲撃で姉様が大怪我をした時、あの屋敷も襲撃があったというのに、躊躇せずに来てくださったのは正直嬉しかったですよ。危険が去ったとは十分に言えなかったのに」
「そうか? それで?」
「それだけ、ですが……」
「もっと、あるだろう?」
「え――と、姉様のお陰もあるかと思いますが、暗殺集団の私達を怖がりもせず話をするところなども、ですかね?」
「そうか。じゃ……」
「ちょっと、お待ちください!」
と、オルトが制止する。
「な、何でだ?」
「ふぅ」
とオルトは軽くため息をついた。
「わかりました。一度お会いして話してみます。お話してみてから決めます。それで良いですね?」
「うん。うん。それでよい」
「と、その前に、お願いがあります」
「なんだ? 何でも言ってくれ!」
「言いましたね? 何でもと」
「う、いや、出来る限りの事で……」
私がそう言うと、オルトはニコリと笑った。
「こんなに必死な姉様見るのも初めてですね。変わりましたね。姉様」
急に褒めるオルト。
「ば、馬鹿、急に褒めるな。恥ずかしい」
「では、お願いが」
「何だ?」
「私の前に、第参部隊の誰か。そうですね、隊にも女性がまだいますので、その子を先にお願いしたいです」
「え? 何で?」
「姉様。私は男です」
「うん。当たり前だな。それは」
「最悪、戦いで死ぬかもしれません。それに、生涯独身でも、おかしくありません」
「え? それは……」
「まあ、ちゃんと聞いてください。なので、男は後回しでも良いのです。ですが、隊には女性もおります。それを差し置いてというのは気が引けます」
「な、なるほど」
「親方様は、私達の
「うん。うん。なるほど」
「ですが、私達の場合は、そこまで必然ありませんので」
「うん」
「隊のみんな事も考えてあげたいのです」
ああ、オルトもみんなの事を、オルトなりに考えてくれていたのか?
嬉しいことだ。
「姉様だけが、隊のみんなの責任を負う事は無いんです。私だって、皆を率いてきた一人です。ついて来るなとは言わなかった」
「そうか」
「わかっていただけましたか?」
「うん。わかったのだ」
しかし、では誰にするのか?
「で、メイ様の警護に付いた隊員に女性がひとりおりましたよね?」
「あ、そういう事か?」
ああ、あの子か?
「ええ、メルティです。彼女を先にしてあげて下さい」
「うん。そうだな。メルティは、メイをわざわざ城に連れて来てくれた。私も、その気遣いに礼をしたい。どうだ、ルナ?」
「姉さまが良いのなら、それで良いんじゃない?」
とルナ。
「でも、相手に心当たりはあるのですか? ローズ様にお尋ねするので?」
オルトが心配した。
「それは大丈夫なのだ。城の防衛でみんなの活躍を見て、城の方々が感動されていてな。良い人がいれば紹介して欲しいと言われているのだ」
私は説明した。
「そうですか? でも、メルティに合う方は、どうやって?」
「ローズとも知り合いの方だから、多分大丈夫だと思うぞ。悪い人ではない。そんな人とローズ達は付き合わないからな」
「では、心当たりが……」
「うん。男爵様だ。良い人と聞いている」
「では、話は決まりましたね。メルティには私から話しておきますよ」
「うん。ただし、お見合いの事は内緒にな」
私がそう言うと、オルトは首をガクッとさせた。
「まったく、姉様は。……。まあ、メルティも姉様と似てますからね。ドレスとか着たがらないでしょうから、言えば城から屋敷に逃げてしまうかもしれませんしね」
そう言ってニッコリ笑った。
「た、頼むぞ!」
「はい、畏まりました」
それを聞いて、私はホッとした。
ルナは、私のその様子を見てクスリと笑った。
「姉さま、頑張ったね?」
「う、うるさい。しかし、ローズとかシャトレーヌは、こんなこと普通にこなすぞ。それ、凄いのか?」
「まあ、あのお二人は特に好きなんじゃないですか?」
私は、自分の女子力の無さに、ちょっと愕然としたのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます