第17話 六人目は想定外?
必要になりそうな家具を吸収収納にしまった俺たちはさっそくもらった家に向かっていた。そして着いた場所に着くと、ギルドと同じくらい立派な建物があった。
「…スゴッ」
俺は思わずそんな感想が漏れた。街からは少し離れているけど、それを補って余りあるくらいの豪邸だった。期待を込めて中に入ると中もとても広かった。部屋数も20くらいあって、全員で使っても余るくらいだった。リビングも広々していて100人が集まっても大丈夫そうだった。…それにしても、埃一つ見当たらないな。ギルドの方で掃除してくれてたのかな?
それからそれぞれ個別で見て回っていたみんながリビングに集まった。
「すごいね!ボク、こんなに大きな家を見たことないよ!」
スラリンは興奮気味に話していた。飛び跳ねながら、小さな腕で大きく円を描くように回していた。それが微笑ましくてスラリンの頭を撫でると、他のみんなも同じようにやっていた。それを見た俺はみんなの頭も撫でてあげた。…アリスまで同じことをしていたのには驚いたけど、なるべく平等になるように同じように撫でてあげた。
「こほん。…それにしても、綺麗な部屋だったね。誰が掃除してくれてたのかな?」
「えっ?ゴーストたちでしょ?」
シンシアは俺と同じことが気になったみたいだった。しかし、アリスは分かっていたみたいだった。それにしても、まさかゴーストだったとは。…つまり日本風に言うと、これは事故物件ってやつか?
「ひっ!」
そのとき、俺の右腕に柔らかい感触があった。まさか、幽霊か!?そう思って横を見るとサクラが震えて抱きついていた。…そういえば、サクラはお化けとか苦手だったな。
「大丈夫だよ。俺が…俺たちがサクラを守るから」
「…いっちゃん。…うん!」
安心してほしくて俺はそう言った。それが正解だったのか、サクラはまだ少しぎこちなさがあったけど笑ってくれた。
「……うる、さい」
俺たちが話していると、そんな少女のような声が響いてきた。それに驚いたサクラは俺の腕を抱きしめる力を強めた。そして床から人が出てきた。
その人はアヤと同じか少し小さいくらいで、腰まで伸びた黒い髪。同じ真っ黒なモコモコしている服。なにより、首から下げられたドクロのネックレスが特徴的だった。
「君は?」
「…ネロ」
俺が聞くと素直に名前を教えてくれた。口数は少ないけど、悪い子じゃない、のかな?
「そっか。ネロちゃんはどうしてここにいるのかな?」
「…ここ、ネロたちの家」
「そうなの?じゃあ、出ていった方がいい?」
既に住人がいるなんて思わなかった。それなら、後から来た俺たちがいなくなるのが当然かなと思って聞くと、ネロちゃんは少し考えて首を振った。
「…いい。私たちが怖くない、なら」
そう言った彼女が指を振ると透明な人たちが現れた。彼らはネロちゃんを中心にするように円になって跪いた。
「あっ!君たちがアリスの言ってたゴーストさんたち?掃除してくれてありがとね」
その人たちにピンときた俺はそうお礼を言った。他のみんなも最初は少し怖がっていたけど、思い出したのか口々にお礼を伝えていた。
「…不思議な人たち。私、
「まぁ、俺はこの世界の人じゃないからな」
「…そう、なの?びっくり」
そう言った彼女の声は平坦で表情もあまり変わっていなかった。
「…って、イツキは異世界の人だったの!?」
俺がネロちゃんと話しているとそれを見守っていたメイベルが驚いた声を上げた。…そう言えば、メイベルとアリスにはちゃんと伝えてなかったな。アヤにも伝えた覚えはないし、スラリンも知らないんじゃないかな?…って!ほとんどの人が知らないんじゃん!
「ああ。じゃあ、せっかく落ち着けるんだし、俺のことも話しておくかな」
俺はそうみんなに席に着くように促した。しかし、持ってきた椅子は7つしかなかったので、俺が立って話だそうとすると、みんなが席を譲ると立ち上がった。それからなんとかみんなが納得する配置になった……けど、どうしてこうなったの!?
俺は今、椅子に座って、まだ少し怖いと言って椅子をくっつけてきたサクラの手を握っている。それだけなら問題はない。…いや、他の彼女が羨ましがるから、全く問題がないわけじゃないけど、後で同じようにやってあげれば大丈夫。
「…どう、したの?」
問題はネロちゃんだ。振り向いた彼女は俺と至近距離で見つめ合う形になっていて、少しでも動けば唇がくっつきそうなところにいる。
「…やっぱり、私は迷惑?」
そのまま見つめ合っていると、彼女は寂しそうにそう言った。
「いや、そんなんじゃないよ」
俺は膝の上に座っている彼女に微笑みかけた。多少は彼女の事情を聞いた俺は強く拒むことができなかった。…そう、俺とネロちゃんは一つの椅子を共有しているんだ。
〜数分前〜
「いやいや!女子の誰かが立ってるのに、座るわけにはいかないよ!」
俺は強くそう言ったけど、聞き入れてはくれなかった。
「…イツキが私とみんなを会わせてくれたんだもん!この中心はイツキ、なんだよ?」
アヤの言葉にみんなが頷いているけど、俺はそんな風に思えなかった。俺はみんなの思いを受け入れているだけなんだ。俺から彼女たちにしてあげられたことなんて、何一つないのに…。
「私は、ドラゴンだから、椅子なんてなくても平気だよ」
「ボクもスライムだし、ボクが椅子になろうか?」
従魔の二人もそう言ってくれた。それでも、俺の代わりに誰かが我慢することになるのはイヤだった。
「…やっぱり、俺が立っていたい。これは俺の我儘だけど、聞いてくれるとありがたい」
「…いっちゃんがそう言うなら」
「…座って」
みんなが納得しかけたところで、ネロちゃんが俺に座るように促した。その、反論は許さないという姿勢に俺は素直に従った。
「これで、完璧」
そうしてネロちゃんは俺の膝の上に乗っかった。俺が驚いて固まっていると、ネロちゃんは「…あたた、かい」と呟いていた。それを聞いた俺は、彼女にどうしたのかを聞いた。
「…ネクロマンサーは、呪われた職業。…みんな、私の側、離れた。でも、あなたは違った。…だから、嬉しい」
「…そっか」
彼女は口数が少ないと思っていた。それでも、たどたどしく伝えられたその言葉は一途だった。きっと彼女は言葉が必要なかったんだ。それなら、俺は受け入れてあげたいと思った。人…生者の温もりに飢えている彼女に、少しでも温もりを分けてあげたいと思った。
「…ねぇ、ネロちゃんも俺の彼女になってくれませんか?」
気がついたら俺はそう言っていた。それはきっと、俺の彼女たちがくれた勇気なんだろう。前までの俺だったら、きっとこんなことを言えなかった。いい影響を受けてるんだな。
「…ほんと?いい、の?呪われた私でも」
「うん。ネロちゃ…ネロがいいんだ。ネクロマンサーだとかは関係ないよ。それがネロちゃんなんだから、俺は受け入れるよ」
それからネロはぎゅっと抱きついてきた。もう離さない、というように強く、強く抱擁していた。
「…ね、ねぇ、いっちゃん。私、まだ少し怖いから、手、握ってて」
そうしていると、横からサクラが話しかけてきた。俺が差し出された手を握ってあげると、ネロも恥ずかしくなったのか抱き合っていた体を回転させて、下を向いていた。
…そんな微笑ましい中で、複雑な心境の人が一人いたことに、俺は気付かなかった。
「…アリス」
心配そうに呟いたメイベルの声は、誰にも届かなかった。
ーーーーー後書き(のようなもの)ーーーーー
皆さんこんにちは!作者の零です。気付いた人はいらっしゃいますか?なんと……第6話に初めてのコメントを頂けました!!やったね♪
以上!後書き(のようなもの)でした。これからも応援よろしくお願いします
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