第16話 お酒
「じゃあ、今日の出会いを記念して、乾杯!」
幹事の男がそう言ってグラスを掲げた。
「ねぇ、ちょっと当たりじゃない?」
隣に座っていた莉子が耳元で囁いた。
みんな良さそうな人たちで良かった。
社会人だけあって、会話にそつがない。
みんなで自己紹介して、趣味の話を順番にしたりした。
幹事の人は、みんなを笑わせようと物まねまで披露してくれた。
「莉子ちゃん、飲んでないじゃん。」
莉子の隣に座った奴がしきりに莉子にお酒を勧めている。
「ごめんなさい、お酒弱いんで。わたしはこっちで。」
莉子は早々に烏龍茶に切り替えていた。
「優衣ちゃんは?飲んでる?」
「あ、はい。」
「お酒強そうだよね?」
「どうなんでしょう…わからないです。」
この人だけは、ちょっと嫌だな。
さっきから周りの子にお酒ばっか飲ませようとしている。
「ちょっと、失礼します。」
莉子を連れて化粧室に逃げる。
「ねぇ、先に帰らない?」
「うん、そうだよね。あの人嫌だ。」
莉子も同じように思っていたらしい。
「わたし親に迎えに来てもらうよ。」
「うん、そうしな。」
莉子が電話をかけ終わるのを待って、席に戻る。
「あ、帰って来た!」
隣の男が上機嫌に話しかけてくる。
「あの、私たち先に失礼します。」
「親が迎えに来てくれることになってるんで。」
莉子がすかさず言う。
「あーそうなんだ。じゃ、さ、最後にこれ、飲み切って帰りなよ。」
男がわたしの飲みかけのグラスを渡してくる。
そうだよね…
残り四分の一も満たない量を残すのも失礼かと思い、飲み干す。
莉子の友達に挨拶をしてから店を出ると、莉子とは大通りで別れ、わたしはバス停に向かって歩き始めた。
歩いていると、何だか足元がぐらぐらしてきた。
いつもより酔ってる?
でも、チューハイを2杯しか飲んでない。
これまでの経験だと、3、4杯飲んでも全然酔ったりなんかしなかった。
おかしい?
その時、LIMEのメッセージが届いた着信音が鳴った。
ぼんやりしながらスマホを取り出したけど、そのまま見ずに手に持った。
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