第176話 事件の発覚
ゴールデンウィークの隙間の平日。
昨日まで三連休、今日から三日登校すればまた四連休ってなんともリズムがおかしい週。
5月の4連休は最初の三日は近隣の競合校との合同練習。最終日以外バスケ漬けの大型連休。
昨日望を北翔のテニス部の練習参加するって聞いてここまで送ったんだけど…気づいたら帰ってて。ロイン送ったらなんかあったのか元気無かった。
承のロインには練習参加で何かあって?兄ちゃんとラケットに誓った事が守れなかったって凹んでて他にもなんかトラブルあったらしい。
…トラブルね。ちょっと何があったか想像つかないけど。
さてゴールデンウィークの中の平日って事もあって皆んな落ち着きが無く騒がしい。
うちの1組も例外では無く、浮ついたようなざわざわした感じが強い。
休み時間はいつもの倍騒がしいな?って思いながら浩と昼ごはんを食べてまったりしている頃、事件が起こった。田中くんは用事があるって言ってた。
休み時間にもなれば人が出入りする。
当然他クラスの人も多く出入りするわけで、見慣れ無い人が出入りしてるなんて当たり前のことでなんら引っかかる事なんて無い…。
ただそいつは俺にとって引っかかる相手で…。
九頭だった。
九頭達雄。去年の文化祭でゆかりさんと結ばれた男。
文化祭後伝えたい事があるって別れたゆかりさんは一週間後会うとその男の彼女になっていた。
…しかもラブホ出入り写真撮られてふたりして停学になってた。
ゆかりさんって彼女居ながらも永瀬さんによく言い寄っていた男。
その男が久しぶりに俺の前に現れた。
二年生になってから初めて見る。
もちろん俺に用があるわけじゃ無い。
九頭『永瀬さん!聞いて!俺今すごいピンチで!』
九頭の必死な形相に何事か?と視線が集まる。
永瀬さんは薄く笑顔を作りながらもいつもと違う壁を感じる声色で、
永瀬『…生徒会はトラブルがあればただ生徒の味方をするわけじゃ無いんだよ?事情があれば、情状酌量の余地があれば学校とも交渉するけど…。』
九頭が永瀬さんに近づく、二宮さんが睨みながら立ち塞がるし、高橋さんも白い顔で永瀬さんを庇う。
九頭『あの中学生が!貧乳のガキが靴べらみたいなんで!殴りかかってきて!』
(望だー!!)
すぐにわかるんだね。身内の犯行としか思えない…!
他人事じゃないぞ!まして永瀬さんに圧力かけようとしているのか?
俺は後ろから九頭を押さえて、
『…女の子が怯えてる。』
そう伝えるも、
九頭『このままじゃ!俺!テニス部クビになっちゃう!
場合によってはそれ以上のペナルティが…!』
俺に余裕こいて説教してきた頃と比べられないほど余裕が無い。
…こんな人前でトラブルの話ししたら大事になるんじゃ無いか?そんな判断もできないほど焦っているのを感じる。多分先制したのは望だ!それがバレるのもまずい!
九頭『とにかく!俺は悪く無い!
あの女子中学生が襲って来て!俺悪く無いんだ!信じて永瀬さん!』
永瀬さんは表情を変えずに薄い笑顔で、
永瀬『うん、それなら事情聴取でそう言えば良いんじゃない?』
九頭『それじゃダメなんだ!その時点でなんらしかペナルティがある!
俺、去年ギリギリ進級でこのままじゃ…!永瀬さん!お願い!』
思い詰める九頭、俺が押さえてるけど永瀬さんに突進して行きそう。
永瀬『生徒会はそういった自分の保身の為に動く組織じゃ無いんだよ。
まして親交があるから何とかしてってこと?そんな事出来るわけ無いでしょ?』
いつもの人当たりの良さ、明るさを飲み込んだ冷静で落ち着いた永瀬さんの声と表情に凍りつく九頭。
九頭『…せめて、公平に…。
目撃者とか?証拠とか証言を揃えてから事情聴取してほしい…冤罪着せられてまた停学とかなったらたまらない…。』
顔真っ白にして乾いた声で九頭は呟く。
でもさ証拠や証言は裁判では必要だけど…事情聴取は早くするべきじゃ無い?
昨日してるのかな?本人から話くらいは聞いてるだろうけど。
教室内は静か。クラスの半分ほど15、6人は居るはずなのに静かな室内。
昼休みのガヤガヤあいた喧騒が随分遠くに聞こえる…。
小佐田『証拠や証言があれば良いワケ?』
静かな室内に響く声。
小佐田さんが立ち上がって九頭に近づく。
…後に田中くん?
小佐田『昨日の件でしょ?
部活の練習参加に来た女子中学生に九頭くんが掴み掛かったって案件。』
ざわ!
今までのぼかしてた部分が小佐田さんの発言で教室内の生徒に知れ渡る!
知っていた生徒も居たようだが俺を含め知らない生徒の方が多い!
それをバラされて九頭はまずいって顔!
九頭の立場では大事にしないで生徒会役員の永瀬さんに話し通して味方になって貰うのが1番良い展開だったのが…
永瀬さんの拒絶で注目を浴びてしまい、小佐田さんの説明的発言で事件を周知させてしまった…。
なにかトラブルがあり、九頭が女子中学生に掴みかかった。
昨日のこのトラブルで九頭は部活クビになりそう。
しかもそれだけで無く学校としてもペナルティが与えられるかもしれない。
それを阻止する為生徒会の助力が欲しい、その為親交のある永瀬さんを頼ってきたってとこなのかな?
小佐田さんは九頭を冷たく睨みながら、
小佐田『昨日の部活出てた人を探してその時間帯居た人に当たってみたんだけど…田中くん。』
田中『…ここに。』
田中くんの再生したノーパソの映像には…。
女子『…うん、この子落ち込んだ表情で歩いてた。悲鳴が聞こえて駆けつけたらこの男に腕掴まれてて…。』
男子『女の子の悲鳴が聞こえて駆けつけたらこの男が女の子の太ももに手を伸ばしてた!』
女子『うん、太ももに凶器とか言うから女の子に断ってボディチェックさせて貰ったけど何も無かったよ。間違いないよ。』
女子『うん、この男子だね。
この男子が女子中学生にお尻を見ろとか太もも凶器とか言ってて怖かった。
うん、証言できます。』
昨日の事件を目撃したであろう人物が証言する動画がばっちり証拠として残されていた。
もちろん昨日も事情聴取あったんだろうけど多分本人だけか、その場で軽く口頭で聞いただけのはずなのでこれは証拠になるんじゃ無いか?って思った。
印象がぼける前に、忘れる前に集めたのがわかる。
九頭は真っ青になって口をぱくぱくさせていた。
小佐田『永瀬さん、これ生徒会に提出するわね。
他にもあるんだけど見て貰っていい?』
永瀬さんはにっこり笑って、
永瀬『うん小佐田さん、見るよ?
ううん、見せて?』
小佐田さんと永瀬さんは綺麗な笑顔で言葉を交わすけど…視線は九頭を見ていて、九頭は真っ青通り越して紫になっていた。
…田中くんはドヤ顔でこっち見んな…。
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