第33話 ご奉仕しよう!
戸川が告げる。
「前に佐藤さんからも訊かれていたことだけど、これから三組が行う奉仕活動の具体的な内容について、黒江様からの要望も考慮し、決定しました。それをこれから話そうと思います」
カラオケ店の大部屋。
ここならばファミレスのような周囲の客の視線も無く、また飲み物もあり、料金も安い。
これから三組が話し合いをするのにうってつけだと、ここが選ばれた。
戸川が一郎の方をちらりと見る。
それに対し、一郎は軽く頷くことで、話の続きを促した。
「いじめの解決です」
その瞬間、空気がピリつく。
この場に居るほとんどのものが、積極的にしろそうでないにしろ、つい最近まで黒江をいじめていたのだから、当然だ。
皆がどう答えたものかと戸惑う中、自身も大いにいじめに荷担していた渡辺が、その調子の良さを発揮する。
「いいんじゃね?」
「じゃあ活動内容は決定ね」
そう戸川がまとめるも、藤咲は我慢ならないのかこんなことを言い出す。
「……自分が黒江様をいじめていた過去を棚に上げて……いくらなんでも調子良過ぎだよ!」
意外なことに、これに対して遠藤が反論した。
「だからだよ」
「えっ」と、藤咲もそちらを振り向く。
「……ウチもいじめしてたし、今じゃバカなことしたって思ってる。だからいじめを止めたいし、バカなことした分、いいこともしたいって思ってる」
遠藤は自身の罪を認め、それを購う気でいた。
そして、渡辺もだ。
「……まあ、そんな感じ。奉仕活動すれば、少しは俺も許されるのかなってさ……」
そんな本心を聞いた藤咲は――。
「……そういうことなら。ごめん、私の配慮が足りなかった……」
重苦しくなった空気を変えるためだろう、桐田が本題へ戻す。
「でもこれ、意外と難しくないかな?いじめから誰かを助けるなら、まずはそれを見付けるところから始めなきゃならないよね?」
「確かに」という声が上がった。
実際、桐田の言う通りだ。
だからこそ、一郎は手を打っている。
「それなんだけど、僕らの学校には確認できる限り、他の学年にもいじめは無さそうだった」
皆がホッとした表情を見せる中、続けた。
「ただ地域の小学校、中学校、高校にも無いとは限らない。現に人を介して知り得た他校のメッセンジャーアプリ上のグループトーク内で、いじめが行われているのをこの目で確認したよ」
一際正義感の強い藤咲が言う。
「助けてあげよう!」
「もちろん。この決定を受けて、ようやく僕も動ける。深刻の度合いが高い子が近くの小学校に居るから、まずはコンタクトを取ってみるよ」
「うん!」と、力強く藤咲は頷いた。
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