第170話 小佐田さんのとりなし

逃げ損ねたこの女の子をどうすべきか考える…。

怪しさ爆発なのだが…でも?なんか底が浅いって言うか?

悪い奴じゃ無さそうな気配はある…。

まあこの短時間のやり取りだけだから確信ではないけど。



『なんで俺を訪ねてきた?理由は?

手紙のことなんか知ってるのか?』


女の子涙目でプルプル首を振るばかり。

…なんか罪悪感あるなぁ…。

本当に知らないのか?


俺は少し考え込む。

…そもそもあんな目立つ時間に接触してくるか?

手紙って言った時もパワーワードとか知ってる!ってより好奇心の反応だったし…?

この時期の一年生が流す噂が広まる?一年生限定ならあるかもだけど…?

ちょっと熱くなりすぎたか…。

それでも手下とか下っ端とかの可能性も拭えない…。

一応聞いておく。怒らず、穏やかに。



『…ひょっとして手紙の件なにも知らないの?』


日奈子『…はい。なんのことでしょう?』


ふうぅ。ため息しか出ない…向こうから接触来た!

なにかヒントが?!って気負った自分が恥ずかしい…!


『…なんで?俺訪ねてきたの?』


鳳日奈子だっけ?彼女は申し訳無さそうに、


日奈子『…宏介くん先輩は去年…立て続けに2件も女性関連で酷い目に遭ったと聞きまシタ。

なんか不審なことは?』

※ド直球。


『…不審しか無いわ。まじなんなの?』


日奈子『おう、ジャパニーズNTR…!』


リアリー?とか呟く初対面の後輩女子から傷口がエグられる…!

最近ようやく思い出さなくなってきたのに…無神経な女の子だな…。



気まずい沈黙が空き教室を支配する。

やっと気づいたのか鳳さんはあちゃあって顔で何か言いかけるとコンコン!って空の室内にノックの音が響いてガラガラって扉を開ける音がする。



入って来たのは小佐田さん…。


昼休みのガヤガヤって音が遠くに聞こえる。


小佐田さんは呆れた顔で、


小佐田『…鳳?

斉藤くんごめん、こいつ私らの後輩で?

てんで空気読めないタイプなのよ。…帰国子女らしいんだけど…。』


日奈子『…オー…ヤクザガール。』


『小佐田さんの事ヤクザガールって呼んでるけど…?』


あん?って小佐田さんが睨むと鳳さんは静かに動かなくなる。


小佐田『…この調子なの。

デリカシー無いし、常識無いし、悪い娘じゃ無いけど失礼無礼の変な娘なんだけどね?友だちが可愛がってるから…。ほら!謝って!』


日奈子『…ごめんなサイ…失礼でした…。』


鳳さんは小佐田さんに詰められて涙目になっていた…。

俺に鳳さんが聞いてきた事確認してダメ出しを始める。

先輩に対して、初対面で、聞く内容、話し方どれも淡々と詰められてた。

もう鳳さん怒られたから詰めなくて良いや。

俺も少しだけ、


『…目立つような事止めてね?何か用あれば放課後とか部活終わりとか呼んで?』


日奈子『…はい失礼しました。良かったら日奈子って呼んでください。

ヤクザガール先輩も?』


小佐田『なめてんのか。こいつ軍師がどうのとか言って無かった?』


言ってた!すると鳳さんは、


日奈子『…そう!好きな軍師だれでスカ?』


『…賈詡とか陳宮?』


日奈子『地味!』


失礼だな、俺は鳳さんとしばしディスカッションを行った…!


日奈子『ふふふ!まあ私は?姓は鳳、名は日奈子とまさに!

鳳雛こと!龐統の生まれ変わりみたいなものです!』


☆ ☆ ☆


日奈子『また!遊びに来まスネ!』


『…遊びには来るな。』


結局、空振り。

鳳日奈子は手紙と関係無かった…。

変な後輩女子と知り合った。

なんだよまったく…。






☆ ☆ ☆

手紙    side小佐田恋


日奈子『あんなに怒ることないじゃないでスカ!』


先日知り合った鳳は急に昼休みにうちの教室へやって来て、思わせぶりに話しかけた事で斉藤くんがびっくりして連れ出した。その事でクラスは大騒ぎ!

面識あるけどこのアクティブな自称軍師はどうも危なっかしく非常識。

追いかけて行ったら斉藤くんが詰め寄ってるとこだった。


鳳は斉藤くんの古傷をエグって散々場を掻き回して最後に三国志の軍師の話をして気持ち良さそうに帰ろうとしていて。

私は教室棟へ一緒に戻りながらも説教しながら階段に差し掛かる、


『…あんたねぇ?』


私は呆れてダメ出しをしようとすると、



日奈子『…宏介くん先輩は悪い人じゃ無いし、やはり解せない。

なんで立て続けに?

…手紙って言ってました。3通の手紙ってなんでスカ?知ってます?』


階段を下る足を止めてじぃっと私を見つめる鳳の目は真面目で鋭い。

表情は柔らかいけど真剣に聞いている。

はぐらかそうかと思ったけど…。




『斉藤くんは悪い人じゃ無い。むしろ良い人だと思う。

涼くんも同意見。

…でも。』


そこで区切る。

鳳は黙って聞いてる。喧騒が遠くに聞こえる。


私は一応周りを見てから、



『…3通の手紙?

2通は知ってる。1



鳳は嬉しそうに、



日奈子『…面白くなってキタ。

やっぱり!私の陰謀論的中でショ?!』


ふう。私はため息を吐いて放課後話そう?って鳳に提案した。

私も色々立て込んでて…GW前後位目処にいよいよ…!


日奈子『じゃあ、日奈子って呼んでくだサイ!』


嫌なんだけど…?

キラキラした瞳で可愛い顔を輝かせて促す。



『日奈子?ゆかりっちや三島にもそう呼ばせてるんでしょ?』


日奈子は嬉しそうに、


日奈子『一緒に謎解くならワンチームでしょ?』



日奈子は空気読めないけど勘は鋭い。

私と違ったアプローチで何かわかるかも?そう思わせるような不思議な女の子だと思ったんだよね。

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