第171話 守りたい。

『…それで負けちゃったんですよ。』


愛莉『圧倒的な身体能力ね…しっかり40分の試合だったら宏介くんの勝ちだったったんじゃない?』


『…そうなんですけどね、やっぱ悔しい。』


愛莉『3on3はまた少し勝手が違うからね?』


部活のメニューを終えてコーチも退出して居残り練習の合間に俺は愛莉先輩と話し込んでいた。

春休みに同窓会の3on3で承のチームに負けた話しをうんうん聞いて分析してくれる愛莉先輩。噂の事気にしているんだろうけど…バスケ部は愛莉先輩を全力擁護、噂は否定と姿勢を打ち出している。

部活中は夢中になって忘れちゃうほどバスケの事だけ考えて貰うし、俺たちの気合いと熱でマネージャー業した甲斐ある!って思ってもらえるほど頑張るのが1番愛莉先輩のためになるだろうって。


愛莉『そう言えばGWの強豪校との三連続合同練習楽しみだね?』


『…絶対きっついじゃないですか…!』


同じ市内の高校2校と日替わりでそれぞれの学校に出向いて合同練習して最後に試合をする、3日間とも総当たりで順位付けるって。

近場なので合宿じゃ無いけども練習キツそう。


愛莉先輩は嬉しそうに笑って、


愛莉『やっぱり試合は燃えるね?いよいよ今年の夏で引退だから?

集大成になる今年は特別よね。』


『…そうですね。』


キャプテンや愛莉先輩たちが引退…ちょっと想像が付かないけど…。

明日から祭日を含む連休も部活で、3日間平日登校するとGWに入る。


愛莉『楽しみだなぁ、合同練習。色々あったから夢中でバスケの事だけ考えて居たいな。』


『…絶対に愛莉先輩の為に勝ちます。』


愛莉先輩の頑張りに勝利って明確な形で結果出したい。

真面目な顔で言うと愛莉先輩は一瞬ポカンとした表情をしたあと俯いた。

顔上げると真っ赤になってて、


愛莉『もー!』


ぽか!ぽか!


愛莉先輩が目を(> <)みたいにして肩をぽかぽか叩いてくる仕草が可愛くて俺は微笑んでしまう。

そんな夕方の体育館に響き渡る声。





??『愛莉ー!愛莉!

聞いたぞ!お前ら!何やってんだよ!愛莉が苦しい時に守れないなら側にいる意味無いだろ!!』



…うんお久しぶりっす差堀先輩。

差堀先輩は普段着って感じのラフなカジュアルな格好で体育館へ入って来た…。

あんたもう卒業したでしょ?


差堀のくせに…そうは思いつつも「苦しい時に守れない」って言葉は突き刺さる。



差堀『俺が居れば!そんな思いはさせなかった!

また側に居るから!』


差堀は芝居がかかった仕草で大袈裟に嘆きながら愛莉先輩に近づく。

愛莉先輩は怯えるように俺の陰に隠れる。


愛莉『先輩、もう付き纏わないでください。』


え?付き纏ってるの?


差堀『愛莉!俺はまだお前を愛してるんだ!

だから家に訪ねただけ!あのお手伝いさんにもう少し言って!』


愛莉先輩の家のお手伝いさんは昔から天堂家でバイトしてる大学生のお姉さんで愛莉先輩を妹のように可愛がっていて差堀先輩を目の敵にしているらしい。


差堀『いつも竹箒振り回して追いかけたり、冬なのに水ぶっかけたり、汚れた雑巾投げ付けられたり!それで全部、

「掃除途中に話しかけられて手元が狂っただけですわ。」とか言うんだぜ?』


愛莉『自業自得です!』


俺の陰から愛莉先輩は大声で言う。


熊田『誰っすか?おじさん?』

鷲尾『部外者立ち入り禁止でしょ?』


新入部員の熊田の大きさにビビりつつ差堀は、



差堀『聞いて無いか?ここのエース差堀とは俺のこと!』


胸を張って名乗る差堀に一年は、



熊田『あ、見かけたら駆除ってキャプテンが言ってた!』

鷲尾『尊敬すべき伝説のOBがこんなとこにいる訳ない。』


差堀『俺伝説になってる?』

満更でもない差堀に、


鷲尾『ダメ男って聞いてます。』


差堀『伊達男!』


コントみたいなやり取りをしつつ一年は差堀を取り囲む。

俺は違和感があってさっきからずっと言いたかった事を聞いてみる…。


『先輩、太りました?』


差堀『うう?!』


バスケ部はハード。例えサボリがちでも運動量は相当。

引退後ガタイ良くなったなぁとは思って居た。けど…先月の追い出しの頃見た時より顔の輪郭が二回り広い気がする…。

結構ハッキリしたパーツのイケメンだったのに…顔のパーツが全部中央に寄った印象を受ける…。



差堀『お前デリカシー無いやつだな?!そうゆう事言うか?』


差堀はキレながら俺たちに文句言うけど。


愛莉『先輩だって!以前!私が!2キロ!太ったって!言ったら!しばらくいじったでしょー!!』


愛莉先輩がキレた!!


真っ赤になったまま、


愛莉『もう戻ったもん!見ないで!』


全然太ったなんて思ってないし。

…本当女性に体重の話って鬼門だよね…。


キャプテンが居れば…。

いやキャプテンならこう言うだろう、

俺こういう事言うキャラじゃ無いんだけどね。

後ろに愛莉先輩を庇ったまま、


『差堀先輩、愛莉先輩は俺(達)が絶対に守ります。

もう先輩の出る幕じゃないです。』

※愛莉には『俺が守る!』って聞こえました。


差堀先輩はポカンと、愛莉先輩までポカンとしてなんか微妙な空気感…!

でも、みんなが続いてくれて、


『『『そうだそうだ!出てけー!』』』


皆んなで差堀を追い出した!

放っておくと愛莉先輩に付き纏った挙句永瀬さんまで口説いて帰るからね?


『よく顔出せるよね。』

『誰が教えたんだ!』

『丸顔になってた!』

『勉強してないだろ!絶対!』


みんなが差堀を追い出した事でわいわいしていたけれども、

差堀の言葉、


愛莉が苦しい時に守れないなら側にいる意味無いだろ!


って言葉だけ苦く胸に突き刺さる…!

俺、絶対になんとかしなくちゃいけない!

…俺、愛莉先輩守りたい。


それにはどうすれば良い?解決するには?

…1人だけ当てがあるので連休後に訪ねる事にしたんだ。

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