第15話
倉庫で射殺された玉藻さんの死体を移動したと考えられる要因として、布団の存在があった。
倉庫の中には布団が置かれている棚があった。そのうちの一つがシーツがついていないものだった。もし布団に死体を乗せて運んだのであれば、シーツに血が付くのも当然だろう。もしそうであれば、証拠を残さないためにシーツを処理するのは想像できる。
この考えの信憑性を強めることとして、二階から風呂場までの道に一切血が付いていなかった。頭を撃ち抜かれていたということを踏まえると、血が一切付かないのはとても難しいことだ。
そこで布団を使ったのではないか?という考えにたどり着いた。布団に上手いこと死体を乗せて運べば床に血が付かず、証拠隠滅も容易にできる。
これで玉藻さん殺害から死体を露天風呂に持っていくまでの流れは証明出来た。だが、かえって新しい疑問が出来た。なぜそんなところで殺害しないといけなかったのか?
そもそも殺人をしている時点でかなりおかしいが、わざわざ呼び出して殺人をする必要性がどこにもない。ましてや、今回の事件の被害者は私たちが起きたら既に死んでいたという共通点を持っている。つまり、こんな回りくどいことをしなくても殺害自体は可能だ。
そんな私の疑問の答えは、意外なところに、意外な形で落ちていた。倉庫の中の傷ついた柱のそばに落ちていた彼女の日記帳だ。そこに書かれていた「ある体質」が、玉藻さんが倉庫で殺されたと断言できる何よりもの証拠となった。
さらに、そこにあった傷ついた柱も今回の事件のトリックで重要な証拠だ。
なぜ私と一織ちゃんが倉庫に来たのか思い出してほしい。私たちが倉庫に来た理由。それは「一玉さんの首吊り死体の真相がある可能性が高いから」だ。
一玉さんの死体があった場所は見取り図では二階では倉庫にあたる。大広間の天井にあった謎の穴も、一玉さんの死体を吊っていた縄があったあたりの場所にあり、倉庫の場所と一致するのだ。
結論としては、私の予想通りだった。倉庫の例の柱から少し動いたところに穴が開いていた。倉庫にあった縄を少し通して見たところ、すんなりと通すことに成功した。
さらに、柱についてだが、おかしな点があった。柱の妙な傷つき方だ。
柱についてだが、二種類の傷があった。一つは柱を一周するようについた傷だ。これは首を吊るための縄を巻き付けたところだと考えるとそこまで不自然ではなかった。他に縄を固定できる場所は倉庫にはなかったうえに、人間を吊っていたために傷がつくことは決しておかしくない。
しかしもう一つの傷はかなり不自然だ。柱には縦に切り裂いたような、それも途切れた傷があった。
この傷のせいで、それまでの推理が水の泡と化すかと思った。しかし、倉庫に置いてあったハサミを見た時、それまでの推理が合っていたことはおろか、この事件の全容が見えてきた。
そして今回の事件の大まかな流れを一織ちゃんに伝えたところ、彼女も即座に理解したようだ。そして私に一言、「じゃあ犯人が分かったんですか?」と言った。
それに対して私はどことなく誇らしげにこう言った。
響「もちろん。犯人はあの人だよ」
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