てるてる坊主の頭の中

@Marks_Lee

てるてる坊主の頭の中

明日は体育祭。外を見てみると、霧雨が地面をしっとりと濡らしわずかに水溜まりを作っていた。


明日の天気はどうだろうと思いスマホの天気予報を確認すると、予報は降水確率90%。さすがにコレは雨天中止もあり得るな……と思ってしまう。


今日に限って、傘を忘れてしまった。


せめて雨が弱まるまで時間を潰そうと思い、放課後の教室で明日晴れると良いなと願いながらティッシュでてるてる坊主を作っていると、彼女が教室へやってきた。


「あれ、帰らないの?もう、放課後だよ?」


彼女とは、小学校からの同級生だ。高校まで一緒になるとは思ってもいなかったが、この周辺の学生はうちの高校か少し離れた町の高校に進学するのがベターな選択だった。


「うん、コレをやってから帰ろうかなって……」


「コレって……てるてる坊主?」


「うん。ちゃんと作るのは、小学生の遠足の前の日以来かな。明日の体育祭、楽しみなんだ」


「そんなに?」


「高校最後の体育祭だしみんな頑張ってたからね。それだったらちゃんと成功させたいし」


「ふーん……それもそうだね」


僕たちはおそらく今年を最後に道を違えることになるだろう。2年の時の文系理系の選択はたまたま一緒だったが、以前雑談していた時に彼女はやりたいことがあるからと地方の女子大へ行くと言っていた。


僕は、一応都会の大学へ進学予定ではある。が、それが何か目的があるのかと訊ねられたらちゃんとした理由をを答えられない自分がいた。


そんなことを考えながらティッシュを丸めてるてる坊主の頭を作っていると、彼女が隣に椅子を寄せてきた。


「私もやるよ」


「……じゃあはいこれ」


「ティッシュ?しかも箱で持ってきてたの?」


「うん……前、風邪をひきかけた時に鼻水が止まらなくなってね。どうせ使うからと思って学校に予備でいくつか置いてたんだ」


「そうなんだ……」


二人で黙々とてるてる坊主を作っていると、この時期話すことと言えば明日の体育祭と受験のことくらいだった。


「そういえばさ、なんで大学行こうと思ったの?」


「え?最初はなんとなくこんな大人になりたいなーと思ってそこから逆算して何を勉強したらそうなれるのかを考えて行く大学を決めたの」


「そうなんだ。僕は、そこまで考えてなかったや」


「みんながみんな目的があって大学行くとは限らないからね。大学入ってから見つけるのもそれはそれでありだし」


「そっか……そう言う考えもあるのか」


「うん、人それぞれだよ」


そうこうしていると帰宅を促すチャイムが鳴り響いた。

窓から外を見てみると茜色から紫紺色へと空が変わっていくのが見える。どうやら雨は止んだらしい。


「帰ろうか」


「うん」


いくつか作ったてるてる坊主を、教室の窓際に吊るした。明日は晴れると良いな。

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