第7話 祟り発生

「呪われているとしか思えない」

 そう一郎がネットに書き込んだその翌日。

 明確に教室の雰囲気が変わっていた。

 はっきりと黒江を恐れるような、怯えた色がクラスメイト達の目に見てとれる。

「まさか全部、黒江の祟りとか?」

 その書き込みがなされるところまで、一郎が想定した流れを綺麗になぞっていた。

 それにもし、誰もそれを書き込まなかったとしても、そのだめ押しは自分でやればいいと考えていだけのこと。

 その必要すら無かったが。

「黒江の祟り」という発言は普段からクラスメイト達の間で行われていたとはいえ、それにしても完璧な形で誘導できたものだと一郎はほくそ笑みたくなる。

 より腫れ物扱いは増し、黒江を必要以上に避け、言葉での攻撃も控えているようだった。

 不良の塚原も加藤も、カースト上位グループもだ。

 ストレスの捌け口として、いつものようにいじったり、罵詈雑言を掛けるようなことをしない。

 塚原と加藤に至っては、黒江を視界に捉えることすらも避けている。

 こういう者の方が、意外と信心深いのかもしれないなと、それが一郎はおかしかった。

 後ろの席の田中から声が掛かる。

「なあ、祟りってほんとにあるのかな?」

「……どうだろう。でも普通じゃないくらい最近運が悪くなった気がするよ。お前も昨日、現国でも数学でも英語でも先生に指されてたじゃん。かなり運悪くなってない?」

「……マジか。そう言われればそうかも……。俺は別に、他の奴ら程何かしたりはしてないけどなぁ」

「見て見ぬ振りもいじめってことなんだろ……。黒江的には」

「マジかぁ。じゃ積極的にやってる奴は、もっと酷いバチでも当たらないとおかしくないか?藤咲なんて捻挫したんだぞ?見て見ぬ振りだけなのに」

「……だから、積極的に関わった奴にはこれから凄いのが来るんじゃないか?」

「……確かに」

 こう考えるのは、何も田中だけではない。

 クラスメイト達の間でも自然と、そう語られ始めていた。

 何より心当たりのある者はその胸の内で、そういった考えが肥大化していくことは避けられないだろう。

 一週間、こんな状況は続いた。

 触らぬ神に祟り無し。

 黒江は見事、それを体現したのだ。


 ◇

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