第175話 懺悔【side立花望】

くず『こいつが!先に襲ってきて!

…太もも!…凶器!お尻見て!』


くずが男子生徒に囲まれ、私を守るように女子生徒たちが囲んでくれた。


女子『こんな可愛い中学生になに言ってるの?』

女子2『太ももが凶器って(笑)』

女子3『やだ!でも脚綺麗!』

男子『お尻見てって…上級の変態…!』


お姉さんたちが私を囲んでキャッキャしながら、私にお菓子くれて撫でてくれる…。

お菓子はむはむしながら見てると、


さらさらの『痴漢ですわー!』で集まった先輩方は

くずが落ち込んでる女子中学生に掴みかかっているところから目撃しているわけで。

私は落ち込んでしょんぼりしながら歩いているとこしか見られていないので完全にくずが女子中学生に掴みかかったって話し。

まあ腕掴まれてて屑龍閃ぶち込んだのは間違い無い…。

どうしたものか?



→本当の事を告げる

 黙っている。

 



…いやいや。



 本当の事を告げる

 黙っている。

→被害者ムーブ




『…なんとも無かったですけど…高校生の男の人に急に掴みかかられて…

怖かったです…。』


やっぱりテンションが上がらなくって私はしょんぼりしながらコメントした。

…流石に屑龍閃はまずい。



『そうだよね、怖かったよね?』

『なんでこんな事を!』


くずは連行されて行き、テニス部のコーチが呼ばれて慌てて走ってきて、事情を聞かれた。

あるがまま、最初屋内練習場に向かう途中でナンパみたいのされて腕掴まれたから慌てて振り解いて逃げたけど帰りに見つかって掴みかかられたって。


沙羅『お尻が!とか太ももが凶器とか言ってましたわ!

あの変態!こんな学校止めた方がよろしいんじゃなくて?』


さらさらもあたし見ながら証言してた。

うっさいなあ。あたしはここが良いんだよ。


コーチはトラブルを謝罪してくれて、さっきの男子生徒にはそれなりのペナルティがあること、後日改めてお詫びに行く事を私に約束して家まで送るって言ってくれた。

…お言葉に甘えようかな?

テンションダダ下がりで何もかも億劫でもう帰りたい…。



沙羅『…立花さん、また会いましょう?』


『…うん。』


さらさらはなんか話したいらしいけどあたしの負けだもん。

敗者が言う事なんて無いよ。さらさらとバイバイしコーチの自家用車で家付近まで送ってもらう。


コーチはトラブルを詫びつつ、今日の練習の話しや育成の方針、これからの北翔の話しをしてくれた。20代後半なのかな?綺麗な大人のお姉さんでテニスに熱い。

あたしは相槌を打ちながら新川中前まで送ってもらった。

コーチは再度トラブルを詫びながら、


コーチ『…どんな形であれ立花さんがうちに来てくれたら嬉しいわ。』


(特待生じゃ無きゃ行ける訳ないでしょ。)


そう思いながら送ってくれてありがとうございます。って頭を下げた。

祝日午後…中学校には誰も居ない。

あたしは行きは感じなかった荷物の重さを感じながら家路につく…。

ロインには宏介くんからもう練習終わった?って来てたから、


『コーチに車で中学校まで送って貰ったよ。

あたし今、宏介くんの家の前に居るの!』

※宏介の家は新川中の真ん前。


って送ると、


宏介『メリーさんかよ!お疲れ様。

ゆっくり休みなよ?』


って返事来た。

いつもならロイン何往復もするんだけど今日はこの一往復でおしまいにしたんだ。



☆ ☆ ☆

家に帰って祖父祖母に帰宅を告げて部屋に戻る。

ひーちゃんが出迎えてくれる。


ひー『ねえちゃん!おかえりー?

…どうしたの?やなやついたの?』


笑顔で抱きついた弟のひーちゃんがあたしの顔見てもう一度抱きついた。

あたしはひーちゃんを抱きしめて、


『やなやつは姉ちゃんだよ。』


ひー『そんなことないもん!ねえちゃんはやさしくてげんきでかぞくおもいのいいおねえちゃんだもーん!』


ひーちゃん…あたしはひーちゃんをキュって抱きしめて。布団で横になる。

いつも暑いよ!苦しいよ!って文句言うひーちゃんが今日はなすがままで…。



ちゅっちゅ!ちゅっちゅっちゅ!

キツツキみたいにひーちゃんをチュウしまくった。

ひーちゃんは無の表情でなすがままあたしのキツツキキッスを受け入れていた。

ちなみに兄ちゃんはバイトで家に居なかった。


夕飯食べて、食卓で少し北翔の話をしてあっという間に夜になる。

お風呂に入ってテレビ見て部屋でゴロゴロ…ゴロゴロ。

ひーちゃんは父さんに抱っこされてるうちに寝ちゃってた。


ちょっと早いんだけど、21時にベッドに入って…眠れない…。

22時頃、兄ちゃんが帰って来た。

共有の部屋で電気も点けずに兄ちゃんは部屋に入ってくる。


『…おかえり。』


承『わ!寝てるのかと思った!

疲れてもう寝てたんだろ?起こしちゃったか?ごめんな。』


暗闇の中、兄ちゃんの優しい声がする。


承『カレー食うか?兄ちゃん風呂入ってくるわ。』


食欲なんて無いよ…しかし…カレーの匂いが…!

一度は寝ようと決めたのに私はのそのそ起き上がって、カレーをチンして食べようと思い一階の台所へ向かう。

台所でゆっくり温めてのそのそと食べていると兄ちゃんは速攻でお風呂上がってジャージ姿で出て来た。

ちなみに兄ちゃんのジャージもadiósアディオス


兄ちゃんはゆっくりカレー食べるあたしの向かいに座り、


承『この時間に食べると太るぞ?』


は?食べなって言ったの兄ちゃんじゃん!

横にあったおしぼりを投げつけたよ!


兄ちゃんは笑いながら、


承『カレーの誘惑は抗えないだろ。』


『わかりみ。』


兄ちゃんが促すからあたしはゆっくり今日北翔高校の練習参加の話をする。

張り切って率先して練習参加したよ。動き良い娘が居た。ランチ美味しかったこと。午後試合あって1勝1敗だったこと。

…コーチが新川中まで送ってくれたこと。


承『…そっか。』


話し終わる頃にはカレーを食べ終わってて兄ちゃんは頬杖つきながらうんうん聞いてくれた。

2人で並んで歯磨きして、部屋に戻る。


おやすみを言って電気消してベッドに入るけど…。

あたしは…まだ言って無いことがあって…。

暗闇の中向こうのベッドから兄ちゃん声がする。


承『で?なんかあったんだろ?

何が言いにくくて表情曇ってんの?』


『…わかるの?』


承『顔見ればわかるし、宏介もロインで望が元気無いから帰ったら話し聞いて?って来たし。』


宏介くんが?あの短いロインで気付かれたのか?あたしは少し驚きつつには見抜かれた事を悔しくも嬉しかったんだよね。


あたしは立ち上がり暗い室内を歩いて兄ちゃんの布団にしゅるりと入る。


承『…狭い。』


『…今日ここで寝る。

ね、兄ちゃん。』


あたしは今日の出来事をさっき話さなかった事を語り始める。

くずに声かけられて無視したら腕掴まれたこと。

望の腕掴んだんか!兄ちゃんはキレてた。ふふシスコンめ。

…それに『屑龍閃』をぶち込んだこと、お尻も強打したって。


承『…ちょっと何言ってるかわからない。』


兄ちゃん呆れてる。


そいつが男子テニス部だったらしくて練習参加時に近くに居て誤魔化す為に笑顔120パーの顔で偽装しつつ胸パッドを入れて変装した。

そんで…午後練習試合そのままやって…勝負所で胸パッド外して表情も戻して…でも負けた。

兄ちゃんに買って貰ったラケットに誓ったのに…あたし…


『…ごめんなさい兄ちゃん…あたし、慢心してハンデ付けて負けて…

トラブル起こして、人ぶっ叩いて…。

兄ちゃんの言う通りあたしは猛獣でまだクソガキのままなんだ…。』


あの日、誓ったのに…。

委恋256話 兄とクレープとラケットと 参照

https://kakuyomu.jp/works/16817330656200078233/episodes/16817330668762160377


兄ちゃんは黙って聞いてくれた。


『いつも、いつまでもテニスに対して真っ直ぐ向き合い続けること!

あたしはあの日そう誓ったのに…。』


あたしは自分の油断、慢心を兄ちゃんに自己申告する。

兄ちゃんはそれを黙って聞いててくれて…最後に。


承『自分に誓った事は自分が1番覚えているだろ。

前に友達とそんな話しをしたけどさ。

自分に恥じる真似はしたく無いよな。』


兄ちゃんがまたあたしの頭をくしゃくしゃに撫で回す。

その手が大きくて優しくて安心しちゃう。


承『でもな?そもそも何故スラッパーを今日持って行った?

何故それを振り抜いた?おい!望?聞いてるんか?

…もう、しょうがない奴だなぁ。』


撫でながら説教始める兄ちゃんには悪いけど大きな手で撫でられながらあたしはすっかりうとうとし始める…。

安心したのかな?今日は緊張してたのかな?

あたしは結局そのまま兄ちゃんのベッドで寝ちゃったんだよね。

ごめんね、お兄ちゃん。

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