第6話 壊れかけのマーメイド

そして、梨麻りおが壱の家にやってきた。

梨麻は、言った。


「マーメイドなんて、思い切りでヤッたらいいんすよー

 俺ならどんなマーメイドでも抱ける自信あるっすよ?」


梨麻が、そう言ってニコニコと笑いながら壱の玄関に入ってくる。

その後ろを梨麻の所持するマーメイドのひとり菜々緒ななおも、ゆっくりと入ってきた。


「あ、菜々緒ちゃん、こんにちは」


菜々緒は元気よく返事をする。


「壱さん、おっす!」


するとリビングの方から梨麻の声が響く。


「アウトだ!」


壱は、ゆっくりとリビングに向かいため息混じりに言った。


「でしょ?」


「ってか、返品するのも可愛そうっすよね」


梨麻が、頭を押さえながら言った。


「うん」


「壱、この人だれ?」


ピノが不安そうに壱の方を見ている。


「ああ、この人は僕の部下の舟橋 梨麻だよ」


「梨麻?」


「そう、梨麻っすよ」


梨麻が、苦笑いを浮かべて答える。


「そっちのお姉さんは?」


「私は、菜々緒だよ!

 ピノちゃん……でいいのかな?

 よろしくね!」


「うん!ピノ!よろしくするー」


ピノが嬉しそうに笑う。

そして、壱の方を見て言葉を続ける。


「その……

 4人でするの?」


「え?何を……?」


壱は、首を傾げる。

その意味をなんとなく理解していた。

だけど、その幼い容姿から発する言葉に少し不安になった。


「えっちなこと」


「え?」


「するんだよね?

 私は、マーメイドだもん」


梨麻は、ピノを見てすぐに直感した。


「この子、中古っすね。

 多分」


「中古?」


「はい。

 何ていうか、調教された可能性大アリっすね。

 首に首輪の跡、手にも何か錠のようなものがつけられた跡があるっす」


梨麻は、人一倍観察力が高かった。

そして、マーメイドとの関係を持った数も多いため、マーメイドのことは一目見ればすぐにわかる。

そこまでの知識があった。


「しないの?

 ピノに痛いことする?」


ピノは、死んだ魚のような目で壱の方を見る。

すると壱は、ピノに視線を合わせて言った。


「痛いことはしないよ?

 大丈夫、ピノは何も心配しなくていいよ」


「ホントに?」


「うん」


壱は、小さく笑うとピノの頭を優しく撫でた。

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