第174話 慢心と自爆【side立花望】

食堂でランチを食べたあたしたち。

チキン主体で野菜多くてボリュームもあってあたしは美味しいって思った。

…デザートが欲しい。


お嬢様『ふう、まあこんなものですわね?期待しなかった通りですわ?』


…いちいちカンにさわる…!

食後、試合を組まれる私たち。1人2試合ヤレるんだって!


1試合目に早速あのお嬢様…!

コーチわかってんじゃん?

午後の部が始まる、



お嬢様『…更科 沙羅サラシナ サラですわ?』


『…立花望。

その可愛い顔吹っ飛ばしてやるw』


沙羅『その張り付いたような笑顔ひっぺがしてやりますわ?』


さらさらは真面目な顔であたしの笑顔が気に入らないと煽ってくる。


『好きでやってんじゃないやい。』


沙羅『は?』


試合が始まる!

女子では1番動きが良いと思ったのは間違いじゃなくて。

このさらさらバランス良く強い!

特にパワーがある!


最近スピードと技術に力入れてたけど…やっぱ!力こそパワー!

素直で真っ直ぐで強いさらさらに真っ向勝負で戦いつつ段々と私のペースに持ち込もう!


しかしさらさらも中々のもので今回は6ゲームの1セットマッチ。だから6ゲーム先取した方が勝ちなんだけど5-5の白熱した試合展開。1セットだから2ゲーム差つけなきゃセット取れないとか無しのシンプルルール。



トルネードアクセルとか使って反則取られたら特待生レースの不利になっちゃうから…ここは正攻法しか無いよね。

しっかしやりにくい、さらさら強いな?

ランチ時他の子に聞いたけど隣県のトップクラス選手らしい。

去年の地方大会では当たらなかったな。知らなんだ。


30ー30もう2ポイントで勝負が決する。

デュースは一回ってルール。

そこであたしは思い出す!


『タイム!』



そっかあ。この笑顔120パーと胸パッドがやりにくい原因か!

あたしはコッソリそれを外す。

他の子のにバレないよう…こっそり。

そして貼り付けた笑みを止めていつもの表情!試合で昂るニヤッとした自然な笑顔!



そして試合再開!


さっきから打ちにくかったギリギリを攻めて試合はあたしの負け!

…感覚がアジャスト出来なかったんだね…。

悔しい。本当に悔しい。

相手を舐めてハンデ与えて負けるってマヌケ野郎じゃん。

恥ずかしくて死にそう。

…手を抜いて負けたダサさ。兄ちゃんに合わせる顔が無い。



コーチ『ゲームセット マッチウォンバイ更科。』


握手して足早く立ち去る…!


半泣きになりながら次の試合に備えてラケットを確認してガットを整え、心を鎮める…。

鎮められないよ!

兄ちゃんが買ってくれたラケットを、ウイルソンちゃんを汚す様な試合を、兄ちゃんに誓った事を自分で汚した…。

負けるのは仕方ない、勝ち負けは運も絡むよ。

でも自分で縛って負けるなんて…

あんなに兄ちゃんが苦労したバイト代で買ってくれたこのウイルソンちゃん恥いるようなたわけた負け方を。


『…ごめんねウイルソンちゃん…ごめんなさい兄ちゃん…。』


あたしはウイルソンちゃんを抱きしめて泣いた…。

ベストを尽くす!それだけ考えて2試合目に照準を合わせた。


2試合目の子はさらさらより二段は落ちる選手でしっかり集中してばっちり勝った。…1試合目から出来なきゃ意味無いよ…。

あたしは反省と後悔にどんよりしながらコーチの総括を聞き解散の号令を聞き、失意のまま着替えへ向かう。


テニス部の練習場を出て、更衣室へ向かう途中。


沙羅『…立花さん?お時間ある?』


『…無い、またね。』


横を通り抜けて更衣室へ向かおうとするあたしの腕を掴む…掴むなよ!

一瞬でキレそうになって、スラッパーちゃんを抜こうと!

…あたし最低だ…負けた腹いせに…暴力を振ろうと…。


取り出したスラッパーちゃんをスポーツバックの隠しポケット(底の厚くなってる部分に挟み込む)にくるりんと回して収納して、反省しながら更衣室へ向かった。


あたしの慢心。最近香椎先輩が忙しくってテニスでボコられ無くなってあたしは慢心してた。


香椎『望ちゃん?望ちゃんの為でもあるんだよ?』


あんな可愛い顔して強く早くエゲツないコースを打ち分ける先輩にボコられ続けてて自信過剰になる暇が無かった。

それが先輩が忙しくて来れない短期間で随分滑稽な…。

多少大会で結果出して?特待生の話し来て?それに釣られて?

それで笑顔縛りで胸パッドしたまま試合して?負けそうになって外してまた感覚狂って自爆ってw


沙羅『…!』


さらさらうるさい。

横でずっと絡んでくるさらさらを無視してあたしは仏頂面で更衣室を出てターミナル駅へ向かう。

もうここに用は無い。

夏の大会の結果次第でしょ?

北翔へ特待生は未練あるけどあの醜態だもん、オファー切られても文句言えないよ。


あたしは足早に校内を歩く!

今は宏介くんにも会いたくない…!家帰って!ひーちゃん抱きしめて布団に引きこもりたい!

それでもさらさらは追ってくる!うっさいなあ!

そろそろいい加減苛立ってきたよ!って時に、







くず『あ!お前さっきのJC!

さっきはよくも!めっちゃ痛かったし!お尻なんて!跡が!』



さっきの変態?

さっきの変態は激昂しててあたしの腕を掴んで、


くず『マジで!何すんだよ!

お尻どうしてくれんだよぉ!』



変態さんがヒートアップしてる…もう1発ブチ込むか?

ハイソックスのスラッパーちゃんに手を伸ばしかける…!

それを阻止しようとくずはあたしの手を抑えようとするけど…?

ない?!そっか、さっき収納しちゃった?

やべどうしよ?








沙羅『キャーーーーーーーーーーーーーー?!

痴漢!痴漢!痴漢ですわー!!女子中学生を襲う毒牙ですわー!!』



さっきから付きまとう更科沙羅の悲鳴がこだまする!



一瞬で周りに人だかりが出来てた?!


くず『ち、ちが!違うんだ!

この女子中学生が!』


男子『まずその娘の手を離せ?九頭?』

女子『女子のスカートに手を伸ばしてました!』


瞬く間に拘束されるくず。


女子『…うん、この子落ち込んだ表情で歩いてた。悲鳴が聞こえて駆けつけたらこの男に腕掴まれてて…。』

男子『女の子の悲鳴が聞こえて駆けつけたらこの男が女の子の太ももに手を伸ばしてた!』


くず『こいつ!太ももに凶器を!』


拘束されても抵抗はしなかったくずがあたしが凶器所持してる!って申告する!

…でも今は無いんだよね?


女子『失礼?ごめんね?』


お姉さんは一応ボディチェックさせて欲しいって言うからさせてあげた。

だって何も持って無いし?


くず『え?!馬鹿な?!』



…前にお兄ちゃんが言ってたっけ?


承『馬鹿な!って言う悪役は大体もう退場するもんなんだよ(笑)』


え?やば?どうなっちゃうの?

これトラブルかな?

あたし悪く無いよね?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る