第4話 困ったさん

「はい、アーマン株式会社です。

 購入前の質問には1を――」


スマートフォンからは、お決まりのアナウンスが流れる。


壱は、戸惑いながら指示されたボタンを押していった。

そして、電話が繋がる。


「はい、アーマン株式会社お客様センター室です」


電話に出たのは、若い男だった。


「あの……

 マーメイドに関しての質問っていうかクレームと言うか……」


壱は、戸惑う。

戸惑いながら言葉を流す。


「どういったご用件でしょうか?」


オペレーターは、冷静に対応した。


「あの、頼んだマーメイドと届いたマーメイドが違うのですが……」


「それは、大変失礼しました。

 直ちに対応いたしますので、お客様のお名前をフルネームでお聞きしてもよろしいでしょうか?」


「斎藤 壱です」


「斎藤 壱さまですね。

 ご登録頂いた電話番号をお聞きしてもよろしいでしょうか?」


「はい、080-***-***です」


「検索しますので少しお待ち下さい」


オペレーターがそう言うと暫く間が空いたあとメロディが流れる。

保留音だ。


そして、すぐにオペレーターへと変わった。


「斎藤 壱さんですね」


「はい」


「登録されたマーメイドのどの部分がお気に召さなかったのでしょうか?」


「なんというか……

 幼い」


「幼い?」


「ぶっちゃけていうと子どもじゃないですか?」


「子ども……ですか?」


「はい、子どもです」


「それは、困りましたね」


壱は、思った。

困っているのは自分だ……と。

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