第18話 アストリアはブリードにエルマを救出を提案する
翌朝、目を覚ましました。
昨日、加護の力を使ったせいもあり、ぐっすり眠ってしまいました。
主が囚われの身でありながら、ぐっすり眠るのはいけないと
思いつつも休息をしっかりとるのも大事です。
そうでないと、加護の力が使えませんからね。
なので、気にしないことにします。
「エルマ様……早く助けますから」
わたしはこうつぶやくと、ベッドから出て着替えをして、部屋を出ました。
「アストリア、おはようございます」
廊下に出ますと、ブリード様に出会いました。
フリード様も、今起きられたようです。
「おはようございます、ブリード様」
わたしも挨拶をします。
「アストリア、私に対しては、そんなにかしこまらなくてもよいですよ」
ブリード様はこうおっしゃりますが
「いえ、エルマ様とご結婚することは、わたくしの主でもありますので」
とわたしはブリード様に言いました。
「確かにそうでしたね。しかし、エルマとアストリアは主従と言いますより
姉妹のようにお話をしますよね」
ブリード様は、わたしとエルマ様が姉妹のようだと言います。
わたしとエルマ様は幼い頃から一緒なので、わたしもエルマ様も
姉妹のように仲が良いのです。
「幼い頃から一緒なので、お互いのことがよくわかっているためです。
ブリード様には、そのようにする訳にはいきません」
「ですが、私も気を遣わずにお話を出来るようにはなりたいです」
ブリード様はこうおっしゃります。
「そうだとしましても、まだまだブリード様のことはわかりません。
今はこのようにさせていただきます」
ブリード様は出会ったばかりなので、エルマ様と同様にする訳にはいきません。
「そうですね、わかりました」
ブリード様は残念そうにしますが、礼節は大事です。
わたしも、本音ではエルマ様と同じように、ブリード様とお話をしたいのです。
何でも言える間柄のエルマ様と違い、ブリード様にはまだ気を使います。
「でも、昨日はエルマと同じように話しかけてくれましたよね」
わたしは話が終わったと思い、気を抜きましたら、ブリード様が不意にこのようにおっしゃります。
思わぬことを言われましたので、少し慌てましたが
「あ、あれは……盗賊団との戦いでしたし、エルマ様を助けるためでしたので」
と返します。
「なので、気にせず、私にもあのようにお話してください」
ブリード様はこうおっしゃり、微笑みます。
その微笑に、思わず顔を赤らめてしまいました。
「ブリード様がそのようにおっしゃいますなら、2人だけの時だけですよ」
わたしは少し照れながらこう返事をします。
「わかりました。では私とアストリアの時だけお願いします」
「わかりました」
ブリード様と2人の時だけは、エルマ様と同じように接することにしました。
しかし、なんでしょう、綺麗なお顔のブリード様が、微笑むだけで胸がドキッとするとは……。
エルマ様も一晩でかなり親しげになっていましたし、ブリード様には気を付けないといけませんね。
「ところで、エルマ様の救出は出来そうですか?」
わたしはエルマ様の救出について尋ねます。
「出来るだけ早く救出し、式を挙げたいのですが、どこに囚われたか、わかりませんので……」
ブリード様も救出をしたいものの、囚われている場所がわからないと、どうにもなりません。
「そうですよね。でも、アジトの目星はつきますか?」
場所がわからないといっても、長年戦っているので、アジトの目星はつくかもしれません。
「ついてはいますが、山中の広範囲に点在していますしので、特定するのは難しいです」
ブリード様はこうお答えしますが、アジトの場所はわかっていても、エルマ様の居場所までは特定できないようです。
「でも、馬車の走った跡があるので、すぐわかるのではないのですか?」
馬車で逃げましたので、馬車の跡があると思います。
「もちろん、跡を辿れますが、向こうもそれをわかっています。
複数の馬車の跡をつけてわかりにくくしてあります」
「それもそうですよね……」
さすがに、相手もそれがわかっており対策をしていますよね。
「なので、どのアジトにいるか調べないといけません」
「いっそのことすべて同時……とはいきませんよね」
1つ1つ調べるなら同時に攻める……と考えました。
しかし、モンベリア領には、そのような人員や装備がないことを、わたしも理解しています。
「はい、人員も装備も不足していますし、軍にお願いするのも時間と資金面、手間がかかりますからね。
さらに言いますと……公爵家の令嬢を盗賊団に攫われたとなりますと……」
ブリード様も貴族でありますので、メンツを気にするようですね。
こんな時に「メンツなんて気にしてる場合じゃないです!」
と言いたいのですが……相手がエルマ様の父上である、あの公爵様ですからね。
軍の出動を要請すれば、確実に公爵様のお耳にお入りになりますので、ブリード様もただでは済まないでしょう。
ただ、どうにもならなかった場合は、軍を要請しなければなりませんが……。
「お気持ちはわかります。なので、出来るだけ早く救出をしましょう」
「そうですね。しかし、もし救出が難しい場合は……仕方ありません……」
ブリード様も、救出が難しい場合は、軍の要請を考えています。
「結婚の報告が遅ければ、公爵様はすぐにお気づきになります。
なので、2、3日で救出できない場合は軍を要請しましょう」
公爵様は結婚式に出席できませんが、結婚式は明日の予定です。
どんなに遅くても、結婚式が終わった1週間後までに報告がなければ
公爵様も何かがあったと、お気づきになります。
「そうですね……遅いほど傷が深くなりますからね……」
下手に先送りにするよりは、無理な時は軍を要請したほうが
傷は浅くて済むと思いますし、公爵様も理由がわかれば、叱責しないと思います。
ただ、それでもわたしたちだけで、エルマ様を救出したいです。
「なので、作戦会議をしましょう」
「そうですね。では、警察幹部を集めます」
ブリード様は警察幹部を集めると言いますが
「その必要はありません。わたしとブリード様、あと数名でやりましょう」
とわたしは提案します。
「たったそれだけですか!?」
ブリード様は驚きますが、こういう場合は少人数でやった方が早いです。
「話し合っている間に、居場所を特定した方が早いです」
「と言いましても、危険ではありませんか」
「危険は承知です。なので、すぐに警察部隊を出動できるようにはしてください」
「しかし……」
「遅くなるほど、公爵様のお怒りは増しますので、出来るだけ早い方が良いですよ」
わたしがこう言いますと、ブリード様は考えます。
「そうですね……警察には部隊を出動準備しておいてもらうように、頼んでおきます。
では、朝食後に昨日の護衛数人でアジトを探しに行きましょう」
ブリード様は、わたしを説得するのは無理なのと、他の方法がないと思ったのか、
わたしの提案を受け入れました。
「そうですね。では、お食事にしましょう♪」
「そうですね……」
わたしは少し呆れているブリード様と朝食を食べに行きます。
それが済みますと、昨日エルマ様の馬車が止まっていた場所へと向かうのでした。
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