第34話 ちょうど良い関係

 その晩。私はそのままエドの家に泊まることにしました。

 エドは薬が効いているのか朝まで起きることなく、私も目が覚めたら彼の部屋にいたので様子を見に行ってそのまま寝てしまったんだろうな。

 「――で、なんでいるんだよ」

 「様子を見に来たまま寝ちゃったみたいだねぇ。うん。熱も下がったし大丈夫みたいだね」

 「あのなぁ……まぁ良いや。ありがとな。助かった」

 「まったく。軽い風邪で良かったけど、体調管理くらいちゃんとしてよね。次からはちゃんと薬代貰いますからね」

 「悪かったよ。で、ソフィー?」

 「なに?」

 「俺が寝てるときに何かあったか?」

 「え?」

 「なんか元気ないぞ。大丈夫か」

 「そ、そんなことないよ」

 「ほんとか?」

 「ほんとだって」

 顔には出してないつもりだったけど、やっぱり出てたのかな。病み上がりだというのに他人の心配をするエドに笑顔でやり過ごす私。

 「ちょっと考え事をしてただけだから心配ないよ」

 「それなら良いけどさ」

 「エドってほんと心配性だよね」

 「ソフィーが危なっかしいだけだ」

 「はいはい。薬局に戻るけど、今日も休む?」

 「あとから行くよ。二日も休むとアリサさんにも悪いだろ」

 「それもそっか」

 「ん? なんだよ」

 「なんでもないよ。それじゃ、薬局で待ってるね」

 昨日サボった分もしっかり働いてもらうからね。と、そんなことは口に出さず、私はエドの家を後にします。薬局までは歩いて20分ほど。薬局があるのは集落から少し離れた場所だからどうしても利便性には欠けるよね。

 「風は冷たいけど、いい天気だねぇ」

 先週までの雪模様から一転、今週は澄んだ青空が続いてるけど風はやっぱり冷たい。

 「うーん。この寒さは病み上がりには酷かな」

 やっぱりエドには今日まで休んでもらった方が良かったかな。ウチに来るまでにまた風邪をひかないか心配になってきました。その時はまたしっかり看病してあげるか。

 昨日はエドの知らない部分を知って少し気持ちがナーバスになったけど、私たちはいまの関係がちょうど良いんだと思います。変に気を使うことなく、好き放題言い合えるいまの関係性が私たちにはお似合いみたいです。


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