地獄の小さな光の集まり

 高い高い建物の屋上から飛び降りようとしている女の子がいた。

 僕はその子を止めようとしている。


「ダメだよ、自殺なんか」

「うるさい、あなたに私の何がわかるというの!?」

「うん、ごめん、僕は君じゃないから君の苦しみはわからない、でも、読んでほしい本があるんだ、これを読んでも死にたければ、僕はもう君を止めない」


 僕は君に本を手渡す。

 それは『地獄の小さな光の集まり』という本だった。


 それは短編集で、そこにはたくさんの物語が入っている。

 どれも残酷な世界の物語だ。でも、そこには光がある。

 一つ一つは小さな光だけど、それらは集まって大きな光になっていた。


 読み終えると、彼女はこう言った。


「ああ、こんなに光が、たくさん……大きいね」

「うん、本当に……」

「私、この人たちみたいになれるかな?」

「なれるよ、きっと」

「私、もうちょっとだけ、頑張ってみる」

「うん、僕も頑張るよ」


 それから彼女は辛いことがあるたびにこの本を読んで、もう少しだけがんばろう、と言って、結局、彼女はずっと生き続けた。

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地獄の小さな光の集まり 桜森よなが @yoshinosomei

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